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俺らはあの日、聖霊皇になった。  作者: スペアリブ
水の聖霊皇編 2
68/79

国王と賜り物

UA40000突破しました!!!

読んでくださった全ての皆様のおかげです!ありがとうございます!


今年も残りわずかとったにもかかわらず、未だに目的とするクライマックスがカケラも見えてこない勇者編ですが、バンバン描いてとっととクライマックスまで持っていくつもりなので、よろしくお願いします!!


それでは本編どうぞ!




さっきまでの執事そっくりの国王陛下に勇者達だけでなく、ジハッドやレントも驚きを隠せないようだった。


「あ、あれ?執事さん?」

「ふぇ?……あ、ホントだ」

「な!?まさか!?」


その驚く様子をイタズラが成功した子供のような茶目っ気たっぷりの笑みでニヤニヤと笑うデルシア国王だったが、ついに堪えられなくなったのか満面の笑みで笑い出す。


「あっはっはっはっは!済まなかったね、君達」


デルシア国王は笑いを堪えられない様子だが、頑張って我慢しながらゆっくりと話し始める。


「あれは私なりの一種の話のやり方でね。ああやって執事に化けて出る事でこれから会う相手がどんな人間か、何を思って来たのか、私に何を求めるのかを見定めるのさ」


デルシア国王はそう言うと、一息ついてから再び話を始める。


「このやり方は中々効率的でね、執事だからと言って侮蔑するような傲慢な貴族達やあからさまな下心の元主って言うのは、こう言った謁見の間では本性を上手く隠してしまうからね。この間の他国の王子なんか滑稽だったよ?孫に求婚に来たらしいが、私が国王だったと知るや否や『に、偽物だ!そうに決まっている!お、お前達!出あえ!出あえ!!』と喚き散らしていたからねぇ」


心底楽しそうに演技を交えながら話す国王の、獰猛な笑みに密かに戦慄する勇者一行だったが、そんな事は露知らぬかのように国王は嬉々として話を続ける。


「その点君達はとても良い!素晴らしいよ!あの自らの目標を話す時の澄んだ瞳はここ何年と見ていない純粋な人間のものだったよ。……悔しいことにここの所、下衆や外道の下心に晒されてきたからねぇ、国王なんて楽な職業じゃないよ」


何処か擦れた人間のような哀愁を漂わせる国王は、遠い目をしつつも勇者達はその瞳の中に確かに燃える光のようなものを感じた。


(多分、国王陛下は今この瞬間さえも俺たちを試しに来ている)


最初にそう悟ったのは、大地だった。


(おそらく、ここで素直に喜べば"純粋で幼稚"な人間に思われるだろう。それではダメだ、俺たちが目指す過程には、純粋さはあっても現実を知った人間になる必要がある……)


そんな大地の表情の微妙な変化を察知してか、国王は目を細めて彼を見ると「ニヤリ」と態とらしく口角を上げる。


「君達のリーダーは本当に素晴らしいね。少なくとも、そこらの駄貴族の嫡男共なんかよりはよっぽど優れているだろう……」


国王は満足げにそう言うと勇者一行をサッと見渡して、更に満足そうな笑みを深める。


「よろしい。さっきの時点でも十分に資格はあると見なしていたけど、期待以上だよ勇者諸君。(……アウグストゥス君が自慢したがるわけだね)」


勇者達には最後の言葉は聞き取れなかったようだが、それをしっかりと聞き取ったジハッドは笑いを堪えられないかの様にプルプル震えていた。


「君達に『勇者』を名乗る資格があると見做し、私から『試練の勇者』の称号を与えよう。これから『土の試練』に挑む君達にはピッタリの称号だろう?この国で『勇者』の称号は冒険者達からの畏敬の念を集める称号だ。その名を汚すことのないよう常に挑む心を忘れずにいて欲しい」


国王はそう言うと、指を一つ鳴らす。

すると後ろに控えていたのだろう近衛兵が厳重に封をされた箱を持ってくる。

その箱に彼が手を翳すと箱がぼんやりと光り、ひとりでに開き出す。


彼が取り出したのは4つの『懐中時計』のようなものだった。


「これはこの国で『勇者』を名乗るに足る者達にのみ与えられる『マギロギウム』と言う道具だ。所有者の名が刻まれ、その名を持つ者の魔力のみを感知し動作する。……まぁ、詳しい使い方は体で覚えてくれ」


そう言って渡された『マギロギウム』をとりあえず懐にしまう。


「さて、中々楽しかったよ。『試練の勇者』諸君。残念ながら私もこんな身の上なのでね。これ以上時間を割いていては後で部下からどんな叱りを受けるかわかったもんじゃないんだ。また君達に会える時を楽しみにしているよ」


国王はそう言うとマントを翻し颯爽と玉座を降り謁見の間を後にした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





