攻城戦
ロディニア城入口にシリウスとツヌグイが、現れる。
シリウスとPTを組んでいるので、同士討ち防止が適応されて、ツグヌイの頭の上に、【王様の杯】のマークがつく。
攻城戦中に、城の付近のキャラクターの頭には、ギルドのマークが浮かび、PT組んでいる場合は、PT内の一番多いギルドプレイーヤーが、適応される。
ギルドに属していない場合はランダムでマークがつく。
「ギルド入ってないのに、ギルドマークが出た!」
「攻城戦中のギルド無加入者は、攻城戦を楽しめるようにランダムでギルドマークがでるんですよ。
私とPTを組んでいたので、ツグヌイさんは、【王様の杯】ですね。
同じ、マーク同士は、ダメージが与えられないので範囲魔法も容赦なく使って大丈夫ですよ」
城の門の向こうでは、魔法が飛び交っていた。
「楽しそう!」
「ツグヌイさんは、一回でも倒されると場内に戻れないので、生存重視でお願いします。
21:00に生き残っていたギルドマークが多いギルドが城主になります。
ギルドマークの総数は、今見えている視界の左上にに表示されていますよ」
視界の左上に、ギルドが7個表示されていた。
1位【栄光の丘】7865
2位【王様の杯】6994
3位【かたつむり】2564
4位【曙の日差し】567
5位【疾風怒涛】135
6位【風の通り道】34
7位【ハルシメン】3
ちょっと見てたら、6個になった。リアルタイムのようである。
1位【栄光の丘】7922
2位【王様の杯】6561
3位【かたつむり】2427
4位【曙の日差し】561
5位【疾風怒涛】120
6位【風の通り道】15
結構な参加者の量で驚く、ここ以外の攻城戦も同時に行われているはずなので、【栄光の丘】は、数万人のギルドと言うことが分かった。
【王様の杯】のギルドマスターが、ネットアイドル化する理由も、ギルド人数を見て納得する。
「時間がない。でわ!戦場にて再開しましょう」
腰に装備していた2本の剣を抜くと二刀流で、真っ赤なマントを翻して、他のギルドの集団にシリウスが突っ込んでいった。
ツグヌイもゆっくり城の門をくぐる。
遠距離魔法が飛んでくるが、不正行為のステータスのおかげなのか、すべてがスローに見える。
「やっぱり、おかしい?ゲーム中で脳の処理が上がってるってことなのか?」
仮想空間のアヴァターの性能が良いと、本人の運動神経まで上がる結論になるが、本当か?
ログアウトした後に調べる必要性を感じる一新だった。
魔法を全て紙一重でよけて、斬りかかってくるプレイヤーを2mの【滅殺の長剣】で串刺しにしたり、真っ二つにしたりしながら、ゆっくり進んでいく。
「なんだ!あの首なし白衣!あいつヤバいぞ!」
「魔法があたらない!なんで避けれるの?」
白衣で首がない上に、両手に1本づつ2本のレア武器に相当する刃渡り2mの【滅殺の長剣】を軽々と振り回す、サンダル履きのキャラクターだったので、一見、どこかのホラーゲームに出てくる感じの外見であった。
あまりの、目立つ外見のために、集中的に狙われ始めた。
プレーヤーを倒しまくると、中学生から参加可能なゲームなので、顔面殴打の鼻血エフェクトと毒の属性のダメージを受けた時の吐血エフェクト(モザイク入り)しか、グロイエフェクトはない。
真っ二つにしても、体に光る線が入って対象プレイヤーが動けなくなったあとにHPが緩やかにゼロになって、消える感じである。
「だめだ、範囲魔法使え!あいつ、すごい動体視力だ!」
3人に同時に、斬りかかられて、紙一重で避けると足元に大きな魔法陣が出来た。
後方から魔法詠唱の叫び声が聞こえる。
「ロックバースト!」
ロックバーストは、直径20mの範囲魔法で、相手の足元の地面が爆発する土系の魔法である。
一瞬で20m範囲を離脱して、仕掛けてきた魔法使いを串刺しにした。
「ええ?なんで?」
理解できないまま魔法使いが消える。
「そこの首なし!!
【栄光の丘】の副ギルドマスタの閃光のライオットが戦いを挑む!
