PKK(プレイヤーキルキラー)
ダンジョンに到着すると、完全武装の10人の集団が、ダンジョンに入ろうとしている人に、1人づつ話し合ってからダンジョンに入って行く光景を見る。
10人が所属するギルドは、【曙の日差し】であり、かなりの大きさのギルドで、PK上等のギルドであった。
PKとは、ゲーム中にモンスターやNPC以外のユーザーが操作するキャラクターと戦うことである。
接近すると、戦士系職業だと思われるキャラクターが近づいて着た。
大剣を見て、褒めてくる。
「お!良い装備もってるね!その武器、俺も使いたかったけど、STR重視でDEXあんまり振ってなかったから無理だったよ。って黒魔術師?飾り装備かな?」
「入り口で皆さん何をしてるんですか?」
「各ダンジョンで、色んなギルドが仕切っていて、ここのダンジョンは、俺たちのギルドが確保していて入場料を取ってるんだよ」
「払わないと、いけないものなんですか?」
「ゲームの規約にはないけど、自然の流れでどのダンジョンもこんな感じかな?ここは100G払えば通れるよ」
「じゃあ払います」
戦士と受け渡しのウインドーを開いている時に、後ろからもう1人のエルフの中級黒魔術師っぽい奴がやってきた。
「早く金もらってダンジョン入れちゃえよ。戦士系は、トロイ奴が多いなぁ」
私と取引中の戦士に蹴りを入れる。
ギルドでの上下関係は、戦士より上なのだろう。
「なにこいつ!メチャクチャ高いローブ着てるじゃん。
お前、そのローブ置いてけよ!」
「駄目ですよ、もう100G貰いましたし、ギルドマスターにこちらからのPKは禁止されてますよ」
「こいつから仕掛けて来たって言えば大丈夫だって。ちょうど助けようって言う奴は誰もいないし、10対1だぜ、身包み剥いじゃっても10人で口を合わせとけば大丈夫だって」
やっぱり仮想空間だと、こういう羽目が外れた人も出てくるんだなぁとツヌグイが思っていると、いつのまにか10人に囲まれていた。
「正当防衛って知ってます?」
「知ってるけど、ここはゲームだぜ?戦ってなんぼだろ?」
【シウテクトリ】のゲームでは、街以外では何処でもPKが可能である。
PKの際のペナルティーは、高レベル者が低レベル者を攻撃した時にペナルティーが10増える。
低レベル者が高レベル者を攻撃した時はペナルティーが1増える。
闘技場と攻城戦の時は例外でペナルティーは、発生しない。
その他の例外は、ペナルティーがある人をPKしてもペナルティーが発生しない。
ペナルティーが100を超えると反省の牢獄に転移されて、全てのお金がなくなった状態の無装備状態で牢獄の反省のネズミを1000匹倒さないと戻れない仕組みだ。
終われば装備は戻ってくるが預けていないお金は没収となる。
ペナルティーは、1時間で1減っていくので、99だとしても99時間後には、ノンペナルティーになる。
「ステータススキャン!」
「ステータスビジョン!」
エルフの黒魔術師が叫ぶと、私の目の前にステータスが表示される。
スキャンで調べて、ビジョンで周囲に表示すると言う仕組みである。
「レベル1で、ステータスが普通だが、なんでそんな高価な装備してんだ?サブキャラ!?まさか転生?」
【シウテクトリ】では、最大レベルは99である。
レベル99以降は、限界突破と転生の二択を選べる。
限界突破は、レベルが無制限になるが成長が著しくおそくなる。
転生は、ステータスが半分になるが、半分になった状態でレベル1から転職した状態で始まるので魔法剣士などを育てる時に有効だ。
通常は、限界突破して自分が限界を感じるまでレベル上げたら転生する流れでマルチキャラやユニークなキャラを作ってみんな楽しんでいる。
「ステータスディスガイスで偽装してる可能性が高い、気おつけろ」
リーダーっぽい神官らしきキャラが注意を促す。
ツヌグイの場合は、魔法じゃなくてデータ自体改竄してある上に、表示上は普通に見えるようになっているのでもっと極悪だった。
「ちょっと待てぇぇ、性別見ろ!」
「なんだと!」
「姫さまではないか?」
「ブスだよきっと、やっちまおうぜ!」
10人が騒ぎ出した。
ツヌグイが、気にしていなかったがステータスの種族の横を見ると英語でFと書かれていた。
まさか、FemaleのFなのか?
ツヌグイが、今まで被っていたフードを外し、白い仮面を外す。
10人は、戦慄した。
そこには、生まれて初めて見た程の絶世の美女がいたのだった。
白髪で赤い瞳であり、ロングの髪がたなびいてキラキラ光る。
髪型や目の色などは、街の中の美容室にいくと変更できる。
「め、女神様だ!」
「電話番号教えてください」
「うちのギルドはいりませんか?」
「今まで、すみませんでした!」
ツヌグイは、内心爆死していた。
【シウテクトリ】は、ログイン時に全身スキャンして本人とほぼ同じアヴァターで参加する。
スキャンの時に性別がわかるので、一新は、入力欄がなかったし選択出来なかったが、ツヌグイを作る際にはスキャンデータを消してから、入力情報のみで作成したため、美形で痩せ型でステータスが高いなどの情報から女性になってしまったか、未入力であったので1/2の確率で女性にされてしまったようだ。
ヤバイ!ネカマ(ネットで女性のふりをした男性)になってしまった!と考えて一新は、動きが止まってしまった。
しかも、このゲームは、アヴァターとリアルがほぼそっくりであるので、10人は、リアルのツヌグイを想像して興奮中だ。
こ、殺してしまおう!
一新が辿り着いた結論だった。
10人だから、一撃で殺せばペナルティーも10ポイントで10時間で回復だ。
「気にしないでください。連絡先教えてあげるので一列に並んでください」
一新が言うと、デレデレで1列に並び始めた。
「なんて、良い声なんだ。人間の声じゃないみたい」
「天使のような声だ」
周波数変換の声だよと思いながら、一列に並んだ瞬間、先頭から一気に10人を横から走りながら10人斬りする。
物凄い速度だった為に、誰もなにが起きたかわからないで死亡した。
ステータスチートのレベル1の攻撃であったが、全員一瞬で装備を置いて消える。
装備だけが虚し地面に落ちていた。
「あれ?ペナルティーが増えない?」
PKでのペナルティー条件を思い出した。
特記条件にペナルティーポイントがあるキャラクターを倒してもペナルティーは、発生しないのを思い出す。
「殺されて当然の奴らだったという事か」
何人か目撃者がいたが、なにが起きたかわからない感じで呆然としている。
コソコソ移動してダンジョンに入るツヌグイであった。




