1−10ゴブリンの殲滅
(誤字脱字のご報告をお願いします)
《行動ミッションを達成ーー空中から落下して死亡する(SP+5)》
「地上に到達して一番目に達成する条件それかよ! しかも貰えるSP多いな!」
これ気付くわけないだろ、誰だよこんなミッションを考えたヤツは。
『スキルショップ』
現在あるSP:5
現在交換できるスキル一覧
補助:なし
特殊:なし
能力:『魔力上昇E−(SP1)』
一般:『気配消しE−(SP1)』『剣術E−(SP1)』『鍛治E−(SP1)』『双刀術E−(SP1)』『気配察知E−(SP1)』
スキル一覧を更新:SP1
『なるほど、これが主が言っていたスキルショップというものですか』
「ああ、そうだ。この六つのスキルの内、どれを交換した方が良いと思う?」
『そうですね……実用性を考えますと、やはり気配消しと気配察知ではないですか?』
「よし、じゃあそれにしよう」
《スキル『気配消しE−』とスキル『気配察知E−』を習得しました》
「さて、ここからどうしよう」
『地図』を見ながら俺は今後の計画について考える。
今俺たちがいる場所はオルアレンの森というところらしい。一応アルべメリタ王国という国の領土内だけど、王都からはかなり離れていてこの近くに大きい街はない、一応村みたいなのはあるけどそれはまた後に行ってみよう。
この森に生息しているモンスターのレベルもあまり高くないが、数はそれなりにいるみたい。『地図』を見る限りそこら中に魔物が生息している。
「おっ?」
ここから数百メートル先にゴブリンの群れが移動していて、ちょうど俺の方に向かってきている。
『倒しますか?』
「もちろん、強化された今の力をまだ試していないからな。どんなもんかを見てみたい」
ゴブリンの群れは剣盾ゴブリン、槍ゴブリン、魔法ゴブリン、そして指揮ゴブリンによって構成されている。陣形をしっかり組みながら、軍隊のように進行している。剣盾ゴブリンが先頭に立って、槍ゴブリンと魔法ゴブリンが指揮ゴブリンを囲う形で立っている。
ゴブリンって結構知性があるんだよな。一個体としては最弱部類の魔物だけど、陣形を組んで集団で行動しているし、数揃えばそれなりの脅威にもなる、そして低いレベルであれば文明も築き上げている、言語と呼べるか分からないけど意思疎通もできている。こう見ると凄い魔物に感じるけどな、なんて哀れな生物だ。
そもそもゴブリンの唯一の脅威はその繁殖力。ゴキブリ並みの繁殖力を誇るゴブリンは無限にその数を増やすことができる。しかし単独じゃ数を増やせるのは限度があり、人間や他の種族の雌個体を攫って繁殖を行う。これはまあまあ定番の設定かな。
そしてコイツらの目的は何なのか分からないけど、まあここで消えてもらうのは確定事項だけどな。ゴブリンは害獣みたいものだ、生かしていいことはない。
「そろそろお出ましか」
そんなことを考えていたらゴブリンの群れが見えてきた。よーし、ここはまず一発大きいのをお見舞いするぜ。
「気づかれる前に先手を打つ。空力斬」
俺から放った透明の斬撃がゴブリンを襲った。筋力が増大したせいか、『空力斬』は以前のとは比べ物にならないほど威力が増大している。
シュッーードゴゴゴ!!!
