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二十六。逆転の逆転


目を瞑ると頭に衝撃が走る。


「ナオキ、ナオキ?良く堪えたよ。大変だけどもう少し頑張って!」


アルリエの声


「また消えた!ナンデナンデぇ!!」


絶叫するアリア。

アリアの行動以外、さっきと同じことが起きている。

アリアだけ同じ行動をしていない。


「そうか、そういうことだったんだな」


ふと時計を見ると分針が22分をさしている。


「時間が戻っているってことか」


つまり腹を斬っても死なないのは時間をさかのぼっているからだ。


そういえば一つ思い当たることがあった。

俺がアリアの腹を斬った後、必ず本を開いていたのだ。

つまりアリアが大事そうに抱えている本こそがトリックだ。


一気にアリアに駆け寄り、脇に抱えた本を抜き取る。


「あ、あぁぁぁああぁあぁ!!ルデアは雑魚いって言ってたくせに!もういやです…」


普段なら同情してしまうだろうけど今は一ミリもそんな感情は湧かない。

さっさと殺して、エアと彩を戻すんだ。

先程同様、一気に走り込み剣で首をはねる。

俺の読みが正しければ、これで身体の再生は出来ないはずだ。


「ぐばぁっ!…ナンデェェ!」


そう言い残すとアリアは光の粒となって消滅した。

読み通り。この本がアリアの身体再生のトリックだったってわけだ。


そういえばアリア討伐で本当に石化が治るのかと不安になる。……がその心配もないようだ。


「あれ?魔王連合とやらは?」


「あ、あそこの者は勇者では?」


「勇者様!まさか魔王連合幹部を倒されたのですか?」


皆からすれば、唐突にルデアがやってきて、更にアリアが来た。

そして気づいてみればどちらもおらず、戦いの後のボコボコになった王城が残されていたと。


おぉぉ!!と、歓声が飛び交う中、彩とエアが駆け寄ってくる。



「本当に直樹がやったの?」


「すごいです!…エアもお力になれれば良かったのですが……」


「いやいや、俺なんて全然。……あ!」


ヴィル王!多分城から吹っ飛ばされているはず…


ガラテアさんに伝えないと…

と、その前にしないといけないことがある。

ヴィル王のことはエアに任せて俺は俺の仕事をしないと。


「エア、ガラテアさんに、ヴィルセディス王がそこに見える穴から外にふっとばされてる。伝えてきてくれ」


「え、そんなことが…はい、伝えてきます。」


さて、しないといけないことと言うのは、まぁ、重労働ではない。

アリアを倒した場所に何か光るものが転がっているので取りに行こうかと。


アリアの居た場所に転がっているその光を拾おうと歩み寄る。


……つもりだったが、その前にわきに抱えていた本がするりと俺から抜け出し、自立し俺に向いたのだ。


本の凶悪な表情に寒気が走る。


「直樹、避けてっ!!」


「かはっ!!」


本に目を奪われていた俺は、何が起こったのか整理する時間も無く、無情にも地に押さえつけられる。


ただ分かるのは俺はうつ伏せであり、地は大きく凹みクレーターのようになっているということ。普通の人間なら原型すら留めていれないような圧迫。


「許さない許さない!てめぇだけは許さないです!」


死んだはずのアリアの声が耳元で聞こえる。

くそっ、絶対倒せたと思っていたのに……

俺を地面に埋め込まんとするこの力はアリアのものだろう。


彼女は尚も俺を地に抑え込む。


「ナオキ殿!今助け出す!イージスグングニルの名にかけて!」


この声はガラテアさん。

ヴィル王はどうしたんだよ…

やめてくれ…来るな…今来たって団長じゃ殺される。


分かってるだろ

そもそもアリアの目を見るだけで、また固まってしまうんだ。

きっと固まる前に、ヴィル王に目を閉じろ!としか言われていない彼らはアリアの石化の力をあまり分かっていない。


どうにか首を横に向けると団長を筆頭に騎士団の鎧が走ってきている。


「来るな!来ないで…くれ」


騎士団の人達じゃ勝てない。俺や彩じゃないと攻撃が当たらないのは知ってるだろ…


「協奏曲・破壊」


今までとはうって変って、冷たく言い放つアリア。

アリアと言う名前の要素はここにあんのか…協奏曲っての。


悲しいかな、アリアが一言つぶやくと騎士たちは赤い水滴レベルに粉砕されていく。

あぁ、地獄だ。

この騎士達にもきっと家族がいるだろうに……



などと、考えていると本当に圧から解放される。

なぜだ。騎士たちはアリアに太刀打ち出来ていないはず…


「助けてあげたよ!直樹」


彩、彩の声だ。


そして地面を転がるアリアの姿がある。

そんなことしたらアリアの標的が彩に変わってしまう。

彩が戦うならばせめて限界突破しないと歯が立たない

助けに行こうと動こうとするが肩や肋骨の骨が折れているのか起き上がれない。


当然だ。むしろその程度の傷であることを喜びたい。


「って、あれ?直樹?」


