一騎当千
城の中心部にある、大きな中庭に到着すると、かなりの規模の戦闘が行われていた。
視界の左上のギルド表示が4個まで減っていた。
1位【栄光の丘】5164
2位【王様の杯】2598
3位【かたつむり】678
4位【曙の日差し】211
目の前では、【栄光の丘】が4000ぐらいで、【王様の杯】2000ぐらいの集団戦闘が行われていて、範囲回復や範囲攻撃、範囲補助魔法の魔方陣があちこちに表示されて、地上の花火のようになっている。
まばららに【かたつむり】と【曙の日差し】が、見えるが集団魔法等で巻き込まれて、どんどん数は減っていく
マップハックの表示にあるリアル時間を見ると20:51であった。
「20:51か、差が1000以上あるなぁ。21:00まで9分....」
遠距離から【王様の杯】に向けて、補助魔法と回復魔法を広範囲魔法で詠唱しまくる。
「カバーワイドヒール」
「カバーワイドステータスリカバリー」
「カバーワイドレベルアップ」
「カバーワイドガードコクーン」
「カバーワイドアタックチャージ」
「カバーワイドディフェンスブロック」
「カバーワイドアクセル」
唱えている最中にMPがゼロになって脱力感が襲う。
「おお!使い切った!」
広範囲魔法は、37種類ある。
聖戦士は、そのうち12種類使えるが、7個目でMPが尽きた。
莫大な不正行為MPを持っているツヌグイでも、広範囲魔法の消費MPは、対象人数×必要MPの為である。
「MPは、メモリーデーター上で固定して無限に使えるようにしようかな?」
どこまでも不正行為者のツヌグイだった。
【王様の杯】の戦闘場では、すごい事になっていた。
突然、ギルドメンバーが全て入るような魔方陣が表れて、【王様の杯】全員が、強力な補助魔法のオーラをまとったのだった。
死にかけていた前線の姫戦士装備のルクアが、HPが全回復して驚く。
「何事?」
さらに、DF強化やAT強化などオーラ―が包み込む、しかもスキルレベルが高い状態の補助魔法であった。
【栄光の丘】の剣士2人に斬りこまれるが、余裕で避けて斬りつけると一撃で相手を倒せた。
「え?」
突然、自分の体に羽が生えた感じで、軽い上に動きが早く攻撃力が高くなった感じだ。
周りを見渡すと、ギルドメンバーがすべて、同じように強化されたオーラをまとっていた。
「何が何だかわからないけど!一気に盛り返すよ!!」
困惑したが、シリウスが何かしたのかもしれないと考えて気を取り直す。
「「「「おおおお!!」」」」
周りにいたルクア親衛隊が雄たけびを上げる。
男嫌いなので、親衛隊は女子の集団であった。
襲いかかるプレイヤーを適当に相手しながらツヌグイが表示を確認する
1位【栄光の丘】3012
2位【王様の杯】1998
3位【かたつむり】140
4位【曙の日差し】52
マップハックの表示にあるリアル時間を見ると20:55であった。
「20:55か、まだ差が1000以上あるなぁ。21:00まで5分....1分200人...1秒3人か...行くぞ!」
ツヌグイが、本気モードで【栄光の丘】のギルドメンバー集団へ突っ込んでいく。
とにかく斬りまくる。
【滅殺の長剣】で暴れまわり、一振りで3人同時に消し去ったり、攻撃を避けずに当たりながら魔法使いを突き飛ばし、盾を構えて剣を止めても盾ごと切り裂く。
大量の倒された人の装備品が散乱していく。
ステータス表示の効果が切れていないので名前と職業がばれていく。
「首なしがやばい!」
「新手のモンスター?」
「ツヌグイって誰だ?」
「MPゼロだぞ!特攻?」
「聖戦士の動きじゃないぞ?」
「首なし白衣がくるぞ!」
「なんだありゃ?」
「魔法当てたのにHPが減らないぞ?」
「イベント?」
じゃんじゃん、虐殺に近い攻めを仕掛けていると、【曙の日差し】のギルドマスターであるミナモトが現れる。
「やってくれたね、ツヌグイさん!相変わらず綺麗と言いたいが、顔がないぞ!本当にツヌグイさんか?」
「お!昨日ぶりですね。知り合いのシリウスさんを勝たせたいので死んでもらいます」
「その声は!ツヌグイさんだ!争いたくはないが、これも攻城戦の醍醐味!尋常に勝負」
ツヌグイと敵対だとしても、接点が持てる喜びで上機嫌で、【真紅のバスターソード】を両手で構え、皮系の防具で1番高価なドラゴンの皮の鎧を装備した状態で、ツグヌイに突っ込んでくる。
即座に反応したツヌグイの【滅殺の長剣】で真っ二つにされる寸前に、ミナモトの【真紅のバスターソード】が、【滅殺の長剣】を持っている手にあたり、【滅殺の長剣】が吹き飛ばされる。
「甘いぜ、攻撃する時に隙ができる。
攻撃があたるまでに、俺の防御を捨てた最速の攻撃が当たれば最大の防御だぜ」
最大級のカッコをつけてミナモトが言う。
