会談、その後
会談が終わった後俺は土の聖霊皇に呼ばれ2人で話をしていた。
「水のよ、此度の件は聞いている。災難であったな、しかし大陸沿岸を丸ごと水没させるとは些かやり過ぎてはなかったか?我はあの後海水の染みた土地を元の状態に戻すのに中々手こずったぞ」
「それに関してはやり過ぎたことを認めよう。すまなかった、しかし人間共へ分からせるにはこれくらいやっておかねばならなかったのだ。放っておけばまたいずれ誰かの眷属が無理に召喚されるだろう。そんな事は起きてほしくはないからな」
「それは我も同じ事。なれど次はあまり大きく土地を壊さないでくれよ。大地は我の力の一部。あまり大きく壊されると虚脱感が激しいのだ」
「それは悪かった。だがもうこんな事はないだろうから安心してくれ」
「そうか、あいわかった。ではな、気をつけて帰ってくれ。またいずれ会おう」
「ああ、ではまたな」
話が終わり、大空洞をでると待たせていた眷属達がわっと寄ってくる。
皆口々に話し合いはどうだったか?何か進展はあったのか?等興味津々に聞いてくる。するとウンディーネがスッと俺の前に出てきて
「貴方達、そんなに詰め寄っては聖霊皇様もお話に慣れないわ」
その的確且つ鋭い一言に眷属達は皆一歩下がると黙ってしまった。眷属が静かになるとウンディーネが「こほんっ」と咳払いをして俺に
「おかえりなさいませ、聖霊皇様。会談はいかがでしたか?私共にもどんな事があったのかお聞かせください」
と改まって言う。俺は「ああ、わかった」と返しあらためて眷属達に向かい会談で決まった事と内容を語った。
「此度の会談では聖霊皇の互いの認識と聖霊皇同士での大まかな掟を定めた。まず一つ。聖霊皇は互いの存在ありきで互いが存在できる。よって聖霊皇間での争いは禁止だ、無論眷属もそれに倣うように。次に人間への不干渉だ。今回の俺らのような事を二度と繰り返さない為になるべく人間への干渉は避ける事とする。万一人間が何かすれば人間を滅ぼす事も視野のうちである。これは"母"の創り出した星を守る俺ら聖霊皇の役目でもある。よって愚かしい人間が出ないように俺は独断ではあるが一定の監視を設けようと考えている」
言い終わると眷属達は神妙な顔で頷くと俺と共にバミューダ海域の深海へともどるのだった。
戻ってから俺はすぐにウンディーネを呼びウンディーネ眷属の妖精達に人間を密かに監視する役目をもたせた。水を伝い、無理のない範囲で人間達がまた愚かしい行動を起こさないように時折見張っててもらう。
俺はその間己の魔力のさらなる収縮と体を人型にするため練習に入るとする。
俺の身体は度重なる成長のおかげで頭だけでも200m近いような龍になっていた。しかしこのままでは動くにあまりに不便な為身体の収縮を一段と強くする事にしたのだ。
体の中央に魔力を集めて集めて集めてそれを少しずつ満遍なく魔力をかけて小さく小さく抑える。すると全長40000mはあろうかという俺の身体が少しずつ小さくなっていく。小さく小さくなり最後には全長20mほどの龍になった。まぁ、このくらいのサイズなら不便も少ないだろう。
力が強くなった事により直属の眷属は勿論の事、末端の眷属もわずかながらだが力が増しているようだ。妖精達はいつもよりも元気に泳ぎまわり、歌を歌い思い思いに楽しんでいる。そんな光景は俺を心の底からリラックスさせてくれるものだった。
「ああ…この光景をいつまでも観ていたいな…」
「聖霊皇様ならば大丈夫ですよ、そして何より私達がついていますよ」
「そうですよ聖霊皇様、私達がいます。それでも不安なのですか?」
ふと漏れた言葉を聞いたのかウンディーネとマーメイド。いや、お前達が居てくれれば俺に不安などないさ。そう言おうとしたが思うように言葉にならない。ああ、俺は多分感動してるんだな。二度めの人生(?)だとしてもこうやって寄り添ってくれる相手がいたことは少なかった。
「どうされました?ま、まさかお気を悪くされましたか?」
「いや、そんな事はないさ。ただ俺は嬉しかっただけなんだ」
焦ったような様子で聞いてくるウンディーネに対して俺は言葉をかけた。すると2人は安心した様子で
「そうでしたか、よかったです。聖霊皇様に喜んでもらえるなら私も嬉しいです」
「私もです、聖霊皇様」
「そうか、ありがとうな。2人とも」
俺はこの眷属達と海を護りたいと心から思った。
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