完全変態
新章です。
ここから急展開したいところですが、説明を詳しくしたいので、ゆっくりになると思います。
一新は、ログアウトして、頭にかぶっているヘッドギアを外して、毛布を押しのけて【シウテクトリ】の筐体から降りる。
降りた瞬間に違和感を感じる。
服がもの凄い、きつい。
眼鏡をかけてないのに、視界がくっきり見える。
立ち上がると、目線の高さが違う。
身長155cmの目線が20cm以上高くなった感じである。
「あれ?」
顔を触ろうとすると、服がはじけそうな豊満な胸に手があたる。
「おっぱいがあるぞ?」
もんでみる...
「本物だ..え?声も違うぞ?」
ゲーム中の周波数変更の声と同じで、透き通る女性のような声になっている。
手と足を見ると、細くて綺麗でピチピチである。
最後に、こわごわと大事なところを触ってみる。
「.....無くなってる.........」
これは、どういう事なんだ!!
山田一新の精神力は、真っ白い灰になった。
5分ほど固まってしまった。
はっと!我にもどる一新であった。
「ステータス!」
目の前の空間に数字が表示される。ゲーム中と変わらない。
だが、本人が見えているだけで外界に不思議な現象を引き起こしたわけではない。
次に一新は、毛布を丸めて部屋の隅に置いたら、右手を毛布に向けてドキドキしながら呪文を詠唱する。
「スパーク!」
右手から雷撃がでて、毛布が一瞬で灰になる。
「なんだとおおおおおおおぉぉ」
少し考えてから、もう一度、魔法を詠唱する。
「リペアアイテム」
灰から綺麗な毛布が生まれた。
「わかった!まだ、現実そっくりな仮想空間なんだ!」
部屋にある、パソコンに向かって【シウテクトリ】のゲーム攻略とプログラムデーターを調べ始める。
INTが9999のツヌグイが適応されているのか、すべてがすぐさま暗記できる。
一通り【シウテクトリ】のすべての情報を見終わるともう一度、魔法詠唱する。
「外見偽造山田一新!」
きつかった、よれよれの背広がきつくなくなり、目線が身長155cmの元の高さに戻る。
「よっしゃ!って声が治ってない!さすがに声を変える魔法はなかったな...」
女性のような声になってしまい、外見と声の違和感でものすごい気持ち悪いひとになってしまった。
時間を見ると22:00であった。
データセンターは、12時間を超えて滞在することはできない。
「一度、外に出て戻ってくる必要があるな。
女性用の服を買わないとまずいかな?
外見偽装は、1時間しか継続しない上に、解除後に再度同じ魔法をかける場合は、5分の空き時間が必要になってしまう」
考えて、アイテムの中に、外見偽造効果がある、ネックレスがあること思い出す。
「アイテムボックス!」
.....しかし何も起きなかった....
「自分自身だけは、ゲーム中のアヴァターになるが、アイテムは持ち出せない仕様かよ。これどうすれば現実にもどれるんだ?」
もう一度、パソコンに向かって、ビックスサーバーとテクノVMGのサーバーとスパコンの【景】を全て調べる。
プロジェクト【シウテクトリ】も再度調べる。
INTが9999のツヌグイが導き出した回答は...
「やばい..これ現実かも....脳が肉体に及ぼす影響ってここまでなのか?」
今度は、世界中の脳科学とサイキックなどのオカルト系の資料も検索し始める。
時間が経過して、24:00になったらしく、インターフォンが鳴り警備主任の田中 大将が、話しかける。
「山田さん!残業かい?申告がないけど大丈夫かい?」
「田中さんすみません、調べ物が多くて少し遅くなります。いったんそちらに行きますので再入場しますね」
「え?山田さん?声が女の人みたいだよ!」
「あ!風邪ですよ!いま、行きます」
インターフォンを切って、既に効果が切れてしまった外見偽装を再度唱える。
「外見偽造山田一新!」
「よし!声以外は昔のままさ」
ちんちんを触りながらサーバー室の個室から出て守衛所を目指す。
守衛所にいる田中を発見する。
「田中さん」
「お!山田さん。声が変だから女の子でも連れ込んだのかと思ったよ!」
「いやはや、風邪で喉がやられたみたいで」
声の良さに田中が驚く。
「ウグイス嬢みたいなこえになってますね。そのままの方が良いかもしれませんね」
「この外見との違和感で逆にまずいでしょ?」
「あはははぁ、確かに変ですね」
「いったん、外に出て買い物したら戻ってきますね」
「調べ物が多いようなら、ゴミを持ち帰るなら多少の飲食物の持ち込み許可しますよ」
「相変わらず、ゆるくて、たすかります。ではいってきます」
