八。魔王連合の鳥男
あれからなんとなく部屋に戻った俺は特にすることも無いので早めに寝ることにする。
と、その前にお風呂に行かなければ。
この世界にシャワーなんて無いので普通に湯船で全身を洗い……勿論石鹸は使った。
シャンプーなんかはこの世界には無い。
代わりに様々な石鹸があるのだ。
風呂から上がり手早くパジャマのような物に着替えてベッドに潜る。
とにかく今日は色々なことがありすぎた。こんな日が明日も続くのかな……
……そこで意識は微睡みの中に消えていった。
_翌日
俺が目覚めたのはまだ夜も深い時間帯だった。
とりあえずこの世界は地球と同じ24時間制の太陽暦なので電池で動く普通の腕時計はかなり助かる。
ちなみに俺の使う腕時計は電波時計ではないのでこの世界でも問題はない。
ちなみに現在2時10分。
暇なので散歩でもしてこよう。この街の散策も兼ねて。
……外の空気を吸うと肺が痛くなるくらいにひんやりしていた。
いや、慣れれば大丈夫。
それにしても昼の賑わいは何処に行ったのやら。
昼間はぼちぼちと賑わっていたのだが、そんなことがまるで嘘であるかのように静まり返っている。
……あれ?あんな所に人がいる。
ふと顔をあげてみると、こちらから30メートル程離れたところの建物の壁に手を付きこちらを見つめる人がいる。
顔はよく分からない
なぜ俺を見てるのだろうか?
それとも俺の方を見ているように見えるだけか。
すると、その人は壁から手を離しモデル歩きをしながらこちらに近づいてきた。
「……」
そこで俺の意識とか体とか本能が警告を出し始めた。
全身の産毛が逆立ち服と肌の間に空気が通る。
恐怖か空気の寒さか分からないが鳥肌も立っている気がする。
蛇に睨まれたカエル。
否、蛇に睨まれる前のカエル
絶対アイツに捕まってはいけない。
1秒でも早くアイツから離れなければならない。
アイツに捕まれば『死』が俺を襲う。
「……っ?!」
何もなかったかのように歩き出そうとする。…が足が前に出ない。
やばい。このままでは本当にやばい。
やはり蛇に睨まれたカエルだ。
靴のコツコツという音がどんどん近づいてる。
どんどん、近づいてくる。
もちろん距離が分かるものは聴覚だけではない。
その足の動きは視角でもはっきりと捉えている。
俺から約5メートルほどの場所でソイツは止まった。
すると手を広げ……
「君か。…ほう! いいよ〜! 凄く! 俺のナイトメアな力がうずうずするさ! はっはぁ!」
その独特な口調に怖気が走る。
気持ち悪い。気持ち悪い…
男の身長は2m程で、体は痩せている。
顔にはペストマスクを着用しており、その素顔は見えない。
「あっ…がっ……?」
声が出なかった。
全身に力が入りすぎて舌が口腔を塞いでいるのだ。
大袈裟すぎ身振り手振りで男は尚も喋る。
「今宵の勇者ぁ!いいね!でも……弱そうだ。落胆!ボクの期待には程遠い!」
マジでなんだ。ペストマスク野郎が喋る度に俺の脳までが反響しだす。
悍ましい。その一言に尽きる。
いったいなんなんだ。
この悪魔のような男は誰なんだ。
「……おま…えは…誰…だ…」
するとペスト野郎は腕を組み右に3歩、左に3歩進んだ後にこちらに詰め寄りながら
「あ〜ボク?ん〜…主ちゃんに言っちゃダメって言われてるけど勇者にならいいよね!」
「………魔王連合…最高幹部ノ3!ルデア・ディザステロ!……勇者がこれなら王国なんて潰すの簡単だね!ボクのブライトネスの出番は無ぁし!」
俺とペストマスクの口先の距離が5センチほどの所で力説している。
口調に熱が籠っている。
聞けば聞くほど悍ましい。
と言うかコイツ…
「魔王…連合……だと?」
何故ここに魔王連合がいるのだろうか。
ラノベなどで魔王に手先が居るのはお決まりだ。
そういった小説を俺はこれまで何冊も読んできたので大体予想はできていた。
つまりこれは有り得なくは無い。有り得なくはないが……
俺の前に立ちはだかるのは今後の絶望と恐怖だった。彩を救うためにはルデアも倒さなくてはならない。
ここまでの威圧。
これは魔王連合だから。というものもあるだろうが圧倒的強者から感じる物でもある。
魔王ですらないこの男に俺の戦力では届くことは無い。
届くわけが…ないんだ。
「まぁ、確認は終わったしぃ?ボクは闇に消えるとしよう!ちゃお」
「はぐっ………はぁ……」
ルデアが消えると共に周囲を渦巻いていた圧も消えていった。
なんだったんだ…なんのために俺の所に来たんだ
このことを彩やエアに話すべきだろうか……
いや、やめておいた方がいいかもしれない。
俺でさえもはや絶望と思った程。
彼女達に心配をかける訳にはいかないからな。
そう心に誓って震える足で宿泊所に戻ったのだった。
〜魔王連合(彩)〜
「あーるじちゃーん!たっだいま〜!」
このテンション馬鹿はルデア。
こんな奴だが魔法の精度は魔王連合トップ。
あと付け加えるならたまに厨二病を拗らせたりしてる。
「おかえり。ルデア。それで勇者は誰だった?」
とにかくルデアはひょうひょうとしていて、今もくねくねしながら歩き回っている。
「それがさぁ〜なんかこの世界の人間じゃないと思うんだよね〜。主ちゃんと同じで名前とかのデータ取れなかったもん」
え。ってことは直樹が勇者?!
てっきり雑魚兵かなにかかと思ってた!
てことはやっぱり魔王の私と戦わなくちゃならないってことだよね…
まぁ、悪いけど前世同様。私がぼろ勝ちしちゃうもんね!
「……ほう。直樹殿は相当弱そう……か。」
と言ったのは魔王連合ノ4のコール。
コールはとにかく人の心を読もうとする。
おかげで知れることも多々あるからいいけどさぁ。
てか直樹はこっちでもやっぱり弱いんだね。
しっかり王国から連れ戻して私が魔王連合の幹部くらい強くしてあげよーじゃないかっ!
どうもこんにちは!
今回も魔王連合が登場!ちなみに彼の権能はかなり質が悪いです。はい。
今だからこそ余計に。今は教えませんけどね。
さて、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!また次回で会いましょう!
2020年4月 課題未提出により先生から電話がかかってきて大焦りしながら