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空想世界の転移旅 ー防御脳筋こそ最強ー  作者: 寝ないネコ
第一幕 始まりの冒険編
18/41

1−15村長ガラム

(誤字脱字のご報告をお願いします)

「話とは何ですか?」


 オルビアさんのお父さんが俺と話がしたいということで、俺は村長の家に案内された。オルビアさんはおらず、部屋には俺とオルビアさんのお父さんの二人しかいない。


「ていうか、村長だったんですね」

「ん? あー、そういや言ってなかったのか。改めて自己紹介する、俺がこの村の村長、ガラムだ」


 オルビアさんのお父さんこと村長ことガラムさんはニッと笑ってそう言った。あんた村長だったのか、てっきり鍛冶屋のおっさんかと思ったわ。だってあの腕、マジで丸太のように太いんだぜ。


「話を戻そう。俺が聞きたいのは他でもない、お前さんは何者だ?」


 緩い空気が一気に変わって厳粛のものになった。なるほど、この顔は迫力あるな。ちびっ子が見たら泣くんじゃないのか?


「何者とは?」

「ふん、現物を見てないから何とも言えんが……森の王は冒険者でもない人が一人で倒せるようなヤワな魔物じゃないんだ、これの意味が分かるか?」


 つまり、俺が暴食熊(グラトニー・ベアー)を倒したのを信じていないと。まあ、普通は信じないよな。


「俺だって自分の娘の話くらいは信じたいが……いかんせん、信じがたい話だからな」

「俺が怪しいというわけですか?」

「……恩人相手にあまり言いたくないんだが、この村の近くなんて旅人どころか商人すら通らない場所なんだ、そんな所にいたお前さんは怪しい以外ないだろ?」


 オルビアさんも言ってたな、こんな辺鄙な所に旅しにくる人なんているわけがない。これはどう説明したらいいのかな、異世界のことなんて話たら余計疑わるぞ……。


 ここは新しい設定を考えないと。


「実は俺、数日前までには師匠と二人で山の上で修行をしていまして、そのせいで世間の常識に疎くて。そして長い修行を終えた俺は旅がしたいと師匠に言ったら、師匠に転移魔法であの森に飛ばされました、目が覚めたら既にあの森にいました」


 咄嗟に考えた設定、これなら誤魔化せるじゃないか。さあ、ガラムさんの反応は?


「確かにそれだったらあの森にいてもおかしくない。だがな、旅がしたいって言ってるのに旅人らしいアイテムを一つも持っておらんのはなんか理由でもあんのか?」


 ガラムさんは半分納得のような感じで頷き、そして疑問が浮かべて俺に聞いてきた。チッ、脳筋ぽい見た目なのに無駄に鋭い。


 まさかこの設定、早くも矛盾を見つけられ破綻するとは。これはもう……『空間収納』の件を話すしかないな。


『よろしいのですか』


 バハムートが聞いてきた。


 これは仕方ない、だって他にいい理由が思いつかない。


「俺は空間魔法が使えますので、アイテムは全部その中に入れてます」

「空間魔法だと? それは本当か? それこそ数百万人に一人にしか習得できない魔法だぞ」


 ガラムさんが俺を怪しそうに見てくる。これは実物を見せた方が早いな。俺は問答無用に手を『空間収納』の中に突っ込んで、その中から巨牙虎の牙を取り出してガラムさんに見せた。本来ならばスキルは魔法とは違うものだが、この際に説明するのも面倒だから魔法のていで話す。


