プロジェクト【シウテクトリ】
「え?え?」
美奈子は、パニックに陥っていた。
誰もいないはずの、執務室に誰かがいて声をかけてきたのだ。
しかも、天気予報プログラムを見ながら....
「大丈夫ですか?」
「え、ええ、大丈夫よ」
落ち着いて考えたら執務室の社内用のインターフォンがONになっており、受付に声が聞こえたので心配して受付から聞いてきたと判断した。
インターフォンを見るとOFFのなっていた。
「故障かしら?」
ONとOFFを繰り返しOFFにした後に美奈子が聞く。
「あ、あ、聞こえますか?」
「き、き、聞こえます」
「きゃあああァァァ」
「わああァァァ」
少しして落ち着く2人。
「あなたは、何者?受付の人?」
「明日の8:00から配属になるので、下見に来ました」
素直に答えてしまう一新であった。
そこで、大きな2人には勘違いが発生する。
「え!まさかアンノウン様!明日8:00に来られるのですか?」
「いえ、会わない方が良いと思うので、今回の様に音声だけで良いと思っています」
山田 一新の情報は、セキュリティで守られていて奈緒美は一新の情報を全く知らないが、その事実を一新は知らない。
一新は、名前で呼ばずに、あだ名らしき不明者で呼ばれたので、嫌われていると思い込む。
嫌われていないとしても、一緒にいるだけで周りの目が悪くなり美奈子に迷惑がかかると考えた。
美奈子は、アンノウン様は、秘密がいっぱいあって、様々な組織に狙われていて、直接会ってしまうと、私の身に危険が発生すると考えて避けてくれていると思い込む。
「わ、わかりました。でわ明日8:00に、またここで話しましょう」
「了解しました。伊藤さん」
「美奈子でいいですよ」
美奈子の顔は真っ赤である。
「今、少しだけお話し良いでしょうか?」
ネット越しである為、一新にはゆとりがあった。
「え!なんでも聞いてください」
「プロジェクト【シウテクトリ】ってなんですか?」
美奈子は、悩む。
その案件は、特級極秘事項であり、国が絡んでいた。
「直接会えて、信用出来たらお話しします」
一新は、悩む。会ったら、きっとドキドキして会話できない。迷惑もかけてしまう。
手伝いながら探っていこうと結論に達した。
「わかりました。会う機会があった際に聞こうと思います。明日からの配属ですが、何か手伝える事がありますか?」
プロジェクト【シウテクトリ】は、最速のコンピュータを作製する実験プロジェクトであったが、開発中のコンピュータが、あまりに処理速度が速い為に性能を全て使う速度計測が存在しなかった。
まさかと思いつつも一新に依頼してみる。
「今、実験中の大型計算システム(スパコン)に対する高負荷な速度計測がないんですが、作る事は可能ですか?」
自分の未来予測プログラムが、最適だなと一新は思い回答する。
「プログラムソースは、開示出来ませんが、負荷をかけてほしいスパコンを教えてくれれば、負荷の割合および負荷結果をお渡しする事は、可能です」
「さ、流石、アンノウン様!」
まさか、即答されると思わなかった美奈子は、ますます一新に惚れる。
「でわ、音声だけですが、明日8:00にここで」
「はい、また会えるのを楽しみにしてます」
美奈子は、天国にいるような気分であった。
今まで探していた人と接触が出来たことや、明日から同僚になる事。
速度計測の悩みが一瞬で解決した事。
「凄い幸運だわ!あとは、どうやって実際に会うかね!ウフフゥ」
一新は、考えていた。
プロジェクト【シウテクトリ】は、先ほどの会話で予測がついたが、【景】を利用して研究する最速コンピュータ作成プロジェクトだと考える。だがVMGとの繋がりが見えない。明日プレイしたら見えるだろうと考えながら帰宅することにした。
VMGが始まる予定