尋常に勝負」
侍姿のライオットが、長めの日本刀で斬りかかってきた。
ライオットは、リアルでは高校2年生で剣道部主将であり、男子の部の高校剣道全国大会1位という滝沢 竜也である。
ライオットは、剣士をレベル99まで上げて転生で戦士にした、レベル97の転生プレイヤーである。
装備は、【亡霊武者セット】の刀と小太刀と小手と靴と鎧とベルトと冑の7点セットでセットボーナスで武器耐久度が5倍、ステータスの攻撃力が50%上昇、防御力の10%低下、素早さの180%上昇が発動している。
外見は、戦国時代の武将のような外見である。
欠点は、武器耐久度を武器屋で修理する際の料金が5倍であることと、装備欄をアプセサリー以外ほとんどセットに取られているので、装備ブーストの柔軟性がない所である。
他のセットには、2つで効果が発動するものや、3つで発動するものもあり、組み合わせで多くの装備ブーストがある。
極めると、アイテムマイスターと言われるようになっていた。
感動すら覚えるほどの斬りあいが始まった。
ツヌグイの攻撃をライオットがいなして、隙あらばツヌグイの傍に近づいて、斬撃をするが紙一重でツヌグイがかわす。
「ありえない!
ゲームのステータスが高くてもリアルで鍛えてなければ、ここまで速く動けるわけがない!
首なし白衣、そんなプレイヤー知らないぞ!
顔を見せろ、卑怯者!」
ライオットが、倒せない悔しさに激昂する。
ライオットは、ゲーム中に、魔法攻撃や特殊アイテムで倒されるのは納得がいくが、純粋に剣の戦いで歯が立たない事に驚愕して、いままでに、味わったことがない感情を感じていた。
「まだ、この手数で生きてること自体、すごい事ですよ」
ツヌグイは、不正行為している自分が、手抜きしてるとはいえ倒されていないライオットに舌を巻く。
「女? ステータススキャン!ステータスビジョン!」
声を聴いて身長が高かったので、首なし白衣を男性だと思っていたライオットが、どの職業も、つかえる基本魔法を唱える。
ツヌグイは、魔法妨害の効果がある魔法をかけていないので、簡単に周囲にステータスが表示される。
「なんだとおおおお!!ステータスが私より低いだと!じゃぁリアルが物凄い強いって事か?しかも女性?あああぁぁ、ツヌグイだと!」
一気にありえない情報を見て混乱する、ライオットの腹部にツヌグイの【滅殺の長剣】が突き刺さる。
「そんな、ばかな.....」
ライオットは消えた。
「ライオットさんが、倒されたぞ!」
「ステータス、俺らと変わらないぞ?」
「ツヌグイって、この前、闘技場で話題になってたプレイヤーじゃないか?」
「それは、アスラって聞いたぞ」
「聖騎士なのに、なんであんな装備なんだ?」
「とにかく集団で行くぞ」
「仲間呼んでくる」
さらに多くの攻撃魔法が飛んできて、多くのプレイヤーに斬りかかられる。
全て躱して一刀両断して、ゆっくり城の中心へ向かうソヌグイであった。
「マルチアロー」
声が聞こえた方を見て驚く、数百の弓が飛んできている。
剣で弓を叩き落とすが、数が半端ではない。
弓を撃っているのは、一人のプレイヤーなのだが、秒間2-3本打っている。
その放たれた弓が空中で、1本→2本→4本→8本→16本.....と増加して襲ってくる。
さすがにツヌグイでも体に何本か刺さって、体に矢のエフェクトが刺さって残る。
弓スキルの連射と範囲を重複して使っているようだ。
欠点は、威力が低く、矢の消耗が激しい事。
「食らったね!それは遅延毒さ。HPに対して、全体の%時間で減るから解毒しないと5分でお陀仏だね。解毒した瞬間の硬直時間に最大級の矢を撃ちこませてもらうよ。選択しな。」
露出度が高い、見るからにアマゾネス風の大型の弓を持った女性が話しかけてきた。
会話中にも、容赦なくツググイへ他のプレイヤーから攻撃が襲ってきて対処しながら自分のステータスを見ると、状態が毒になっており、HPが少しづつ減っていく。
「こんな、方法があるんだな。奥が深いな、このままだと倒されるな。本気で行くか?」
「なに、初心者みたいな事いってるのさ。
ソヌグイ?聞いたことある名前だね、聖戦士さんだから解毒できるだろ、ほらほら選択しな」
大型弓を持った女性が怪訝な顔をする。
彼女の名前は、ハルカである。現実での名前は、水島 春香で、高校1年生だが、いまは不登校になっている。
【シウテクトリ】にドップリはまっており、池袋で知り合いにになった【曙の日差し】の面々と仲が良く、【曙の日差し】の副ギルドマスターである。
装備は、女性用の皮の鎧と皮のバンダナと女性用戦闘ブーツで【ワンダーウーマン】セットの素早さ200%を発動させていて、アクセサリーは、命中率アップの装備をしている。
