【景】の秘密
【ロディニア城】の入り口に到着した。
マップハックに、現在の現実の時計も付けているので時間がアイテム無しでも、表示が出るのでわかる。
「あと、1分か....」
闘技場で騒ぎを起こしたので、目立たないように入り口の隅で待っていた。
入り口には、数人のプレイヤーが立っているがどれが、美奈子かわからない。
リアルでの顔を知っているので顔を見て行くと、髪型がリアルでは肩まであるが、ゲーム中ではショートカットになっていて色が青になっている。
目の瞳は、そのままの青色になっている。
服装は、青いプレートアーマで右腰にショートソードの携帯している美奈子の顔のプレイヤーがいた。
一新は、近づき話しかける。
「美奈子さんですか?」
「ツ、ツヌグイさん?」
「そうです。やっとお会いできましたね」
「感激です。仮面とローブで全身覆っているんですね?いつもの低い声より、実際は声が高いんですね。女性みたいです、心に響く良い声ですね」
インターフォン越しの声の方が、偽物の声で、偽証が出来ないはずのVMGの【シウテクトリ】の方が、本当の声だと思われてしまった。
一新は、先ほど騒ぎを起こしたことを思い出して、場所を変える事にした。
外見も変える必要性を感じて、転移門を持っている生産系職業の開始の街のモクラの街に誘った。
「ここだと、知り合いが多いのでモクラの街へ移動しませんか?」
「良いですよ。ツヌグイさんの知り合いって誰かしら?【王様の盃】の人かしら?」
PTを組んで、一新が転移門を開いて一緒にモクラの街へ転移する。
モクラの街の入り口に着くと、煙突が付いた小さい建物が所狭しと並んで複雑な迷路のような路地を形成している。
髭装備をしてるドワーフのプレイヤーが、多かった。
PT用の通信で会話を始める。
「プロジェクトの秘密を聞けるんですか?」
「社外秘というより国の機密事項ですよ。記録に残さない、絶対に話さないのであれば教えれます」
「教えてください」
「世界一速い、コンピュータは何かご存知?」
「え?すみませんわかりません」
「ビックス社本社のビックスサーバーが最速よ」
「ええ??最近の世間に疎いので、それは初耳です」
「そうでしょうね、ビックスサーバーは、過去に完成されたシステムで初期は、世界一ではなかったのよ。
ところが、通信環境内に同じシステムのコンピュータがあれば無条件で、自分に取り込んで並列処理する事が最大の要因で、加速度的に世界一の処理速度になったよ」
「それは、ビックスサーバーのシステムが世界中で使われ始めたって事かな?」
「正確にいうと、世界中の業務用のシステムは、ほぼ全てかしら?」
「えええ!そんなに売れてたの!」
「えええ!知らなかったの?」
「財務は、鈴木に任せていたんで....」
「鈴木って副社長の?」
「あ!これ内緒でお願いします」
副社長を呼び捨てににしているので、ビックスの社長ってツヌグイさんなのかもしれないと思う美奈子に対して、鈴木の話をばらしてしまった事で青ざめる一新だった。
「まぁ、良いわ。そこで日本科学センターが創った【景】もサーバー室内のコンピュータだけでなく処理を外部に持っていく事を考えたんですよ。
そこでVMGと言う筐体を開発して人間の脳の処理の一部を借りる事ができないかと言う、プロジェクト【シウテクトリ】を、ビックスシステムを開発したビックス社に依頼して、共同開発する事になったのよ。
まとめ役でテクノVMG社を合同出資で立ち上げて、初期はゲームに見せかけて人間を集めて、その後に、脳の処理をゲーム中に僅かに借りる【シウテクトリ】と言うゲームを発売して現在に至る感じね」
「成功したんですか?」
「それが、ありえない結果が出てしまって困ってる感じですね」
美奈子が悩んでいる顔をする。
【シウテクトリ】は、脳内の感情も読んでエフェクトや、表情で再現する。
「どういう事ですか?」
「【シウテクトリ】のゲームサーバーは、ビックスサーバー経由で【景】で行なっているのだけど、無事にゲーム中の人間の脳の処理の一部を【景】が並列処理で使用可能になって処理速度は、世界一どころか数百倍から数千倍まで上昇してビックスサーバーよりも速くなったのですが、ビックスサーバー経由ではなく、切り離して【景】単体で動かした場合は、全く人間の脳の処理の一部を使用できないのよ」
「あら!原因は、わかったんですか?」
「あ、な、たが原因よ。ビックスシステム開発者さん」
「え?」
「ツヌグイさんが創ったビックスシステムは、世界の最大の謎に数えられる程の謎よ。未だに誰もブラックボックス化しているシステムソースの仕組みも中身もわかっていない」
「何故私が創ったと思うのですか?」
「天気予報プログラムを見ました。プログラムのソースには製作者の性格の特徴が残ります。ビックスシステムのプログラムと天気予報プログラムの特徴が一致してましたよ」
「も、盲点でしたね。原因は、ブラックボックスだとしても、【景】を使用したプロジェクトの目的は果たされたのでは?」
「そう、ビックスサーバーを使用していれば世界最速の処理が可能にはなったのだけれど、そこで副産物が発生したの。その調査と報告でこのプロジェクトは完了よ」
「副産物?」
「実は、ここからが特級の極秘事項であって、今のところ詳細を知っているのは、ビックス社の副社長と私、テクノVMGの社長の亀井直明と、日本科学センター所長の三上霞だけなのですが、ツヌグイさんにも話します」
「凄い気になりますね」
「簡単に言うと【シウテクトリ】参加者は、病気が治ります」
「え?」
意外な副産物に驚く一新であった。




