二十。脱線
「…このままでいいのでしょうかな…いやそんなことは……」
そう唸るのは魔王連合ノ四。コール・カターヴィレ。
歳のせいで濃くなってきたしわ顔を更にしわがらせ、現状……現魔王。アヤの魔王としての在り方に悩んでいた。
魔王とは本来誇り高くあるべきである。またこれまでの魔王も皆こうしてきた。
しかし今宵の魔王であるアヤといえば…自覚が足りないと言えば良いのだろうか。
確かに才能だけなら他の魔王を超越する。
だがこれまで倒されなかった魔王が居るだろうか?
魔王軍であるコールが考えるのもおかしな話だが、魔王はどれだけ強かろうと必ず敗北する。
だがあの方なら……あれ程の力を有するアヤなら…ついにこれまでの常識の鎖を壊してくれるのではないだろうか?
……もしそんな希望があるなら…アヤには強くなり、強くあってもらわねばならない。
そんな期待を抱いてしまう程に私は……師の誤ったあの決断が…
「忘れられないんだよなぁ……」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「ルデア殿。少々よろしいですかな?」
有言実行。卑怯でもいい。なんとでも言えば良い。
アヤを真の魔王にするために私が育てよう。
その為に捧げれる物は全て捧げよう。それがコールの。私の戦いなのだから。
これではまるで私が魔王ではないか。皮肉な世界だな。
「王を。ヴィルセディスを潰しましょうぞ。……魔王様の意思と老骨の悪知恵で。」
「殺すのは無しだよ?ボクの気が晴れないからねぇ‼……その為にボクにどうしろと?」
ルデアは以前からヴィルセディスにとてつもない恨みを抱いている。
彼は勘違いしているようだが手を下すのは彼だ。……どちらかというとそれ以外に手段が無い
「ルデア殿は魔王様が命じた時にヴィルセディスを……。そうですな。時は1月3日なんてどうですかな?4日後です」
「あぁ、ああ、あはっ!なんだ、なぁんだ。殺すのボクなんだね!それを先に言おうよっ!…ついにっ……4日後……。」
病魔を操る彼なら病弱な王を……。
そして殺させた後で王の正体をアヤに明かし、絶望に立たされたところに暗示をかける。
解けることのないパズル……溶けることのない永久凍土のようにトケナイ完全をかける。
お約束は敗北につながる。決戦で勇者が惑わしても動じない心を、アヤに。
ーーー彼と彼の師の話は今から200年前へと遡る。
「トールよ。そなたが魔王なら勇者と魔王連合の戦いでどう動く?」
「包囲して一網打尽……でしょうか?」
「はっはっは!……まぁ普通ならばそうであろうな。……だがな。儂は勇者と魔王の一対一の場を、卑怯で染め上げとぅない。」
第87代目魔王グラドネス・ドレド。
過去最高の力を持ちながら人類を当時の王から守るために戦った魔王である。
当時よりさらに20年前エルドルは控えめに言って最悪な国であった。
国王であるセトゥ・エルドルは国王の為の制度……絶対王政をふりかざし国民を困窮に貶めた。
それをエルドル国民であったグラドネスは見過ごせなかった。
どうにかして今の王政を崩せないだろうか?
そう考えたグラドネスが見つけたのが禁忌とされる魔王の書の存在。
それを使い空席だった魔王の座に座ったのが彼なのだ。
魔王になる方法は大まかに3個。
1.先代魔王の任命。2.始祖魔王の魂による任命。3.魔王の書を見つけ出し自らに取り込む。
グラドネスの用いた魔王の書を取り込む方法を過去に試した者はいなかった。
……この書を使った魔王は他の方法よりさらに強い力を得ることができる。一方でその人生の最後は、敵の討伐と同時に共倒れ、又は敵に敗北すると決まってしまう。
グラドネスは自らの命に代えても国民を守ろうとした。
ーグラドネスは王国史に残る魔王の中で唯一の国民の味方であり、唯一の人間だったのだ。
そのことがセトゥの耳に入った時の彼の傍若無人ぶりは正気の沙汰とは思えないものだった。
…反乱を起こす可能性のあるものを殺し、その他を洗脳する。
その地位を確固たるものにしたのである。
そんなことがあってから20年後。
未だに理不尽を振りかざす王と魔王との戦いは終わらなかった。
その戦いに終止符を打つため、洗脳された勇者との戦いの作戦を考えていた所だ。
魔王の彼に仕え、彼の在り方に尊敬しており、20年間も仕えたコールでも未だに彼の考えには及ばない。及べないのだ。
「儂はな?後世に恥じない戦いがしたいと思っておる」
「恥じない?」
「そうじゃ。確かに包囲する方法が確実であろう。しかしな。そんな方法で勝って後世に語り継いで……それで良いと思うかの?」
「やはり師匠様……今宵の魔王様は変わっておられる。」
「勝手に言うが良いわ」
そういい二人で笑った。先代の魔王がどうあったかは知らない。ただこれでいいのだ
_今はこれで、いいのだ…
それから2か月後。コールの師であり当時の魔王グラドネスが死んだ。勇者がしかけた卑劣な罠にかかり殺された。
王政はセトゥが病気で亡くなり、次の代に引き継がれたときに安定した。
戦いなんてそんなもんだ。
過程より結果が大事だと。
……確かにグラドネスの言うことはコールの人生を大きく動かすことになった。
だが戦いにおいては結果無くしては元も子もない。
だから……
「その時が来たら私はどんな手段をも切ろう。」
そう心に刻んだのだ
おひさしぶりでげそ。いせガチ!は早くも20話…ご愛読ありがとうございます!これからもぼちぼち語彙力あげながら頑張りマッスル!
投稿ついでに第一話の大幅修正しました。