邂逅
美奈子と風間は、【深き沼の叡智】のダンジョンの最下層を目指していた。
【深き沼の叡智】のダンジョンは、モンスターを倒した後に再度出現するのは、およそ70分である。
初期は多少のモンスターにであったが、だんだとモンスターに会わないので、モンスターを倒してる集団に近づいていると考えていた。
「レアアイテムが一杯落ちてるのに、所有権の時間経過が放棄されてないからアイテムが拾えなくなっちゃったよ。47階まで、一気におります?」
「そうしますか?」
二人は、41階のダンジョン用の移動転移門から47階へ一気に飛ぶ。
「うあ!ここもアイテム落ちまくってる。何が起きてんだろう?」
風間も始めて体験する現象にびっくりしている。
「とにかく最下層目指しましょう」
49階に着くと、アイテムがあまり落ちていない。
「なんだろう?この階層だけアイテム回収したのかな?」
「本当に不思議ね」
50階に着くとミナモトが、アイテムを吟味しながら回収していた。
「あれ?曙のギルドマスター?」
「アイテム回収してる!ドロップ魔の犯人?」
美奈子が驚き、風間が推理する。
「お!王様の盃の副ギルドマスターが2人で何の用だ?」
【真紅のバスターソード】を構えて威嚇する。
「そ、それ超級のアイテムじゃないか!」
ラインが感動する。
【真紅のバスターソード】は、今のところゲーム内に2本しかなく、3本目となる。
超級の理由は、武器なのだが、炎系の攻撃をほぼ無効化するほど、対炎防御力が上昇する。
推定レベル300はある、炎猛獣などをソロで狩るのは、不可能だと思われていたが、【真紅のバスターソード】を装備していれば可能になる。
その為、大変貴重なアイテムであった。
保原とケイトとラインは、顔見知りであった。
現在、【王様の盃】の保持しているロディニア城を【曙の日差し】と、いくつかのギルドが狙っており、既に月に一回行われる攻城戦闘で、3人共に、かなりの数のPK合戦をやっていた。
「ツヌグイさんに、もらったんだよ」
何故か自慢げに話すミナモトだった。
本人的には、アイドルの域までツヌグイの存在が昇華されていて、接点があっただけで、自慢したくなる感じになっていた。
「え?ツヌグイ様!?」
美奈子が超反応する。
「知ってる人なの?」
風間が、驚く。
「山田さんのハンドルネームが、ツヌグイよ」
「え?まさか同一人物かな?」
二人の会話を聞いた瞬間にミナモトが叫ぶ。
「なんだと!ツヌグイさんのリアル知ってるのか!教えてくれ!」
今度はミナモトが超反応する。
「ゲームでのリアル情報のやり取りは禁止よ。本人から聞きなさい」
「そ、そこをなんとか!」
「まだ、同一人物と決まった訳じゃないですよ。なんかわかったら教えてあげるわよ」
「ありがとう!」
いつものミナモトなら、すぐにPKして来るのだが、今回は、物凄い温和なので、いつもと違う反応に、戸惑うケイトとラインであった。
「結局、何がどうなってこうなったの?」
「俺もよくわからないんだよ。50階まで降りてきたらツヌグイさんが、ダンジョンマスターになっていたんだ」
「なんで、そのアイテムが拾えるの?PT組んでたの?」
「会ったらすぐに、アイテムくれんたんだよ。アイテムの受け渡しでPT組んだんだよ」
一目惚れしてボーッとしてて、詳しく聞いてないとは言えないので適当に誤魔化すミナモトであった。
「超級アイテム渡すって、どんだけのプレイヤーなんだ?」
ラインの頭の中は大混乱。
「どんな姿だったの?」
「......黒、黒魔術の初期装備で全身が隠れるタイプのローブ着てたからよく分からなかったかな?ローブを被っていて、か、顔も見えなかったよ」
下着姿の美女とは言えないので、また誤魔化した。
「ケイトもうすぐ、攻城戦の作戦会議の時間だよ」
「また、攻城戦でねミナモト!」
「またな!情報よろしくな」
一旦別れて、それぞれ移動していく。
ラインがスキルで、ロディニア城への転移門を開いてケイトとラインが移動する。
二人を見送ってミナモトは、ため息と共に呟く
「神殿で待たせてるギルドメンバーどうしよう」




