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十八。神々のジハード

「あーるっじちゃ〜ん、あーるっじちゃ〜ん……」


雑なリズムに合わせ、揚々と王都の周辺を歩く1人の男、魔王連幹部ルデア・ディザステロ。

この日の外出目的は勇者の監視だ。

それ以外にすることが無いと言うだけの話なのだが……


(ルデア殿、目的と履き違えないようにしてくださいませ。)


意志を通して語りかけてくるのはこれまた魔王連幹部であるコール・カターヴィレ。

権能である思考を読む力の応用を使い、ルデアからの状況報告を待っているのだ。

「もっちろぉ〜ん!ボクの真なる力で王国軍を滅多打ちにしないといけないからね!」


(それならよろしいのです。)


ひょうひょうと言い放った「王国軍を滅多打ちに」という言葉はルデア本人から見て、とても重いものだった。

父を葬った現在の国王、ヴィルセディス。

あの男だけは必ず自らの手で殺めなければならない。

この手で必ず。


怒りに打ち震え、強く握った手から出た血が真っ白な手袋を赤く染めていく。

これで父の事を思い出すのは何回目だろうか。


否、忘れてはならないのだ。

ルデアが父の事を亡くなったと認めるにはヴィルセディスの首を見るまでは出来なかった。

この悲願が成し遂げられた時、初めて父と別れの挨拶が出来る気がして……


「きゃははぁ!なんか重そうな奴が居んだけど!」


「ロキ、やめましょう。トラブルになったらイデア様がなんと仰るか分かりませんからね。」


唐突に現れたのは12歳程の見た目の少女と、大人しそうだが目つきの悪い男性だった。


そんなことよりもロキと呼ばれた少女は今なんと言った?

重そう?

何年も恨み続けたこの激情を“重い”の一言で片付けたロキに殺意が湧く。



「……ざけんな。クソガキが」


握っていた拳を更に固く握り、精神、身体、時空全てに強力な圧力をかける。

この圧に耐えれるのはそれこそ魔王か、最強クラスの勇者くらいだろう。


(ルデア殿!待ちなさい!こやつらは……)


「これ喧嘩売ってんの?へぇ〜、このアタシに喧嘩売ろうってんだぁ?カッコつけのカラスちゃんが。……ノアノア〜!絶対に手出ししないでそこで見ててね」


コールの忠告も無視し、その挑発的な態度にルデアの堪忍袋の緒が切れる。

何年も、何十年もの恨みが全てぶちまけられる。


父やその前の先代から受け継がれるマスクを否定された。

もう手加減はしない。


「タブ・リチュアル・マキシマム」


ディザステロ一族のみが利用出来る禁忌の転移魔法。


ルデアが最も強力となるフィールド、地獄へとロキと男を転移させる。


地獄の丘の上から左手の人差し指で空を突き破るように持ち上げて立ち、少女を見下ろす。


「ボクのマイハウス、地獄へご招待さ!」


「はぁ。きっしょっ!雑魚は何やっても雑魚なのにね!きゃはっ!」


地獄に戻ったルデアにそんな煽りは通用しない。

むしろ圧力付与が通らない程の強敵と出会えて幸福感すら感じていた。


「さぁ、ここで死んでもらおう!子供だろうと手加減はしない。……インフェクション・ラージ」


特大の病を誘う霧が刻々とロキに迫る。

触れれば全身のありとあらゆる細胞を破壊し命を落とす攻略不可魔法……否、これこそがルデアの真の権能と言えよう。

そんな権能に対してロキは……


「……ふぅ」


吐息1つで霧を散布させた。


「この程度で死ねとかウケるんですけど!!テメェ、見た目からして魔王連だよね?魔王連ザッコ!」


別にルデアはこの言葉に対して怒っている訳では無い。……「怒」の感情どうこうの前にルデアはロキの話など聞いていないのだから。


「……権能が破られた?ボクの真なる力が破られた?」


マスクに隠された素顔は動揺で青くなり、今から取るべき行動を考えていた。

思いつかない。

落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け。

父から継承したディザステロ家の権能。

これこそ最強だと思っていた。思い続けてきた。

それが少女の吐息1つで消える?


このままでは心を保てないと判断し、たまたま調子が悪かっただけ。と合理化する。

これで良いのだ。……

最近使ってなかったから訛っただけ。また練習すれば……


「退屈なのも嫌だからぁ、ここで強者って言うのをアタシが教えてあげちゃいます!強者って言うのはこういう事っ!…〝レイン〟!」


(ルデア殿!逃げろぉぉぉ!)