『主、ゴブリン相手では火力過剰です……』
「そうみたいだな……」
俺が放った斬撃は樹木を次々と斬り倒し、無情の刃がゴブリンの群れをあっけなく壊滅させた。空力斬が通った場所はもう表すことができないほどの惨状になっていて、ゴブリンの群れのほとんどは上半身と下半身がさよなら状態になっている。うん、これは地獄絵図としか言いようがない。
「まさかこれほどの威力になるとは、今後は使うタイミングを慎重に考えないと」
《討伐ミッションを達成ーーゴブリンを同時に30体討伐する(SP+2)》
《称号『ゴブリン殺し』を入手しましたので、スキル『ゴブリン殺し』を習得しました》
《レベル19になりましたので、スキルポイントが1増えました》
『スキルショップ』
現在あるSP:8
現在交換できるスキル一覧
補助:なし
特殊:『飛行(SP2)』
能力:『魔力上昇E−(SP1)』『風圧耐性E−(SP1)』
一般:『剣術E−(SP1)』『鍛治E−(SP1)』『双刀術E−(SP1)』
スキル一覧を更新:SP1
これは、またすごいスキルが来たな……本音を言うと空から落下する前に欲しかったけどね……。
今は考える時間あまりないからとりあえず交換する。
《スキル『飛行』とスキル『風圧耐性E−』を習得しました》
「グギャ! グギャグギャ!!!」
ゴブリンはどうなったかというと……何体か生き残りはいるけど、自分らの身に一体何が起こったのを理解できず、完全に戦意を喪失して一目散に逃げていった。
「逃げたな。あの方向は……拠点か?」
どうやらゴブリンが逃げた先はゴブリンの拠点のようだ。これは一網打尽のチャンス。
生き残りのゴブリンを追跡して、俺はゴブリンの拠点に辿り着いた。拠点というか村は規模としては大規模で、かなりのゴブリンがいるみたいだ。村に残っていたのは雌ゴブリンと幼体ゴブリンがほとんどで、村の中央の少し大きなワラぶき屋根の小屋の中に長ゴブリンがいるようだ。
「この量だと奇襲を仕掛けるべきだな」
数は多く、恐らく数百は下らないだろう。流石にこの数は一体ずつ倒すのは骨が折れる。
『主、それなら竜星はどうですか?』
『竜星』……確か、俺がバハムートから貰ったスキルの一つだっけ?
『はい、範囲攻撃ですので、一網打尽にはもってこいです』
「ほう、それは便利だな」
『ただ、この距離だと主にも影響が及ぼす可能性がありますので、なるべく離れた場所から打つことをお勧めします』
バハムートが補足してくれた。
森の中で距離を離れたところで木が邪魔で広範囲攻撃を打てない。だとすると『飛行』を使って空に行く一択だけど、俺高所恐怖症なんだよな……仕方ない、効率を考えるとそれが一番いい。
ここは覚悟を決めて、俺は『飛行』を使った。体がふわふわし始めて、少し慣れない感覚に苦戦する。そして俺はゆっくりと上昇して、高さ百メートルの場所まで到達した。
「……た、たけー」
あー、森がよく見えるなー……ゴブリンの村も小さいなー。
「はー、ふー、はー」
ヤバい時はとりあえず深呼吸する。
『主、大丈夫ですか?』
「ふえ? だ、大丈夫だよ」
バハムートが心配してくれた。少し慣れてきた気がする、よく見るとすごいいい景色だな、これは普通の人間では体験できないことだ。
「よしやるか」
両手を空に掲げて、魔力を集める。手中に集まる魔力がどんどん膨れ上がり、やがて圧縮されて小さなエネルギー球となった。
「滅びよ。竜星!」
手に溜まったエネルギー球をゴブリン村に発射した。
発射されたエネルギー弾はスパークを飛び散りながら真っ直ぐに村に飛んでいった。
ドゴォォォォンッッ!!!
「うわ!」
エネルギー弾が着弾した瞬間、大きな爆発が起きて、瞬く間に爆音と衝撃波が俺のところにも届いた。爆発によって黒い煙が立ち上り、砂塵が宙に舞う。黒い煙と砂塵でよく見えない、これはもしやゴブリンの村、消えたのでは?
そして見えてきたのはーー
「……」
『……』
「これこそやり過ぎじゃないか? 地形すら変わってるぞ」
『そのようです……』
黒い煙が少し晴れて、見えてきたのは跡形もなく消えてしまったゴブリンの村の跡地だった。着弾地点を中心に地面が円状に深く抉られていて、ゴブリンの村を含む広い範囲の土地が更地になっている。
強くなるための近道はないと皆は言うが、どうもそれは俺には当てはまらなかったようだ。バハムートの力を一部とはいえ、それを受け継いだ俺はどうやら兵器になっちゃったみたい。