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03.成長


「なあなあ、どこ行くんだよ。まだかよ」

「あーー、腹減った。先に食っとけば良かったかな」


 ホステルを先頭に後ろでぶつくさと、口数の減らないルオーノとジオン。


「う〜ん。そろそろだよ、あの辺。……うっ。やっぱりか……。放り出して行ったもんなぁ」


 3人の視線の先にあったのは紐が解け、あちこちに散らばった木材だった。


「あーあ、なんだこれ。大変そう」

「うわ。坂道転がってったのもあるじゃん、最悪ー」

 一帯を見渡し他人事のルオーノとジオン。


 そんな彼らの前に立っていたホステルは、くるっと振り返り可愛らしくこう言った。

「さあ、お二人さん。一緒に拾おー」


「え……。もしかして……。オレ達こんな事のために呼ばれたのか?確かに詫びのつもりで来たけど……もっと他にあったろ」


「いやいや、これは重大なお仕事よ。

 上手く纏まってくれないから歩きにくいし……。(ボソッ)

 それに、ほら! あんな隙間にも入り込んでる! 私じゃ取れないわ」


 あからさまにガッカリとしたルオーノ。

 話しながらに、口から出まかせと言う程ではないが呼んだ理由を作り出し上手く乗せようとするホステル。



 そんな2人の事情など、どうでも良く昼食の事で頭がいっぱいのジオンが話を進める。

「分かった、分かった。とっとと拾って飯だ!」



 声を掛け合わずともきっちり役割分担し、早々に終わらせ、分け合って持ち帰る。


「ところでこれ何に使うんだ? こんな上等な木……誰かの家壊れたっけ??」


「何言ってんだよ、ジオン。それにしちゃ量が少ないだろ。んー。お? そうか! 来週、年明け。って、事は! ホステルの誕生日。それでか!」


「待て待て、ルオーノ。お前こそ何言ってんだ? 年明けだから、誕生日だから? 何だってんだよ。自分で自分のお祝いに家の模型でも作るのか? ははは」


「むっ。確かにそうだな……。ホステル、何に使うんだよ??」


ホステル「えっ……!? いやぁ……えっと……その……。ん!?」



「あー! 言うな! 分かったぞ! お前って驚かせたりするのが好きだから、自分の誕生日なのに逆プレゼントって事で、何か作って配る側に回る気だな!」


「……なるほど。だからそんなに歯切れも悪いのか! じゃあ もう聞いちゃいけないな。それにしても、ルオーノ。冴えてるな!」



「ま、まぁ…ハハハ…」

なになに? どうしたらそんな話になるの? 最初からしっかり聞いてたけど分からない……。

そんな用意ないわよ……? どうにかしないと……。



 自分らの名推理にすっきりと満足気な2人に対し、目を右に左にキョロキョロと、ひとり焦るホステルだった。




 村へ着き、待っていたのはルオーノの母ルモラ。


「コラーー! あんた達! 全部聞いたよ! 早とちりした挙句、ホステルに酷い事言ったらしいね?! なんっって事! よくお聞き、大体ね!! 女の子に向かってそんな事言うこと自体ーーガミガミガミガミ……」



 おばさんが怒ってるとこ久々に見た……。いつも以上の早口だわ……。

 その雰囲気に圧倒され、ぽかんと口が開く。



「まあまあ、ルモラ落ち着けよ。ルオーノ、ジオン。スドックからゲンコツ貰ったそうじゃないか。まあー……。当たり前だな! それで、お前たちしっかり謝って反省したのか??」


 怒り心頭のルモラの肩へ手を置き、子供達の話を聞こうとしてるのは、ルオーノの父ショット。



「あ、あぁ! もちろん! そりゃあもう! な、ジオン?」

「そうそうっ! 反省しすぎて頭が痛いくらいだ!」

「あたま…! そう! 頭が痛いから顔洗いに行ってくる。ジオン早く!」


 父の出現によって、母の勢いが一瞬収まったのをいい事に逃げ出すルオーノとジオン。



「あ、こら、待ちなさいっ! 逃げたな……全く……。

ホステル、私から謝らせてくれ。すまなかった」


 そして次に出てきたのはジオンの父グノン。強面フェイスとは裏腹にか弱く謝罪した。



「俺からもだ、ごめんな」


「ホステル、本当にごめんなさいね。言い訳になってしまうけど、反抗期みたいで……。いや…! だからって言っていい訳じゃー…」


「あ、あの! 話の途中で悪いとは思うんだけど、待って? 私、気にしてないのよ? もう身長は伸びてしまってるんだから、仕方ないわ。とっくに受け入れてるの。それにね。あの2人も悪いと思ってるわ。だから私の手伝いしてくれたのよ! なので…おばさんもおじさん達も、謝らないで欲しいなっ」


「ううっ……。ホステル……。立派になったねぇー」


「えへへ。そう? なんか、照れるわ。ほらほら! おばさん! いつもみたいに豪快にかっこよく笑ってよ! おじさん達も!」


 ホステルの優しさと気を使った言葉に、思わず零れた涙を拭きルモラは言う。


「よし! ホステル! たまには夕飯一緒に食べない? 気合い入れて作るよっ。そうさね、アンタの好きな貝。今日取れたんだよ。焼こうかね! グノンも。ジオンと食べて行きなさいな」


「えぇ、ホント? なかなか見つからないのに。行くっ! はいっ! お邪魔します!」


「ははは、なんだか楽しそうだな。俺もジオンと一緒にお邪魔するかな」


 先程までの空気は一変し、一気に楽しげな会話へ。


「そうと決まれば、こうしちゃいられないな! 残りの仕事さっさと終わらさなきゃな。グノン行くぞ! おーーい、ルオーノ、ジオン! 仕事するから手伝えーーーー!」


 グノンとショットは昼食を取っていないことをすっかり忘れ息子たちを連れて仕事に戻って行った。


 そしてホステルも。

 ルモラに時間を確認し、木材を抱え家へ帰るのであった。



 ルモラは徐に歩き、御神木の前で止まると口を開いた。


「あの子、ホステル……。大きくなりましたねぇ。3年程前まで身長の事で悩んで泣いていたのに。その後はめっきり口にしなくなったと思ったら。今日……あんな風に考えていたなんて。あの子の父親と母親に見せてやりたいわ」


「なにを言っておる。きっと今も天の国から見守っとるよ。安心して喜んでおるさ。フォフォフォ」

 御神木の横でまたしても横になっていたルーテック村長。


「うん……そうですね。ルーテックさんの言う通りだわ。ジオンの母親も見守ってますね!」


「そうじゃそうじゃ。今から13年前。数多の命が天へ召されたのぅ。彼ら彼女らが天の国から見守ってくれてるとなると心強いってもんじゃよ」


「えぇ、本当に…」


 ルモラは遠くを見つめながら、ルーテック村長は高い空を仰ぎながら、しみじみとしていた。



「して、ルモラ。ちとワシの肩を見てくれんかの?赤くなっていたりしてないかの??」


「赤く? いえ、全然なってないですよ? どうかなさったの??」


「ほれ、さっきお前さんとこの息子が言っておったろう? 頭が痛いから顔洗う。と。頭なのに顔と! ワシもの、シリになにか変な、痛い痛いやつが出来たから、シリではなく肩でも洗おうかと思っての」


「……っ! ハッハッハッ!!!ルーテックさん、変わらずそのまま元気でいて下さいな」



 ルーテック村長のおとぼけに 元気付けられたルモラは夕飯の支度に取り掛かるのだった。

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