元は、女戦士だったが、レベル72で転生して弓使い(アーチャー)に転生して限界突破のレベル119である。
装備は、【ハヤブサ改105】と言う巨大弓で、付属の効果は使用する矢の数が1/2と射出速度500%であるが、防御力が半減と言う効果も付属する。
ハルカが、弓使いの最大のスキルである【痛恨の一撃】を発動させて弓を構えて待っている。
【痛恨の一撃】は、自分のMPを全て消費するが、特殊技能レベルマックスで当たれば100%対象のライフを半分にしてスタン(行動不能30秒)効果が発動する。
レベル1では10%なので使えないが、レベルマックスでは、仲間がいる場合は最強の武器となる。
ハルカの後ろには、数人の【曙の日差し】メンバーが控えていた。
【栄光の丘】と【曙の日差し】が今回は共闘してるようで、【曙の日差し】と対峙中にもツヌグイに【栄光の丘】のメンバーが攻撃してくる。
「本当は、使いたくないのだがシリウスにも勝ってほしいのでね。即死乱舞!」
「黒魔法?なんだこの範囲は..」
ハルカが、驚く。
周囲のプレイヤーが、範囲魔法の範囲に驚いた瞬間に、ハルカ以外のプレイヤーが、すべて消え去る。
「うむ....チートし過ぎて楽しくない気がする....」
虚しさが残る戦いとなった。
MPマジックポイントも魔力が9999の為に、減ってもすぐに自然回復して、まったく減っていない。
即死魔法は、成功率が低いのだが、知力インテリジェンスが9999のツヌグイでは、ほぼ100%まで上昇して攻撃範囲も広い状態であった。
ハルカの首に装備しているネックレスが壊れて消える。
「虎の子の【身代わりのアンネージュ】が!!」
ハルカが叫んで、落ち込んでいた。
【身代わりのアンネージュ】は、即死攻撃に限り1度だけ身代わりになるアクセサリーアイテムである。
「どういう装備の組み合わせで、あんな魔法を使えたがわからないが許せない!」
思い入れがあるアイテムだったらしく激昂して、当たらないと思っているが【痛恨の一撃】を発動させて、ツヌグイに矢を発射した。
ツヌグイには、スローに見えるので、剣で叩き落とす。
そこに、罠があった。
剣で叩き落としても特殊技能はヒット判定するため、ツヌグイの毒で減ったHPがさらに半分になり、スタン(行動不能30秒)効果が発動する。
「え?怒りで撃っちゃったけど避けずに自爆した!笑える....あはははぁ」
ツヌグイの初心者のような行動に、ハルカの笑いのツボに入ったらしく腹を押さえて笑っている。
ツヌグイは青ざめる。30秒攻撃されても高い防御力でダメージ1で、きっと倒されないと思うが、いつまでの倒されないツヌグイを見ていたら、装備だけでは言い訳ががつかない、不正行為者だとわかってしまう可能性が出てきた。
ツヌグイが考え出した、回避法は、時間稼ぎだった。
「いま、壊れたアイテムの代用品を無償でさしあげますよ」
「え?」
弓を構えてまさに、射出しようとしているハルカの動きが止まる。
見える範囲は、まだ他のプレーヤーは来ていない。
急いで取引用アイテムウインドーをハルカに開いて、【天空の黄昏】のダンジョンで集めた、レアなアクセサリーを並べる。
「なに!このアイテム!凄い!しかも全部承認済みって全部くれるの??」
取引アイテムウインドーは、アイテムを置いたら両者が承認を押すと交換成立となる。ハルカのアイテムインド―には、何も置かれていないにもかかわらずツヌグイのアイテムウインドーは、既に承認済みとなっていた。
「ほ、ほんと??」
ハルカが承認を押すと、ツヌグイが並べたレアなアクセサリーがすべてハルカのアイテムボックスに入る。
アクセサリーの為に重量も重くないので、すべてゲットしたハルカだった。
「これって、伝説級の【星の滴】まであるじゃない!」
PKゾーンなのを忘れてアイテムに見入っているハルカを置いて、30秒の硬直が取れた瞬間、高速で城の中心へ走って離脱するソヌグイだった。
【星の滴】は、イアリングで女性限定装備である。今のところゲーム中に100個前後しか出ていないほどのレア度である。
人気の理由は、見た目の七色の滴のような形の美しさと、全スキル1レベルアップである。
通常レベル10でマックスの特殊技能だが、イアリングをしただけで、すべて1UPする上にレベル10の上限を超えてレベル11になる。
スキルアップ装備は少ないが、やろうと思えば一つのスキルだけであればマックス10ではなく27まで装備で上げることができる仕様になっていた。
女性キャラなら誰でも欲しがる、名アイテムと言える品だった。