狂戦士のスキルに、【反撃の狼煙】があり、仰け反り効果と言うモーションが発動する仕様であった。
そのためツヌグイの強さにかかわらず剣を持っている手が、ノックバックしたのであった。
「いやはや、勉強になるな」
油断していたツヌグイは、純粋にミナモトを褒める。
にやけるミナモトであった。
アイテムボックスにまだ、あと6本入っている【滅殺の長剣】を取り出して、吹っ飛んで装備欄が空いた右手に装備する。
「ええ!何本持ってるの??」
【真紅のバスターソード】よりは、レア度は低いが、普通はそんなに数を持っていないはずなので驚く。
【天空の黄昏】の174階の推定レベル243の身長3mほどのデーモンナイトからドロップしたのだが、20匹現れて、シリウスと半分づつ倒して11本ゲットし、シリウスに3本渡して、残り8本を保持していた。
表示を見ると
1位【栄光の丘】1112
2位【王様の杯】1010
3位【かたつむり】3
4位【曙の日差し】1
残り時間1分
ミナモトのノックバックがやばい可能性があるので、先ほど使った混乱作戦を取ることにした。
取引用アイテムウインドをミナモトに出して、【滅殺の長剣】を4本武器をぶちこんで承認する。
そのまま、無視して【栄光の丘】のギルドメンバーの密度が高い所に走り込み斬りまくる。
「え?こ、これ、もらっていいの?ええ?」
作戦通りミナモト大混乱。
1分もてばOKだなと考えながらツヌグイが無双する。
ミナモトは、ドキドキしながら、ちゃっかり者なので、承認を押して手に入った武器を見ている
画面が突然、終了と言う文字にさえぎられる。
つづいて結果発表と表示された。
1位【王様の杯】916
2位【栄光の丘】910
3位【曙の日差し】1
きわどい戦いだった。
背後から、【王様の杯】プレイヤーの勝鬨が聞こえる。
そのあとに、個人結果発表がでる。
1位ツヌグイ 1241名
2位シリウス 354名
3位ライオット 323名
4位ミナモト 298名
5位ハルカ 222名
6位ルクア 167名
7位メルファザ 155名
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13位ケイト 106名
14位ライン 101名
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「超目立ってるんだけど!」
頭を抱えるツヌグイであった。
最終アナウンスが入って、勝者【王様の盃】と出て攻城戦イベントが終了した。
背後からツグヌイに接近する影が迫る。
シリウスがツグヌイの背後から思いっきり抱きつく。
「ツグヌイさんありがとう!今回、本当に危なかったの」
胸が背中に当たって感触が伝わる。
「く、苦しいです」
「テメー誰に抱きついてんだ!」
ミナモトが現れて羨ましそうに文句を言う。
「明日も、【天空の黄昏】攻略したいんですが、駄目ですか?」
ウルウルした目でシリウスに見つめられる。
「構いませんけど、何時に?」
「天空の黄昏に17:00に集合でお願いします」
「わかったよ。でわまたね」
逃げるようにツグヌイはログアウトした。
背後で盗み聞きしたミナモトがニヤける。
「あ!行っちゃった!」
「シリウス、ツグヌイさんの事、知ってるのか?」
「今日初めて会ったんだけど、なんか規格外過ぎてよくわからなかったけど凄い人!現実で会いたいなぁ」
「なんだ、シリウスも知らないのか...」
ミナモトとシリウスが話していると妹のルクアが登場する。
「ねーちゃん!ツグヌイさんと知り合いだったの?一騎当千って化物じゃない!なんで彼女は無名だったの?」
「いいえ、今日、知り合ったばかりよ」
「え?ねーちゃん【天空の黄昏】で攻略してたんじゃないの?」
「ツグヌイさんと一緒に攻略してたわよ」
「え?それおかしいよ。午前中にツグヌイさんと闘技場で一騎打ちしたんだよ」
「どういう事?」
ルクアに詳しく一騎打ちの際の話を聞いて、シリウスは混乱した。
「謎が多いプレイヤーですね。でも不正は行なっていないようよ。
アイテムマイスターでアイテムの使い方が天才的なんじゃないかしら?
実は、GMが来て確認もしたのよ」
ルクアとミナモトに、GMとの一件を話した。
ミナモトが勘違いしているが、みんなが納得できる回答を導き出す。
「正統派って事は、きっと現実のツグヌイさんが、恐ろしく運動神経が良いので、ステータス補正が凄い事とアイテムマイスター並みの知識量があるって事じゃないか?」
「「そう言う事ですね」」
シリウスとルクアが納得する。
長いあいだ、お付き合いありがとうございます。
実は、ここまでが前置きで、ここから本編に入っていきます。
本当は、もっと長く書きたいが.....
次回予告
山田一新に大変な事が起きます。




