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誰も知らないおはなし

作者: 田久青

昔、昔、大昔


誰も知らないくらい大昔の


誰も知らないお話です



誰も知らないある村に


誰も知らないおじいさんが一人で住んでいました



おじいさんの名前も


おじいさんがどんな人生を送ってきて


なぜ、その村に一人で住んでいるのか


誰も知りません



おじいさんは


朝起きると


お日様に向かって


「今日も一日、よろしくお願いします」


と手を合わせ



夕方暗くなるまで


畑を耕したり


山へ山菜を取りに行ったり


川に釣りに行ったりしていました。



ある日のことです。


おじいさんが、いつものように


山へ山菜を取りに出かけていたときのことです。


きりかぶでひどく体を傷つけてしまった


一匹のうさぎを見つけました。



おじいさんは、そのうさぎを可愛そうに思い


そっと抱き上げると


自分の家へ連れて帰りました。



家へ帰ったおじいさんは、


家にある薬をつけたり


うさぎが元気になるようなスープを作って


飲ませたり、


一生懸命、看病しました。


しかし、そのうさぎの傷から、ばい菌が入ったようで


全然、良くなりません。



おじいさんは、次の朝、


どんな傷にも効くという幻の薬草を取りに


山へ向かいました。


その薬草は、山の崖の途中にある薬草で


とても危険なところに生えていました。



おじいさんは、何とかうさぎに良くなってもらいたいと


必死で崖をよじ登って行きました。


どうにか、こうにか、がけをつたって


何とかその薬を右手に握り締めたときでした。


体を支えていた右足の石が外れ


体のバランスを崩して


おじいさんは、まっさかさまに、がけ下の川原に


落っこちてしまいました。



おじいさんは、体を川原の石に強く打ってしまい


死んでしまいました。





右手に握っていたその薬草は


おじいさんの手から離れ


その川を流れに沿って流れ始めました。



その薬草は、川をどんどん流れていきます。


どんどん流れて


おじいさんが住んでいた村の近くの川を


流れているとき


どこからともなく小鳥が現れ


その薬草をくちばしでくわえました。



その小鳥は、その薬草をおじいさんの家で


寝ているけがをしたうさぎのところまで


運んでいきました。


うさぎは、小鳥が運んできてくれた薬草を


口の中に入れました。



それから、数日が過ぎ


そのうさぎは、すっかり体もよくなり


元気に山へ帰っていきました。



誰も知らない村に


雪がちらつき始めました。


誰も知らない村が、雪におおわれるのに


そんなに時間はかかりませんでした。




おわり










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