人体実験
ファイルは、多重プロテクトがかかっていた。
ビックスでの担当者の名前は、伊藤 美奈子。
プロジェクト名は、シウテクトリ。
昨年の12月1日から開始されたプロジェクトであり、データは、ほとんど非公開になっていてプロテクトが入っている。
現在まで、使用された金額が1兆円を超えている。
「これは、怖いなぁ。この金額だと軍事関連かもしれない」
プロテクトの解除を実行するが、暗号化の桁数が物凄いようで推定時間が、全く表示できない。
「解読以前に解読にかかる時間すら表示出来ないよ」
【景】に、アクセスしたところ、ビックスのサーバー経由以外の入力は全て物理的に遮断されているのでセキュリティが甘くなっている。
ビックスサーバーのセキュリティーは、世界一と言えるがメンテナンス出来る一新には、無意味だった。
証拠が残らないように【景】のシステムリソースを使えるように裏IDを作成して、ほかのログインしてるユーザーや【景】のコンソールですら、わからないようなプログラムを構築する。
「これで、実際は私が使っていても表示やログは0%に見えるので、100%を超えないように利用すれば、全くバレないぞ!」
【景】を20%使っていて一新が10%使っても記録上では20%になるようにOS自体のプログラムをバレないように書き換えた。
準備が完了した一新は、【景】にファイルの暗号化解除処置を実行させる。
「【景】のリソースが99%未使用ってビックスの奴ら借りてる意味あるのか?10%を借りよう」
処理速度の10%を借りて処理を実行する。
2秒で回答が返ってくる。
「速すぎだな!?」
一新の中で【景】の集積回路の仕組みを知りたい好奇心が大きくなった。
ファイルに爆弾などが含まれていても大丈夫なように、秋葉原のジャンク屋さんで1万円で買ってきた、辛うじて動くノートパソコンにデータを移し物理的に全て外と遮断したスタンドアローンでファイルを開く。
記載されている内容は、目を覆いたくなる内容だった。
世界最速の処理速度を目指してモルモット脳を使用して処理速度を上げる実験が羅列されて、最後には人間の検体(死亡した脳)を利用する所まで書かれている。
最後に【景】を開発するにあたって、献体者 江藤 美鈴の名前が書かれている。
「【景】の正体はバイオコンピューター?」
一新は、多少納得する。
通常の集積回路では、一つのコアで処理が1つしか出来ない。マルチスレッドと言う擬似的に複数出来てもそれは、仮想である。
バイオチップのコアであれば、一つのコアで多重処理が理論上可能だ。
1個で1つの処理がいくつ集まっても足し算だが、バイオチップだと1個で複数のために乗倍になり、集まれば莫大な処理速度を生むだろう。
【景】に大変興味を抱いた一新は、情報操作してそのプロジェクトに参加する事にした。
予想通りノートパソコンの動きがおかしくなってきた。
ファイルに遅延型のウイルスが入っていた可能性もあるがファイルを開きながら携帯電話で内容を写真に納めたので、もう不要であった。
電源を切り、ノートパソコンをバラしてメモリーとHDDを抜きとる。
使用済みの不要HDDを入れておくゴミBOXに部屋を出て入れてくる。
マザーボードは、ディップスイッチで初期化する。
HDDは、今日中にプレス機で圧縮されて鉄屑に出されるはずである。
腹が減ってきたので時間を見ると夕方になっていた。
天気予報プログラムをデータ便で納品してビックスの出退社プロジェクト管理にプロジェクト終了を入れた後に、プロジェクト【シウテクトリ】に、明日8:00から配属と人事異動しておいた。
承認者の部分を本来空白で実行出来ないが、これだけは誰かに迷惑がかかる可能性があるので、バグだと思わせる為に、文字化けを入れておく。
承認日を、ビックスサーバーが前回プログラムのエラーでメンテナンス的に電源を落とす事があったのだが、その時刻に合わせておく。
ログも、その際にエラーで書き込まれた用に偽装した。
これで、調べられても意図しないバグで処理されるだろう。
最後に、江藤 美鈴を、ネットで検索すると物凄い有名人であった。
「ん!死んでるかと思ったら生きてるじゃないか!
高校2年生?」
今日の21:00から、江藤 美鈴の特集がテレビでやるらしい。
現役ネットアイドルであった。
もうすぐ見えないヒロイン登場