条件と可能性
17:00に天空の黄昏で美鈴と待ち合わせをしているので、美奈子と一旦別れてゲーム内で合流する事にする。
「美奈子さん、ゲームにログインしてロディニア城入口で待ち合わせしましょう。社長に会う前に確かめることがあるのでお願いします」
「わかった。下の階に私のVMGの筐体があるので行ってきますね」
ロディニア城入口で、一新と美奈子は、再び合流する。
ツヌグイは、全身を隠すように白いローブ姿である。
ケイトは、リアルとほぼ同じであるが、髪型がリアルでは肩まであるが、ゲーム中ではショートカットになっていて色が青になっている。
目の瞳は、そのままの青色になっている。
服装は、青いプレートアーマで右腰にショートソードの携帯している。
「天空の黄昏に移動しますよ」
「どおやって行くのかしら?【天空の黄昏】に行くには【ゲネスブルク】と言う塔タワーダンジョンの頂上にある特殊転移門ポータルの【天空への門】をくぐらないと到着しないはずだけど?」
ツグヌイが暗殺者スキルの【遥かなる転移】を詠唱する。
「ポータル」
天空の黄昏の転移門が開く。
「やはり、既に一度行った場所なら何処でも移動できそうだ」
「嘘!固定ポイントしか開けないはずでは?」
「スキルレベルが30超えると何処でも開けるみたいです」
「20も装備で上乗せしてるの?どおやってるの?そもそも暗殺者?」
「企業秘密ですよ」
暗殺者の【遥かなる転移】のスキルは、レベル1では、店で売っている転移門の場所までで、レベルが上がって行くと消費魔力が減少する。
レベル10で消費魔力が大きくなり、モンスタードロップの転移門の場所まで行けるようになり、レベルが上がって行くと消費魔力が減少する。
そして、現在の最高装備でレベルを上げてもレベル27程度が限界なのだがレベル30を超えると過去に行った所であれば何処でも開けるようだ。レベル99のツヌグイなら余裕で開けるが、現在ではレベル27が最大なので、既にチート確定になる移動門と言える。
天空の黄昏のダンジョンの登録ポイントへの移動門前に2人が到着する。
マップハックを見ると現在時刻は、16:30程である。
「ダンジョンに探索はやめて、美鈴さんに会いに行ったら、一緒に社長へ会いに行こうと思います」
「どういう事かしら?」
「プロジェクト【シウテクトリ】の被害者の会でも作ろうかと。ビックスの社長が主犯だと思いますが、このゲームは何かしらの実験だと思います。その時に説明しますよ」
「うふふ。楽しみにしてる」
「あ!もう来てる!相変わらずどおやって来たの?」
シリウスが、走って天空の門からやって来た。
「ケイト?ツヌグイさんと知り合いだったの?」
ケイトを見て少し不機嫌そう言う。
「シリウスさん!今からリアルで付き合って欲しい所があるんですが良いですか?」
「え?えええええ!」
「品川駅に1時間後とか来れます?」
「ひいい!」
ツグヌイに会える事で、テンションが上がる美鈴だったが、病気の回復中である美鈴は、歩行が微妙であったため不安になる。
「い、行けますが少し遅れるかもしれないです」
「住所を教えてくれれば、迎えに行っても良いよ」
「え!悪いですよ」
「では、品川駅に18:00で構いませんか?」
「わかりました」
「電話番号も教えておきますね」
「キャァ!」
何故か喜ぶシリウスであった。
3人はログアウトした。
ログアウト後に、美奈子と再びビックスサーバーの一新のいる部屋に集まる。
「美奈子さん、美鈴さんの住所わかりますか?」
「個人情報だけどわかるわよ」
一新のパソコンを使用して、ビックスサーバーへ美奈子のIDでログインした後に、プロジェクトのデータを閲覧する。
モニターに住所が表示される。
「ポータル」
目の前に転移門が開く
「嘘!?」
美奈子が驚く。
ゲームの中から出てきたチートツヌグイのINTは9999である。考えた結果、まさかと思って一新が試したが、【遥かなる転移】のスキル99では、想像したところに開けるようだ。
「ここまで、とは.....」
一新は、今いる世界の仕組みを知り始める。
「理解出来ない....」
美奈子は、唖然としている。
「とにかく行きますか」
2人で移動門をくぐると一軒家の前に出る。
まさに玄関から美鈴が杖をつきながら家を出ている最中であった。
2人と目が合う
「え???!!ツグヌイさんとケイトさん?」
「はじめましてツヌグイです」
「どおやって来たの?」
「ポータル」
ビックスのサーバー室への転移門が開かれる。
「えええええええ!!!」
「シリウスさん、ささ入って」
「ええ!!」
目をまん丸にして3人で元のビックスサーバー室へ戻る。
「ここは、何処?」
「ビックス社のサーバー室ですよ」
「何で、ゲーム中の魔法が使えるの?」
「その謎解きに今から向かうところですよ」
「それより住所は何で知ってたの!!」
「美奈子さん話して良いですか?」
「機密なんだけどね。ツヌグイさんの考えに従うわよ」
「ビックス社と日本科学センターで合同で開発したこのゲームには、秘密があってゲーム内のステータスが一定の条件下でリアルに適応されるようなんですよ」
「え!私の病気が回復したのも関係あるの?」
「私の読みだと関係あります」
「それは嬉しい話だけど、住所は?」
「ゲームの参加者の個人情報から....」
「訴える...」
「困ったかな....」
「冗談ですよ。私と会いたかった理由は?」
「その条件に、あなたが当てはまっていたので実験したくてお呼びしました」
一新が毛布を丸めて部屋の隅に置く
「毛布に向かって攻撃魔法を詠唱してみてください」
「嘘!私も使えるってこと?」
「それを確かめる実験です」
美鈴は、少し考えて攻撃魔法を詠唱する。
「アクアブリット」
空中からバケツ一杯ほどの水が球が現れて、高速で毛布にぶつかって毛布がびしょ濡れになる。
「ええええええ!使えた!!!」
「そのスキルに、いくつステータスを振ってますか?」
「レベル1ですよ。ゲーム中に水が必要な時に使えると思って振っといたんですが、攻撃力は、ほとんどないです。稲妻系の魔法の前に使うと威力が上がるのでコンボで使ってます」
アクアブリットは、スキルを振る事に水の球の速度が上がって行くスキルで、レベル10で薄い鎧なら貫通する程の速度(水圧)になる。
水の球がゲーム中の1/2程の大きさで、あったので美鈴は、2×2×2で8倍の体積比で考えると1/8程シリウスとしてのゲームキャラクターの能力が美鈴の現実になっていると考える一新だった。
大体の今回のカラクリがわかった一新は、ビックス社へのポータルを開いて移動する事にする。
過去にビックス社の副社長室には、行ったことがあるので思い描きながら詠唱した。
「ポータル」
転移門が開きビックス社本社への転移門が現れる。
「現実で転移門見るなって不思議な気分」
美鈴が、不思議な現象を連続で目の当たりにして驚きが止まらない。
「さて、少し早いですが向かいましょう」
3人は、社長へ会いに移動した。