表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺らはあの日、聖霊皇になった。  作者: スペアリブ
水の聖霊皇編 2
67/79

閑話 親バカ日誌

スランプ気味になってしまったので、突然の視点変更ですが前々からやってみたいと思ってた日記形式の1話です。


やっぱ聖霊皇書くと筆が乗りますねぇ〜。

人間をまともに描写できない自分って一体……


読みにくいかもですけど、なるべく読みやすく書いたつもりなので、どうぞ!






〜水の聖霊皇side〜





○月×日

今日はルサルカの生まれた記念の日だ。これを機に日記なんぞをつけてみようと思う。

水の中でも破れない特殊な加護を込めた紙にガラスペンみたいに細工した魔結晶で字を書いているが、なかなかどうして書き心地がいい。

ルサルカはまだウンディーネの胸の中で可愛い寝息を立てている。この子の為に馬鹿デカイ俺に何ができるだろう?

これが父親ならではの悩みって奴だろうか、俺も大人になったもんだ。




◯月ζ日

今日は俺にとって最高の日になっただろう!

なんせルサルカが俺のことを呼んでくれたのだからな!!

あの舌ったらずな感じで「ぱぁ〜ぱ!」と呼ばれた瞬間の感動といったら……

あまりの興奮に思わず世界中に30個近く台風を作ってしまったが、まぁ問題なかろう。

おっと、そろそろルサルカを寝かしつけなきゃいけない時間だ。




△月☆日

今日はルサルカを連れてウンディーネと3人で家の外に出てみることにした。まだまだ一人では泳ぐこともままならないルサルカだが、今日見ていた限りだと近いうちに泳ぎだすだろう。

我が娘ながら才能に溢れた子だ。ウンディーネ譲りのその蒼い髪をなびかせ、俺譲りのヒレで一生懸命に泳ごうと健闘する姿は見ていて決して飽きることがない。

眷属の妖精たちもルサルカに興味を示したらしく、仲良くしてくれているようだ。

普段はワーワーキャーキャーうるさい事も多い妖精たちだが、意外と面倒見がよく危険を察知すると素早く安全な場所までルサルカを移動してくれるので、とてもいいベビーシッターになってくれている。

ウンディーネも「妖精王」と言われるだけあって面倒見も良く安心なのだが、アイツにもアイツなりの役割がありそれを疎かには出来ないから俺としてもとても良かった事だと思う。

………こんな俺じゃあルサルカの面倒なんて見れないからな。




◻︎月δ日

ルサルカが自力で泳げるようになった。とても喜ばしい事だし俺も嬉しいが、チョロチョロと泳ぎ回るルサルカにぶつかったり誤ってルサルカを飲み込んでしまったりしないように細心の注意を払うのが大変だった。

普段はウンディーネとともに俺の頭の上に乗ってるんだが、ウンディーネがちょっとでも目を話すとすぐに何処かに行ってしまう。魔力察知で居場所がわかるからまだいいが、この間なんて俺の鼻の穴に隠れてたぞ……

何はともあれ元気に育ってくれて本当に良かった。




◻︎月*日

今日、ふと自分の年齢について考えた。俺たち聖霊皇四柱はこの星ができると同時に誕生した。(厳密には星の方が少し年上だが…)そして数えられないくらいの時を過ごした。一方ルサルカはまだ生後一年も経っていない。……親子としてこの年の差で大丈夫なんだろうか?

いや、聖霊皇や精霊達に寿命と老化の概念なんぞ存在しないのは分かっているが、どうもまだ人間だった頃の感性が残っているらしい。

自分の意外な一面の再発見となった。




σ月ψ日

ルサルカはすくすくと育っている。

成長は俺の思っていたよりもだいぶ早く、もう人間の子供くらいの体格になっている。

龍人のような姿の我が子だが、泳ぎと言葉を覚えてからの成長速度は本当に凄まじかった。

やはり人の形をとっているためか、器用且つ頭が良く、あらゆることに疑問を覚える貪欲な姿勢は見ていて心地よいものさえある。

ルサルカの「なぜなに?」には少し疲れるが、眷属たちの協力もあってルサルカのお願いには順調に答えられているようだ。




β月ε日

どうやら最近、急激に生命が増えているらしく、俺の力がだいぶ増えていることに気がついた。

体を元の大きさに戻せばおそらくこの惑星一周してしまうだろう。その影響もあってか体を小さく止めるのが難しくなってきている。ルサルカたちに被害を出さない為にも魔力制御を更に強化して何とか体を一桁kmくらいに収めねば……


俺のことはさておき、そろそろルサルカに魔力を教えてもいいような気がしている。ポセイドンやウンディーネから色々と知識を教わっているルサルカだが、魔力に関しては俺から教えるべきだろう。

ルサルカは俺たち聖霊皇やその直属の眷属には劣るとは言えど尋常ならざる大きさの魔力をその身に宿している。

使い方を誤って暴走なんかすれば大変なことになるだろう。そんな事態を招かないように、しっかりと教えなくてはな。




☆月$日

今日は俺の力の検証をした。やはり力を解放するのは心地よいものだ。普段は大きすぎるこの力の大半を逆に小さく止める為に使っているから常に力んでいるような……人でいうなら頑張って腹へこませてるような感じ……でちょっと怠い。


