ダンジョンマスター
ミナモトが、【深き沼の叡智】に到着すると仲間の装備品が落ちていた。
「まだ回収してかったのかよ」
PKでのドロップアイテムは、PKした本人かPKされた人およびPKされた人のパーティーや所属ギルドの人にしか見えない。モンスターからのドロップアイテムと同じで、3時間程で消えてしまう。
ギルドチャットで報告する。
「まだ、装備品落ちてるから消える前に回収しとくぞ」
「よろしくおねがします」
「PK用装備だから消えても平気っす」
「まじかよ!俺らだけでいいって、言ってんのに!」
「雑魚装備だったからなぁ、いま本気装備中です」
「転移門なかったから助かった」
「マスターサンキュー」
「ええ!先行っちゃうですか!」
物凄い感謝と不満のチャットが流れてくる。
それより、一直線にドロップしてる仲間の装備が気になるミナモトだった。
「どう言うPKされたんだ?綺麗に一直線で倒されてるってわけがわからん?」
ダンジョン入り口で何階行くか決めるため、ダンジョンマスターの特権ウインドを表示する。
ツヌグイの位置を確認したら49階であった。
「な!なんだと!本当にソロなのか?lv99とかでも進行速度がおかしい。限界突破のレベル100以上か、多重転生プレイヤーなのか?」
急いで特権のモンスター配置換えを開始する。
49階から50階に降りる50階の入り口に、30階から50階に出るモンスターを全て設置する。
50階のフロアボスまで、入り口に設置する。
【深き沼の叡智】の50階のフロアボスは、推定レベル255であり、レベル90以上が20人以上で倒す事が可能になる程強かった。
地下ダンジョンならば最下層かタワーダンジョンならば最上層のフロアボスを倒した時の最後の攻撃者がダンジョンマスターの権利を得る仕組みになっている。
その為、一度ダンジョンマスターになると、次のダンジョンマスターになろうとする場合は、ギルド単位での奪取計画が必要であり、奪取中に現在のダンジョンマスターのPKなの嫌がらせ行為もあるので、なかなか代替りはしないのが常識であった。
しかも、ダンジョンマスターのパーティは、こちらから攻撃しなければ、モンスターに襲われない特権付きだ。
「MPKだが悪く思うなよ。ソロじゃ突破不可能だ。あとは、49階に行って50階を目指せば奴は倒されてるはずだ。生きてたら俺がトドメを刺せば良い」
再び、ギルドチャットを起動して作戦を伝える。
「今から、そいつぶっ潰すから、1番近いトスラの街の神殿に復活すると思うから、囲んで動けないようにしておけ」
「え!何言ってるんですか!」
「また会えるんすか!」
「やった!」
「花束のアイテム買いに行かなきゃ!」
「スクリーンショットのアイテム買ってくる」
「ダメっす。そんな手荒な事しちゃダメっす!」
「きゃあァァァ」
「急げ!神殿だ」
「え?なんだ、その反応は!」
ミナモトは、混乱する。
PKされていつも大激怒する面子が、なんか気持ち悪い反応をする。
【シウテクトリ】では、ゲーム中にHPが、ゼロになると1番近い神殿で復活する。
街中でPKは出来ないが、対象プレイヤーを大人数で囲んで動けなくする事が出来る。
例えログアウトしても、再度ログインすればその場所から出現するし、転移門を開きたくても神殿内では開く事が出来ない。
ギルドによる完璧な確保計画であった。
現在のミナモトの姿は、リアルと同じで茶髪の黒い瞳で、髪はロングにしている。
職業は、戦士を限界突破させてレベル102でレベルが上がらないのに嫌気がさして、転生したレベル96の狂戦士である。両手にショートソードを装備し防御無視の攻撃重視スタイルの為、皮系の防具で1番高価なドラゴンの皮の鎧を着ている。
とにかくどんな奴か見たい気持ちで、49階へミナモトは、移動する。
50階への入り口へ走って目指す。
ドロップアイテムが大量に落ちている。
「おかしい、ドロップアイテムが多すぎる。宝発見率上昇か幸運値が以上に高いのか?しかも、結構レアアイテムも落ちまくってる。何故拾わない?ツヌグイってなんなんだよ!!」
ミナモトのメッセージウインドに信じられないコメントが表示される。
『ダンジョンマスターが更新されました
【深き沼の叡智】のダンジョンマスターは、ツヌグイです』
「はァァァ?」
ダンジョンマスター用のウインドを開くが、開く事が出来なくなっていた。
あと少しで50階への入り口であったので、50階に降りる。
降りた場所は、アイテムで埋まったマップだった。
「なんじゃこりゃ!」
驚くことに超レアアイテムの50階フロアボスから稀にドロップする【真紅のバスターソード】が落ちていた。
「何故!拾わない!!!!」
ミナモトの絶叫が響き渡る。