その絶大な力にルデアは為す術もなく消し飛ぶ……訳ではなかった。


「はぁ……はぁ……」


ロキの詠唱とほぼ同時に簡単な転移魔法を使い地獄から脱していた。

初めて恐怖を感じた。その規格外さに。

あの少女の皮を被った化け物ならここに居ても直ぐにバレるだろう。


「テレポート…」


弱々しく転移魔法を唱え、魔王城に戻る。

……その場から消える瞬間目に映ったのは…


「魔王連合……必ず王国と共に消し去ります。我らの悲願の為に。」


と不吉な言葉を残す、ロキと共に居た男性だった。


▶▷▶︎▷▶▷▶︎▷▶▷▶︎▷▶▷▶︎▷▶▷▶︎▷


「戻りました。イデア様」


優麗なカーテシーを披露し現れたのはロキと共に居た男……ノアだった。


「同じくアタシも戻ったって感じ?きゃはっ!」


後から雑なお辞儀をして現れたのはロキ。


この場は地上からは程遠い位置にある天界。

そして、この場にはロキとノアを含めた、総勢9名。……先日までは10人だったのだが。


「ご苦労様です。……ルシフェルを屠った魔王連合はいかがでしたか?」


そう問うのはこの男を覗いた9人をまとめるイデア。

端正な足を組み、玉座に座る姿は誰が見ても見とれる程に美しいものだ。


「アタシから言わせてもらうと、超雑魚って感じ?魔法1発打とうとしたら逃げられちゃった!」


「しかし、あの鳥面は魔王その人ではありません。それなのにあれ程の技術を保持しているのはかなり危険と見ても良いかと……」


自信満々に自己アピールをするロキに対し、警戒を促すノア。


どちらの意見も間違ってはいないのだろう。

確かにこの場から見ていても、あの場での鳥面は弱々しい者だった。

しかし、保有する魔力量は魔王連でも最高レベルなのだ。……だがほとんどの使い方を誤っているため、多大に消費してしまう……言わば燃費の悪い車のように。


敗北を知った今、彼がその力を操れるように鍛錬を積むことは目に見えている。


彼が覚醒すればノアとロキが総出でかかって接戦と言える程まで成長すると思われる。


イデアの中で、ノアとロキの話から大体このようなことを読み取った。

現にあの戦いの場に居なくても、空から見ていただけでこれだけの情報を読み取ることが出来たのだ。


「2人とも、お疲れ様です。その者に追い抜かれないように鍛錬は怠らないようにしてください。」


「はい。もちろんです」


「アタシは余裕なのに〜」


この2人もまだ成長過程にあると言える。

鳥面程では無いだろうが必ず強くなるだろう。


「さて。」


正面に集結している部下を一通り見る。


皆、イデアに絶対的な忠誠を持っている者ばかりだ。

そんな部下の1人、ルシフェルを殺めた魔王にはそれなりの恨みもある。


本来ならば他の次元の国から滅ぼすつもりだったのだが、こうなれば話は変わってくる。まず初めはエルドル含むこの次元から破壊しても良いだろう。


「ソロモン」


「はぁい」


「モーゼ」


「あぁ」


「ノア」


「はい」


「ガブリエル」


「え、あ、はい!」


「アベル」


「うん」


「カイン」


「へいへい」


「ロキ」


「ん」


「アンナ」


「えぇ」


長年従えてきた部活を再度見渡す。


「さぁ、始めましょう。我々の聖戦(ジハード)を」



ども。お久しぶりです。REIKAです。

恒例の言い訳タイムに入ります。

この小説ですね、大凡の展開は決まってるんですけどそこに至るまでは執筆しながら考えるわけです。

はい。行き詰まりました。

ルシフェルなんて出さなければ良かった……なんて思っていた頃、現代社会で哲学と宗教を習ったんですよね。

その授業でなんかピンと来まして。

あ、これ2章の内容にも繋げれるじゃん!ラッキーってなりました。(2章は魔王戦の後)

(追記・2章はそんなに長くないです。多分7とか8章に繋がるんじゃないでしょうか。)

あ、wikiの聖書に登場する人物を参考にしてるのでキリスト教の人が多いのかな?

なんか敵っぽい感じですけど馬鹿にしたりはしてないのでその辺は把握お願いします!

あと、どうしてもその辺の人を出すと某引っ張りハンティングゲームが出てくるんですよね……

性別なんかは割と被ってます。違う人も居ますけど。

あとイデアって言うのはプラトンって哲学者が唱えた理想と言うか完全体みたいな意味合いです。


作者的にはなんだか魔王連が敵っぽく無くなってきた気がします。

うん。ルデア可哀想。


さて、今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。

あと「LAST世界_ONES AGAIN」って話も書き始めたので宜しければそちらもよろしくお願いします。ではでは〜

2020年6月 そろそろ高校にも馴染んできたかなぁと思いながら

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