18話 テスト-5
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低く内蔵が震えるようによく響く鐘がなった。何年聞いても驚いてしまうような恐ろしい鐘の音。テストは終わりだ。
「はい、終わり終わり。回収と採点は私がやっておくから皆今日は帰りなさい。疲れたでしょ、明日からはまた授業をするからゆっくり休んでくださいね」
ローメリックは鐘の音を心地良さそうに最後の響きが耳から消えるまでうっとりと聞いていた。そして、立ち上がって後ろの生徒にまでよく聞こえるように声を張った。
いつもならこの後授業が待っているのでそれが無くなって喜んだ生徒たちがワーワーガヤガヤと話ながら身支度をする。しかし、この騒がしいなかツユが起こそうと体を揺すっているのが一人。ケイジュは生徒の九割が最後まで時終わらなかったテストを半分以下の時間で時終え、見直しもしないで眠り始めていた。日に当たっているのがそんなに良いのかツユが起こしても全く起きる気配がない。
「ケイジュー、学校終わり、病院行くよ~」
トントンと叩いても強く揺すってもまだ全く起きる気配がなかった。
「ほっといて帰れば良いじゃないですか」
隣で様子を見ていたサクラがツユに言う。
「そうしたいんだけどね、ケイジュ今日は絶対に病院行かなきゃだからおいていくと少し厄介なんだよね」
ケイジュの頭をノックするように叩き始めたツユがサクラの言葉に返す。病院じゃなければこんなに起こそうなんてしないし、とっとと帰るのだが、今日はそうするわけにはいかない。
「ん~、ローメリック先生、どうにかなりませんか? 」
サクラはツユと帰りたかったのか一枚一枚テスト用紙を確認しているローメリックに助けを求めた。
「無理よ。夢人族を起こすなんて私にはできないし、少し前にケイジュ起きてるから起きてる人を起こすなんてできないわ」
「……バラすことないじゃないですか。あわよくばもう少し寝たかったのにさ」
ツユたちの方を一切見ないで回収した紙を数えながらローメリックは答えた。その声に堪忍したようにしてケイジュがゆっくり顔をあげて文句を言う。まだ医者のところに行かなくても良い時間だからか前日寝ていないからかただ寝たかっただけのようだ。
「早く病院終われば約束の時間まで自由」
ツユがケイジュの目を見て言う。
「よし、ツユちゃん行こうか」
元気よく立ち上がってツユの手を取り、ケイジュは言う。その自由時間にまた寝れると思ったのだろう。そのままローメリックに何も言わず、ローメリックに何も言われず教室から出た。
「ツユ様、私もついていって良いですか? 」
サクラがケイジュに引っ張られて教室を出ようとするツユを追いかけて言う。
しかし、追い付く前にローメリックに腕を捕まれた。
「サクラさん、忘れてるかもしれないけど、この間の体育のサボりについて先生とゆぅっくり話しましょうね」
「え、あれはただ体調があれで教室で休んでただけだって言いましたよ……ね」
この学校の授業内容は基本担任に一任されているが、何をするか決めていなかったローメリックが体育を提案したことがあった。年齢がバラバラなのでお遊び程度だが、その授業の前にはいたはずのサクラがいなかったのだ。ローメリックが授業後に教室に戻るとすやすやと眠っていたのだからローメリックにとってはサボりだ。
「何も聞いていないからサボりですよ。心配しないでください、手は出さないであげます」
「ツ、ツユ様ぁ~」
サクラが助けを求めるように扉の方に顔を向けたが、そこにはもうケイジュもツユもいなかった。
「諦めてそこに座りなさい。時間は短くしてあげるから」
半泣きのサクラを少し可哀想に思ったのか少し優しい声でローメリックは言った。諦めたサクラが渋々ローメリックが指差している席に座った。