「まあご覧の通り、俺は空間魔法が使えます」

「……」

「ガラムさん?」

『どうやら気絶したようです』




「お前さんはどっかの有名の魔法使いだったりするのか?」


 気絶して数分後、ようやくガラムさんが復活した。よっぽど『空間収納』に驚いたのか、今度は俺のことを凄腕の魔法使いだと思っているそうだ。


「ただの旅人ですよ」

「そ、そうか。お前さんがそう言うなら……」


 ほほう、これは信じてないな。まあ、疑われるよりマシだから俺も余計のことは言わないよ。


「ともかく、俺が空間魔法を使えることは秘密にしてください。あまり知られたくないので」

「わ、分かった。確かに言える内容ではなかったからな」


 ガラムさんは頷き、とりあえずこれで一件落着。


「あっ、そうでした。大角野牛グレート・ホーン・バイソンを狩ってきましたので、それを村に差し上げたいんですが」

大角野牛グレート・ホーン・バイソン? ああ、そう言えば担いでいたな。お前さん、見た目によらず力持ちなんだな」

「まあそれほどでも……」

「でもいいのか? あれは街で売ればかなりの値がつくはずだぞ」


 そうなのか? いやー、迷う……でも、俺は大角野牛の肉を食べてみたいから、ここは交渉してみよう。


大角野牛グレート・ホーン・バイソンの肉はかなり美味しいとオルビアさんから聞いたんですけど、俺は料理ができませんので……この村の料理を食べてみたいと言いますか……」

「……なるほど、つまりお前さんが提供してくれた肉で俺たちが調理するというわけか。条件としては大分村の方が得するのだが、お前さんがいいって言うのなら願ったり叶ったりだ。大角野牛はなかなか食べられないからな、今夜は祭りとしよう」


 ガラムさんは俺のガラムさんが喜んでいる、どうやら本当にレアらしい。


「ちなみに大角野牛グレート・ホーン・バイソンも収納してありますので、どこか出せる場所ありませんか?」

「それならこの家の裏庭にしよう、あそこは空き地があるから大角野牛グレート・ホーン・バイソンも下ろせるだろう」


 俺とガラムさんは家の裏庭に行き、そこで大角野牛グレート・ホーン・バイソンを『空間収納』から出した。


「……一体何をしたらこんな真っ直ぐな断面ができるんだ……」


 なんか一人でブツブツと言ってるけど気にしないでおこう。


 話を終えて、今度俺は無人の家に案内された。元々はとある村人の家だったらしいが、その村人が村を離れたから空いた家らしい。今夜は俺はここで泊まれる、見た感じは普通の木造一階建ての家のようだ、内装は質素だが家具は一通り揃ってあるから住むには困らないだろう。


 寝室にはベッドもあるが、流石に日本で使っていた物と比べると少し硬い。それでも全然草原で野宿するより快適に眠れそう。


「祭りまであと数時間だから、少し仮眠するか」


 俺はベッドに横たわり、久しぶりのベッドに快適感を覚えて目を瞑った。




 仮眠から起きて、外を見ると既に暗くなっていた。そろそろガラムさんが呼びに来るだろう。


 コンコン


「アラタさん、いますか?」


 呼びに来たのはオルビアさんだった。俺は返事をしてドアを開けた。


「では村の広場に行きましょう、村の皆さんも徐々に集まっていますよ」


 本来ならば今日は祭りではないが、俺が大角野牛グレート・ホーン・バイソンを持ってきたこととバランさんの傷を癒したことから奇跡の日と称して祭りを開くことになった。それでいいのかと思ったけど、オルビアさんによると村の人でもなかなか大角野牛グレート・ホーン・バイソンを食べられることはないから、かなり喜んでいるそうだ。


 村の広場に着くとそこには沢山の村の人が集まっており、楽しげに会話をしている。


 しばらくすると祭りが始まって、料理人らしき人が見事な手際で大角野牛グレート・ホーン・バイソンを捌いでいく。そしてオルビアさんが採取した食材などを使って様々な料理を作り、あっという間に机が料理で埋め尽くされた。


「これが大角野牛グレート・ホーン・バイソンを使った料理か」


 いい匂い、とりあえず一口食べてみる。


 うん!? これは美味しい! 久しぶりに肉を食べたけど、これほどに感動するとは思わなかった! これを食べられたことで今までの苦労を全て忘れそうだ。


 その後他の料理も試してみた。ほとんどはヨーロッパ文化ぽい料理だったが、どれも満足できる品だった。ただ唯一気になったのが料理ではなく、昼間と同様に俺を睨みつける三人の男だった。コイツらには気を張った方がいいかもしれない。


 祭りもあっという間に終えて、三人の男も俺に何もせずに帰った。


「結局何なんだあれは?」


 疑問を残して俺はガラムさんが用意してくれた家に戻った。今日はしっかりと休もう。

 


 

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