謁見の間を後にした勇者一行は、その後国王のはからいで城下町の一等地にある高級宿へ宿泊することになっていた。


宿は高級というだけあって外装、内装共に城下町で見たような宿の比ではなく、少し気後れしてしまった勇者一行であったが。


「『試練の勇者』御一行様ですね?国王陛下より承っております。お部屋へご案内いたします。こちらへどうぞ」


入るなり丁寧に案内され……


「こちらのお部屋でございます。お飲み物はこちらの箱に、お食事などの御用の際はこちらの魔道具に魔力をお流しくださいませ」


びっくりするほどのVIP待遇に更に気後れしてしまいそうになるのだった。


その一方で……。


「まさか一部屋毎に風呂が備え付けとは……」

「ガッハッハッハ!!これは酒が美味いわ!」


レントは宿や部屋の造りをまじまじと眺めてはメモを取り、ジハッドは個室の風呂に入りながらルームサービスの酒を呑んでいるのだった。


その頃、気後れしまくっていただったが遂に興奮を抑えきれなくなった美沙が先頭で各々部屋に入った。


「すっご〜い!ふっかふかだよ!ほらほら!大兄!薫姉!さと姉!」


そう言いながらベットの上でバインバインと跳ねる美沙。


「わ、わかった!わかったからもう跳ぶな!頭打つぞ!」

「そうよ美沙!危ないわ!」


大地、薫、さとみの3人が止めようとするもののテンションの上がった人間というものは、大にして素直に言うことを聞くはずがない。


「へっへーん!大丈夫だy…あだっ!?」

「ああ、言わんこっちゃない……」

「うぅ〜……さと姉ぇ〜!」

「ほら、美沙ちゃん。頭を見せて」


案の定美沙は盛大に頭を天井に打ち付け、半ベソかいてさとみに抱きつく。


「美沙は放っておくとして、今はコレかな」


そう言って大地が懐から取り出したのは、さきほど国王から受け取った『マギロギウム』であった。

懐中時計にも似たそれを開くが、文字盤も何もなく中にあるのは綺麗に磨かれたガラスらしき板が層を織り成して「電子機器の画面」のようなものを形作っていた。


「どうやって使うんだろ?コレ……」

「うーん、この世界のことだから……魔力でも流すのかしら?」

「『マギロギウム』を使おうとしているのか?ならこの大親方ジハッドが使い方を教えてやろう」


大地と薫が話していると、その横からさっきまで風呂で呑んだくれていたはずのジハッドが顔を覗かせてきた。


「うわぁ!?おっさん!びっくりさせるなよな!」

「ガッハッハッハ!!このくらいでビビってちゃあいかんだろうニイちゃん!」


思わず声を荒げる大地に、ジハッドは笑いながら肩を叩く。


「それよりも、ジハッドさん。この道具の使い方を知ってるの?」

「おうよ、俺も『大親方』の名を背負った頃に時のガルア皇帝から賜ったのよ」


そう言ってジハッドが取り出したのは、年季が入って外装のやや煤けた大地達の物よりも一回りほど大きい『マギロギウム』だった。


「こいつは薫嬢ちゃんが言った通り、魔力流して使う道具だ。コイツに出来る事は3つ。時計として、羅針盤として、そして最後にタリスマンとしてだ」

「「タリスマン?」」


2人は聞きなれない『タリスマン』と言う言葉に疑問を抱いた。


「タリスマンっちゅうのは簡単に言えば、ちっさい魔杖だ。『魔法発動体』なんて面倒な言い方もするが、要はコイツを使えば魔杖の変わりもできるってわけだ。……まぁ、ちっさい分やれる事は限られるがな」

「へぇ〜、案外すごいんだなコレ」


大地は、己の手に握ったマギロギウムを天に翳すようにして見つめた。

マギロギウムは、光に照らされて銀色に輝く。

大地は、そのマギロギウムに意識を集中させるとゆっくりと魔力を流し始めた。


ぼうっ……


マギロギウムの画面にぼんやりとした光が灯った。

すると画面の奥から浮き上がってくるように時計の文字盤と針が現れる。


「ん?コレ……本当に出てきてる?」


そう、画面の奥から『文字盤と針』が文字通り『浮き上がってきた』のだ。


「触れる……マジかよ、凄すぎだろコレ!」


大地がこの事を他のみんなに伝えようと振り向くと、そこでは既にその事実に驚く薫、さとみ、美沙がいた。


「ガッハッハッハ!驚いたか?そうだろう?これがマギロギウムが選ばれた人間にしか与えられない理由の1つでもあるんだ」


その様子を少し離れて見ていたジハッドが自慢気に勇者達に言う。

ジハッドがひとしきり話し終えると、タイミングを見計らっていたのかレントがやってきた。


「さ、皆さん。明日も早いので今日はこの辺りにして各々休みましょう!」

「明日はこのデルシア城下で『土の試練』に必要なモンを買い貯めに行くぞ!忙しくなるから、このバカ弟子の言う通りに寝ておけよ!ニイちゃん達!」


そう言ってジハッドとレントはまた部屋へと戻っていった。


「わかった。おやすみおっさん!レントさん!」

「はーい、おやすみ!おじいちゃん達」

「おやすみなさい。レントさん、ジハッドさん」

「それじゃあみんなも、おやすみ!」


こうして、一行のデルシア王国初日は過ぎ去っていった。



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