キョロキョロと辺りを見わたす彩。


……どういうことだ

彩も俺が見えないのだろうか。

てっきりアリアの権能の後遺症とかそんなところだと考えていたのだが…

ということは全員俺が見えていない可能性が高い。

つまり俺の能力に透明化があるということ。


……そうか!ラジュワールモルタ、そういうことだったんだな。

ラジュワールモルタは異形種の中でも主級という階級でアビリティ持ちなのだ。

そしてそのアビリティこそが透明化。

危険を察知すると透明化出来るとアルリエが言っていた。


……と、ここでようやくアリアの姿を見ると先程までとは禍々しさが違っていた。

元の体は魔王連合じゃなければ美少女と言えただろうが、今の姿はどんなに言葉を善意で装飾したとしても化け物。

目は元々片目だけ眼帯で見えないに留まっていたのだが、今はその眼帯は無く、不気味な目の周りに6本の線が走っており、服はほとんど全裸に近い。

そしてもっとも目を引くのが胸にある大きな目が一つ。


て、あれ?普通にアリアの目を見ることができている。

いや、正確には目があっても石化していない。

今、アリアがチラとこちらを見た時、目があった。

とっさのことだったし、俺の体があまりにもぼろぼろで判断が遅れ、目を動かせなかったというのもある。


つまり見た目が変わったことで石化が消えたってところか。

ギガンツ・アイそのものが魔法なら当然有効時間もあるだろうし。



「ケッ、透明化ね。気に入らねぇ」


唐突に聞き馴染みの無い声が聞こえる…

と思っていると眼前に先程のアリアの本が飛んでくる。

本が飛ぶというのが既におかしな話だがこういうのにもそろそろ慣れてきそうだ。

今聞こえた声は多分本の声で間違いないだろう。


この本も俺のアビリティが透明化であると見抜いたようだ



「お嬢や、あっしはこいつが見えてる。共感覚といこうや」


「分かりましシた、グリモワール。視界は調整しといて下さいね?」


次なる攻撃に地面に突っ伏したまま身構える。

他に戦っている彩、騎士団で生還できた人…中にはガラテアさんも身構える。


「ふふっ…見えまシたよ」


不敵に笑うアリアに怖気が走る。

俺を守ってくれたラジュワールモルタの恩恵はもう役割を果たさないみたいだし。

エアに骨折を治してもらおうにもエアは見当たらないあたり、きっとヴィル王を助けに言ってるのだろう。

俺も戦わないと。


「ぐ、ぐらぁぁぁぁ!」


全身の痛みを抑え込み立ち上がる。

全身を焼くような痛み。

大動脈が切れていたのかドバっと血が流れ出てくる。

自動回復が俺にも備わっていればな…

そう考えても回復出来ない辺り、スキルとしてまだ取得できていないのだろうな。


「まだ戦えそうでスね。じゃぁ1番面倒くさいので最初に始末させていただきますね。協奏曲・コンフィション・セレモニー」


どう見れば戦えるように見えたんだ。


まぁ、幸いにも右腕と手の骨は大丈夫だ。

肩は動かないことから骨が折れている模様。

ふと、勢いで肩を振るい、腕を動かしている所を想像する。

…酷い酷すぎる。


喉に詰まった血塊を吐き捨て、右ひじだけを曲げ剣を構える。

攻撃は全て避けて、俺の攻撃は出来る限り一発に全て賭け、的中させる。


「その様子だと……良いです。独奏曲コンペンション・ターゲット」


腕を前に突き出すアリア。

腕を突きだすという動作的に衝撃波系の攻撃かと思ったがそうではなさそうだ。


つまり今までの攻撃とは違い詠唱時間があるということ。

つまり向こうより早く攻撃すればいいだけだ。


一気に走り出す


「うぐっぁ…リコルド・クラフト!」


つもりだったが足が……動かない


しかも足が動かないだけなので勢いに負け、体だけ前のめりに倒れる。

それを阻止するべく、クッションを生成し、その上に倒れる。

すぐさま剣をそのクッションに突き刺し起き上がる。


「いち。」


「なっ……!?」


唐突にアリアが突き出した指の一本を、もう反対の手で握りつぶす。


何をしているんだ。こんなの正気の沙汰ではない。


「に。」


更にもう一本。


「さん。」


更に一本。


ぞわっとしたものが背を駆け抜ける。

指を自ら握り潰す異様さに起こった感情ではない。


忘れてはならない。これが詠唱だったってことを。


がちがちと首を後方へ向けると無数の氷の結晶がこちらを向いていた。


あぁ、これは躱せない。


「いけー」


怠惰げなアリアの言葉に死を悟る。

終わったな。もう何回死ぬような思いをしたことか。

今まで運が良すぎたんだ。



どもです~

毎日投稿4日目。

毎日30分ほど投稿する話を確認(書きだめしてます)してるのですが、文章力低くて泣きたくなりながら修正してたら大体800文字くらい増えるんですよね。はい。


さて、明日もよろしくお願いします!

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