未来予測
科学的な事を空想だけでなく
本当の事を混ぜて、進めていきたいと思います。
全ての道路に監視モニターが付いて、個人がナンバーで登録されていて、今より少し科学技術が高度になった近未来。
ディスプレイに流れる、今日の情報と昨日予測した天気予報の情報を比較して男が叫ぶ。
「99.0562%の確率で的中するようになったぞ!」
6畳ほどの部屋に24インチディスプレイと自作のパソコンと奮発して買ったワイヤレスキーボードとマウスを使って、1人の男がプログラムを作っている。
仕事で使うものでも、男は社内で嫌われているので経費申請も通らず、殆どの機材が実費である。
部屋にあるものは、その他にはパソコンディスクと椅子だけで、部屋は生活感がなく、データーセンター内にある個室スペースの一室であった。
彼は、山田 一新と言う
外見が、155cmで太っており眼鏡をかけている。
髪型は73分けだったが、最近は、少しだけ気にして真ん中で分けている。
ファションセンスもあまりなく、くたびれた背広が普段着であり、私服も持っていない。
寝る際は、高校から使っている所々に穴が空いた寝巻きと、20年以上前の学校で支給されたジャージを使っていた。
今日で39歳になろうとしている。
彼女いない歴は39年であった。
両親は、既に他界しており、兄弟もいない。
都心から少し外れた月39000円の風呂なしアパートに住むサラリーマンであった。
しかし、彼には一つだけ才能があった。
電子工学や情報関連のエキスパートである。
大変優秀で、今や日本で1番大きな総合商社であるビックスの情報管理を行う部門を構築し会社に莫大な利益をもたらしたが、コミニュケーション能力があまりない為に、要領が良い同期や上司に良いように使われて、開発したシステムが安定したのを機に、優秀であるが故に、疎まれて左遷されてしまった。
今は、ビックスがスポーンサーになっている天気予報プログラム作成のプロジェクトを、東京のお台場にある、隠された日本最大のデータセンター内の一室で、部下ももらえずにたった1人で月給18万円でやっている。
一時期は手取りが30万近い時があったが、全てカードゲームや趣味のやらないゲーム購入などで散々しており、貯金もほぼ皆無に等しい。
「このプログラム完成したら、リストラの予感がするなぁ」
画面を流れる明日の天気予報を見ながら思いを馳せる。
社内のあだ名は、【ゴキブリ君】であった。
他の部署の人が『何で解雇にならないんだ?生命力強え』と言ったことがきっかけであった。
同じプロジェクトチーム内では、技術力の高さを知っていたので差別もなく仕事には問題はなかったが、結局利用されて終わってしまい、すでに彼が凄いことを知っているのは、利用した同僚と上司のみになっているため、大型のプロジェクトから左遷された彼に対する他の社員の風当たりは相当なものだ。
食堂では、誰も近寄らない。挨拶しても無視されるなど当たり前であった。
ビックスは、自己申告制のフルフレックスシステムの出勤体系のため、既にデーターセンターと自宅の往復だけで会社に出社しなくなっていた。
こっそり会社をセキュリティシステムにアクセスして覗いたときに、自分の机が無くなっていたので出社しても意味はないだろう。
ビックスの社内インフラや業務システムをすべて作ったが、評価は他者が持っていき、平社員のままであった。
しかし、アクセスログが残らないビックスサーバーへのメンテナンス用である緊急ログインIDを持っているのも彼だけであった。
「会社には、悪いがリストラされると死んでしまう。
幽霊社員として雇用されるように契約を更新しておこう」
メンテナンス用のログインIDを利用して、ビックスのメインサーバーに保管されている、社員が入社時に契約する契約書の契約期間を5年に変更し、データセンター内の一室のレンタル期間を5年間にした。
「あとは、給料を目立たない程度の外注レベルに変更しようと思ったが、もともと目立たない程低いので、このままでよいかな。
承認者は、私を利用して今や副社長になってる親友だった鈴木にしておこう。ばれても問題ないからな」
同期であった鈴木は面倒見がよく、山田が駆け出しの時に、面倒を見てくれたのだが、ビックスが大きくなるにつれて山田を利用しながら遠ざけるようになり、ビックスが安定して大企業になった時に、知り合いだったことを周りにしゃべるなと言われてしまった。
「さて、今日から日本最速のスパコンが使える。
明日の天気予報を予測して明日結果と照合して99.8%を超えたら完成だな。
100回に1回外す程度の天気意予報が目標だったから500回に1回であれば過剰合格だろう」
日本が世界最速の処理速度の記録を作るために作成された【景】と言う名前のスパコンが、世界第二位になってしまい次世代のスパコンを作るための資金を作るために、国営企業【日本科学センター】が、本日の正午から【景】と言うスパコンを無期限レンタルとして膨大なレンタル料金を支払って民間のビックスが借り受けたのだった。
むろんログが残らぬメンテナンスIDを持っている一新は、ビックス経由でログインすれば、使いたい放題である。
一新が、明日の天気予報をするために、現在の気象データーやその他の関与されると思われる地球環境データーを入れて予測を出す。
「すごいな!いままでビックス全体のシステムリソースの50%を使っても1時間かかったのに、リソース1%未満で0.1秒以内に回答が来たよ!」
余りの処理速度に驚く一新であったが、ハード面も詳しい一新は疑問を感じる。
「ん?速すぎる...今の科学技術で、この速度はおかしくないか?」
情報処理での好奇心は、歯止めがきかない一新は、自分が作成しているプログラムで一番処理がかかると考えている、趣味で研究している自分の未来予測プログラムを起動した。
自分のデータと世界中のあらゆる入力可能な情報を入れて動かすプログラムで、現在の科学技術では動かすことができても1日分を予測するのに100年かかると予想できている意味がないプログラムだ。
準備に30分ほどかかったが、最後の実行キーを押すところまで準備が終わる。
「無限ループとかに入ってスパコンがフリーズしたら、やばいなぁ。
期間は1日分にしよう。まぁ、ばれないから良いか?」
結構迷ったようだが、一新は実行ボタンを押す。
10秒で結果が送信されてくる。
「はや!!なんだこの速度?
私が知る知識では、この速度は無理だ。
【景】のスパコンが、これで世界2位って?」
一新は唖然とする。
それとともに、【景】に興味がわいてきた。
急いで、スパコンを使った形跡をすべて消し去り証拠隠滅をはかった。
そして、明日の自分の未来を見つめて叫ぶこととなる。
「ほんとうかよ!!!」
表示された結果は、1分単位の今から明日の自分のスケジュールであったが、文頭の出だしから驚かされる。
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11日15:12
「はや!!なんだこの速度?
私が知る知識では、この速度は無理だ。
景のスパコンが、これで世界2位って?」
独り言を始める。
11日15:18
スパコンを使った形跡をすべて消し去り証拠隠滅を開始する。
11日15:57
「ほんとうかよ!!!」
独り言を始める。
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12日15:01
網膜認証を使ってセンター内へ入る。
12日15:08
サーバー室に入る。
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