王子様を探して
「私の王子様は、一体誰なの?」
叫びながら、ビックス本社の最上階にある広い執務室で、たった1人でキーボード叩いている。
豪華な机に豪華な椅子、簡易とはいえ上質な応接セットも部屋に置いてあった。
彼女の名前は、伊藤 美奈子である。
アメリカ人と日本人のハーフで、金髪で青い目をしたグラマラスな非の打ち所がない美人である。
頭脳も秀才であり、日本最高の帝都大学を主席で卒業している。
現在の立場は、ビックスの技術顧問の最高責任者であり、プロジェクト【シウテクトリ】を一人で仕切っている、やり手でもある。
元は、22歳で大学を卒業後に日本科学センターに入社して、完璧な優秀さで日本科学センター所長に25歳で就任する。
就任後にビックス社と取引があり、ビックス社の管理システムや業務システムが、神が創ったと思われるほど精巧な造りをしている事を知ってしまい、創った人物を探したが、ビックスの完璧なシステムの前に個人情報を取得できなかった。
そこで、その人物を探す為に、転職をしてビックスへ入社したのであったが、既に彼女が入社前に一新のデータは機密事項になり、副社長以上の権限がなければ見れないトップシークレットになっていた。
一新が、副社長の鈴木に切り捨てられ、一新の全ての功績を鈴木が回収する為に、一新がビックスに在籍している事以外の社員データは、ほとんど消されていた為に、社内にはビックス社の完成されたシステムを構築した人物を知っている人は副社長の鈴木1人であった。
だが、鈴木は一新も知らない事だが、決して会社から一新を追い出す事はせずに、一新が自由に何事も出来るように全力で裏から尽くしていた。
一新は、出世欲もなく価値観がずれていたので気にせずビックスに在籍していたのだった。
鈴木が何をしたいかは、おいおいわかっていく。
ただ、今でも一新の大親友であったのだった。
「忌々しい!副社長の鈴木め!いつか私が副社長になって王子様に会うのよ!」
美奈子の中では、ビックスのシステム開発者は、世界で唯一尊敬出来る人物になっていた。
美奈子は、ビックスの社長の存在も調べていた。
総合商社であるビックスは、創立者は有名であったが、副社長に鈴木が就任した数年後に社長が入れ替わった。
その社長は、全くの謎の人物である。
名前も容姿も年齢も隠匿されている。
社内で、その姿を見たものは皆無。
株主総会でさえも欠席しているが、公開株式を鈴木と一緒に50%以上保有しているため誰も逆らえず、会うことが出来ない人物であったのだった。
国のシステムもビックス社が開発したシステムで管理されているため、セキュリティーが完璧で税務署のデータでも痕跡すら掴めないでいた。
「あああああ!イライラします!」
キーボードを鬱憤を晴らすように叩く美奈子のモニターに人事異動の通知が来る。
「明日8:00から、配属?
名前は...不明?
ちょっと待って??」
一新のデータは、一新が知らない間に、全て副社長以上の権限がないと見れなくなっていたのだった。
「鈴木!権限ないと見れないじゃない!誰よこれ?」
美奈子が、不明が今まで何をしていた人か検索し始める。
だが、過去の情報全てがセキュリティーで閉じられていて見れない。
唯一最後の天気予報プログラムの納品履歴だけが記録に残っていた。
「天気予報プログラムって?ダサイわね。あんな不確定な予想しても無理に決まってるじゃないの」
プロジェクト自体を鼻で笑う。
納品したプログラムを見た瞬間、その笑いは真剣な眼差しに変わる。
「何ですって!!99.8%精度?!何これ!」
急いで、納品されたプログラムソースを見る。
美奈子の目に涙が溢れる。
「このプログラムソースの特徴は、王子様。
やっと見つけた。
会社に、やはり在籍してたんですね」
毎日、尊敬する王子様の無駄のない完璧なシステムプログラムを眺めていた美奈子には、天気予報プログラムが、ビックス社のシステムプログラムと同一人物が作った事を理解した。
泣き止むとく、赤い目を擦りながら、アンノウンに直接メッセージを書き始める。
配属内の社員同士は、相手が不明でもメッセージチャットが可能である。
震える手で、送信先をアンノウンに選択してメッセージを作る。
「初めまして?お初にお目にかかります?尊敬してました?何を書けばいいかわからない!」
美奈子は、生まれて初めて動揺や混乱を知った。
「とにかく、会うことが最優先ね!」
明日8:00にビックス本社の最上階執務室へ出頭するようにメッセージを送った。
「明日!会えるのね!」
夢が膨らむ美奈子であった。
ビックスの社長の謎は、早めに書きたい....
もう少しで、話の世界観が変わります。