しかし、遂に『概念』にまで届いた聖霊皇たる俺らの力は凄まじいのだと再確認させられた。昔、厨二だった頃に思い描いた『ぼくのかんがえたさいきょうのまほう』が現実のものになったようなものだからな……

それと同時にルサルカの才能にも驚かされた。俺の真似をして〈時を凍らせた〉時はかなりヒヤッとしたもんだ。一刻も早く正しい魔力操作を教えなくてはな……




☆月Ω日

今日はルサルカに魔法を教え始める最初の日だ。

ゆっくり一つずつ教えていったつもりだったが、まるでスポンジに水を注ぐかのようにすぐに教えた事をこなしていくルサルカの才覚では、瞬く間に覚えていってしまうので予定よりも多くのことを教えることができた。

とても喜ばしい事なのだが、俺が魔力を覚えたばかりの頃よりも習得が早い気がして父親として少しばかり悔しい気持ちが……

娘に嫉妬など我ながら情けないとは思うが、事実ウンディーネがいなければ今頃世界は終わらぬ氷河期に包まれていた可能性を考えるとシャレにならんと思う。

調子に乗って氷像を作って遊んだり、座学のようなことをしたが、ルサルカは座学の途中で寝てしまった。

まぁ、なんだ、その…仕方ない事だ。まだ幼いルサルカだからな。話が聞いてもらえなくて少し凹んだとか……そんなこと、ない………




ω月α日

最近、急激にルサルカの頭が良くなっているような気がする。

まぁ、それもこれも眷属総出でルサルカの「なぜなに?」に答え続けた結果だろう。「学ぶ事、識る事」の楽しみを理解したルサルカは結構アクティブに自分で体験し、学んでいるようなので「知識」が「知恵」として形に残っているようだ。

良い傾向だ、おそらくはポセイドンあたりの入れ知恵だろう。あいつも日頃から「知識ある者は物知りであるが、知恵ある者は賢者である」と言っていたからな。

深海やら浅瀬やらサンゴ礁やらに出かけては様々な知恵を身につけて帰ってきて、俺たちに嬉しそうに披露してくれるルサルカを見ているだけで心が和む。


ただ、アクティブすぎて陸に興味を持ちかねないのが今の不安だ。いや、おそらくはもう少し持ち始めている可能性がある。

ルサルカの護衛のためにルサルカの眷属を探さなくてはな。




Σ月π日

今日はルサルカに眷属を紹介してあげた。

トリトンの所から紹介を受けたイルカの精霊のフィン、マーメイドの所から紹介されたミュー、そして俺から護衛として紹介したノフだ。

この中でまともに陸地で活動できるのはミューとノフくらいだろうが、ノフ1人がいれば万が一はないだろう。それこそノフを凌ぐとなれば他の聖霊皇の直眷属クラスが出てこないと話にならない。

ルサルカも彼らを気に入ってくれたようだし、彼ら自体もルサルカを気に入ってくれたようだから、これから先は俺が近くで守れなくても少しは安心できるだろう。




€月〆日

最近、ルサルカの「なぜなに?」が少しずつ減ってきた。ルサルカが聞きにきてくれないことに寂しさを覚えるが、眷属ができてからというもの元気に外に遊びに行っている事にとても安心と喜びを覚える。

これまでルサルカには俺やウンディーネ側近の妖精達や俺の直属の眷属達くらいしか友達や遊び相手がいなかったから、自分とだけ遊んでくれる友達というのが嬉しいんだろう。

そう言えばこの間、ルサルカがこの日記を書いている時に「パパ?なにしてるの?」と聞きにきた。ポセイドンや俺のような「腕と呼べるものの無い」種族は、魔力を触手のように使って道具を扱う。そのやり方をルサルカに教えようかとも思ったが、ウンディーネの「ルサルカにはまだ早い、覚えたら覚えたでサボり癖が付くといけないから教えないで」との一声がかかった。

ルサルカは当然ブーイングしまくってたが、母であるウンディーネに敵うはずもなかった……とだけ記しておこう。




φ月#日

今日は人生で最悪の日だ……

近頃、ルサルカが冷たいと思う事が多かったが、まさか「思春期」に入っているなんて夢にも思わなかった…!

俺の娘にはそんな事ありはしないと……

いや、こんな悪いことばかり考えていてはいけない…

いつか俺をまた「パパ!」と元気に呼んでくれるその日まで、俺は待ち続けるとしよう。







ーーーーーーーーーーーーーーーー







バタンッ……


暗い深海の底から、何か書物を閉じるような場違いな音が大きく響く。


「はぁ……。娘ってのは、難しいな」


そう独り言を言うのは、一柱の龍。

彼はその溢れる魔力で保持していたクリスタルの筆をそっと置くと、自らの巨体でとぐろを巻くように眠る。


この時、彼の妻でもいれば気がついたかもしれない。



ーー彼が、尻尾の先から黒くなっていたことにーー





感想お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