「あははぁ、ここだけの話、山田さんだけしか甘くしてないよ」
データーセンター内には、飲食物は持ち込み厳禁で水飲み場が設置されている。
田中は、山田に甘いのでった。
駅前まで、行くとさすがに24時をまわっているのでコンビニ以外の明かりはなかった。
「終電も終わってしまってるな...」
タクシーで帰る選択肢があったが、貧乏性なので帰ることもできない山田だった。
コンビニに入ると、美奈子が立ち読みしていた。
美奈子の家は、データセンターから一番近い駅の前に新しくできた、高層ビルの最上階であった。
攻城戦で、美奈子と風間は、中盤で脱落して、城の入り口のセーフティーポイント(PK禁止エリア)で、待機していた。
最後の勝敗をみていたら、一騎当千のツグヌイが参加していることを知り、探し回った。
しかし、見つからなかった。合流したシリウスから事情を聞いて、ツグヌイの素晴らしさを聞いていたらログアウト後に寝れなくなって、コンビニに来たところであった。
『なんで、美奈子さんがいるんだ!』心で叫びながら、一新は、コンビニの弁当コーナーへ行く。
軽度の対人恐怖症が出て、少し挙動不審になってしまう。
右手と右足、左手と左足を一緒に動かして、弁当コーナーで選ぶ。
弁当と飲み物を取ってレジに行くと、拳銃を持ったマスクとサングラスの175cmほどの男が2人、レジに向かってお金を出せと言っていた。
「お前たち動くな!か、かねを出せ!」
「きゃあぁぁ」
叫びながら美奈子が立ち読みしてた、恋愛の雑誌を捨てて手を挙げる。
一新は、無言で弁当を持ったまま、手を挙げた。
ステータスはツヌグイである一新は、いつもなら取り乱していたかもしれないが落ち着いていた。
『性格も変わったのかな?』内心は、複雑であった。
「おまえ、2人から財布取ってこい」
2人組の一人が、一新の体を調べ始める。
ちょうど、首筋にエルボが入れやすい位置関係になった。
一新は、ソヌグイのステータスで攻撃したら頭が取れるじゃないかと思って手が出せなかった。
財布を取って、中身をみたら文句を言われる。
「こいつ!2000円しか持ってない!雑魚だな」
財布から2000円を取り出してポケットに入れると財布を床に捨てる。
次に、美奈子の方へ向かっていく。
一新が、小声で魔法を詠唱する。
「睡眠」
美奈子に近づく男が倒れた。
「な?なんだ?」
もう一人の男があわてる。
一新が、もう一度、小声で魔法を詠唱する。
「睡眠」
レジの店員に銃を向けていた男も倒れた。
「「え?」」
店員と美奈子がきょとんとしている。
男達が持っていた、銃を2つ回収するとモデルガンであった。
店員に渡すと、店員は警察に電話を始めた。
男から2000円を回収して財布に戻そうとしたら、美奈子が財布を拾ってくれて持ってきた。
定期券の名前を見られてしまう。
「山田一新さん??」
ものすごい怪訝な顔をした。
「なんて、運がない。いや運が高すぎるから引き起こされたのか?」
ツヌグイのLUC(幸運)は、9999である。一新は、それとの因果関係を考えてしまった。
「その!その声は、ツヌグイ様!!」
「『様』じゃなくて『さん』でお願いします」
「ゲーム中の姿と、まったく違うのですが?」
「秘密です。とにかく騒ぎが、まずいのでコンビニを出ましょう」
店員さんに、何かあれば電話するように、名刺を渡してその場を後にする。
「私の家が、そばなので来ますか?」
「えええ!男性を入れてよいのですか?」
「え?ツヌグイさんなら全然OKですよ」
「へ?」
物凄い快挙に、一生分ぐらい一新が驚く
「外見だけじゃだめなんですよ、山田一新さん」
真っ赤になりながら美奈子が言う。
一新は、美奈子の裏話を知らないので訳が分からない
無言で二人は、今後の事を考えながら移動する。
美奈子は、山田一新をどうやって籠絡するかであり、一新は正体がばれてしまったが、どこまで話すべきかである。
美奈子の家に到着する。
6LDKと一新の古いアパートと比べると、物凄い広い。
「狭いところですが、どうぞこちらに」
「いや、めちゃくちゃ広いです....」
応接間に案内されて、ソファーに着席する、一新にべったり接触する美奈子....
気まずい時間が流れていると、外見偽装が解除される。
きつくなった背広がパンパンになってはち切れそうな状態の、美奈子が生まれて初めて見た程の絶世の美女がいたのだった。
白髪で赤い瞳であり、ロングの髪がたなびいてキラキラ光る。
「えええええ!」
美奈子が絶叫して、気絶する。
「お!起きてください!服かしてください!」
応接間に、一新の綺麗な声が響き渡る。




