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俺らはあの日、聖霊皇になった。  作者: スペアリブ
水の聖霊皇編 2
63/79

ポートへ

……ふぅ、何とか投稿できました。


ストックも切れた上に個人的にかなり忙しくなったので、ちょっと来週投稿できるかわかりません。

ですが、再来週あたりからは復帰できる予定ですので、お待ちください!



それでは本編どうぞ!






馬車の旅が始まって数時間後、賑やかな街を抜けていくと、どこまでも広がる青々とした麦畑が一面に広がっている。

時折吹いてくる心地よい風が麦を撫でて波打つ様はどこか懐かしく、心が和らぐ。


「きもちいいわねぇ〜」

「そうれすねぇ〜」


どこか気の抜けた薫とさとみの眠たそうな声を聞きながら、俺は馬車の窓からこの世界ののどかな風景を眺めていた。


思えば、アウグストゥスにこの世界に転移させられてから結構な時間が経った。

はじめの頃こそ『異世界だ!』『勇者だ!』と内心興奮してはいたものの、しばらくすればその興奮も冷めて望郷の念にかられたりもした。


しかし結局のところ帰る手段は未だ見つかっていないし、アウグストゥスが何を考えて俺たちを召喚したのかイマイチ分からない。もしかしたら帰す気なんか無いのかもしれない。

だが、そんな時に俺はこう思ったのだ……



『この世界には神が存在する。それは夢の中に出てきた女神様なのか、この世界の人々が信仰する神々なのかは分からないが、そんな存在ならばきっと俺たちを向うに帰せるはずだ』



(その時は、例え俺が帰れなかったとしても彼女たち3人だけでも故郷、『地球の日本』へ帰してあげなくちゃな……)


それが、唯一男でこの世界に来た俺の役目の一つだと思っている。


「みなさーん!そろそろ途中の村が見えてきました!そこで休憩をとりましょう!」


そんなことを考えていたら、どうやらもうそろそろ次の村に着くようだ。


「わかりました、レントさん。ほら、みんなそろそろ起きろ」


眠そうな彼女達を揺すり起こしながら俺はこの先に待ち受けるものに想いを馳せていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「今回はかなり上手く進んでますね」


レントさん曰く、馬車の旅1日目はどうやら順調に進んでいるらしい。それが証拠におっさんの持っていた地図で現在地を確認すると6割くらいまで来ていた。


今、俺たちは途中にある村の小さな宿屋で部屋を借りて休んでいた。時刻は夕暮れ前でこれ以上馬車で進めば狼やら熊やらの危険な動物や魔獣の出る恐れがあることから、やや早いがこの村で休むことになったのだ。


「この分なら明日の夕方までにはポートに着くだろう。だがポートは1日1回決まった時間にしか開けない。おそらく明日の開門までには間に合わんだろう」

「なんで1日1回だけなの?」


ジハッドのおっさんの言葉に美沙が質問した。言われてみれば確かにそうだ、何故1回だけなんだろう?


「ポートは遥か古代の遺跡と言われとる。遥か古代は今以上に魔力に満ち満ちた世界だったそうだ。故に遺跡から発見されるものは全て消費魔力が尋常ではない。ポートに至ってはその中でも群を抜く。1回の開門の為に各国が金を出し合って魔結晶1つを消費しとる」

「……なるほど、転移なんて便利な物には、やっぱりそれ相応の対価が必要なのね」

「そうじゃ、とりあえず今日はゆっくりと休んで明日に備えるんだな。明日は早いぞ」


おっさんはそう言って自分の部屋へと戻っていった。





翌朝、まだ日も登らないうちから俺たちは宿を出た。

今日は俺が助手席に乗ってレントさんが御者、おっさんは馬車の屋根の上に乗っている。ちなみに薫たちは乗って早々に二度寝した。


「ダイチさん、馬車の助手席の役割はご存知ですか?」


不意にレントさんがそう聞いてきた。


「助手席の役割?道案内とか、話し相手とかですか?」

「あははっ、確かにそれもあります。でももっと重要なことです」


もっと重要な事……なんだろうか?

居眠り防止?安全確認?ダメだ、イマイチ思い当たるものがない。


「その顔はわからないって顔ですね?」


レントさんはニヤッと笑うと、仕方ないなとでも言うような顔で話す。


「助手席には馬車の安全を守るガードマンの役割があります。ほら、そこにちょうど槍と杖が掛けてあるでしょう?」


レントさんが指差す先を見ると、俺の足元から棒が二本伸びていた。


「これですか?」

「そうです、この武器は盗賊やら魔獣やらが出てきたときの対策用で、御者が馬の誘導に専念してる中で御者を守るのが助手席の役割なんですよ」

「へぇ〜、この杖はどう使うんですか?」

「その杖は『魔法の矢』の刻印がされているので魔力を必要なだけ流せば杖の差している方に矢が飛んでいきます。遠距離用ですね。槍はちょっと短いんですけど、馬に近づいてきた敵を払うのにはちょうどいいんですよ」


とかなんとか話していると、少し先の茂みが揺れるのを見つけた。


「あ、あれってもしかして……」

「早速出番かもしれませんね。突然出てくる可能性があるので槍でお願いします!……師匠!出番が近いので待機をお願いします!」

「あいわかった!」


そうして茂みの前を通りかかろうとした時だった。


「ギシャァァァァ!!!」


茂みの中から飛び出してきたのは体高1mはあろう程のカマキリだった。


(なんだありゃあ!?めちゃくちゃキモい!?)


「魔獣です!!メガマンティスです!虫型は火に弱いので魔法か火で攻撃を!!」

「わわ!わかりました!」


俺は出てきた魔獣に動揺するも、レントさんの的確な指示のおかげで冷静さを取り戻し、魔法の詠唱に入る。

手のひらを敵に向け、意識を集中させて……


〈火の精よ、我が敵を焼き払え!〉


詠唱を終えると、俺の手のひらからメガマンティス目掛けて拳くらいの火の玉が飛んでいく。


「ギシャァア!!?」


火の玉はそのままメガマンティスに命中するとその身体に引火し、たちまちその全身を炎が覆う。


「師匠今です!!」

「わかっとるわい!!」


レントさんがそう叫ぶ前に、既にジハッドのおっさんは馬車から飛び降りて背中に背負った鉈を抜いていた。


ズンッッッ!!!


鈍い地鳴りのような音が響き、メガマンティスの身体は縦に真っ二つに割れていく。


「一丁上がりだ」


おっさんはそう言うと鉈を鞘に戻し、馬車に乗る。


「緊張しました……」

「そうですねぇ……事前に来そうだったとわかってましたが、それでも私もドキドキしましたよ」


ふと漏れた俺の本音を拾ったレントさんが俺にそう言ってくれた。


「さ、一難去った事ですし、気を取り直して先を急ぎますか!」

「そうですね!」


ポートのある宿場町まではあと少しだ。










〜??? side〜








「HQ!HQ!こちらコードネームフレイム!ターゲットは現在、転移門に向かっている模様っす!」

「こちらHQ、了解した。我は転移門付近の眷属にも見張りをさせる」

「HQ!転移門って人間にも使えたっすか!?」

「こちらHQ。おふざけで都道府県と同じ数だけ作った転移門はかなりの魔力と引き換えに任意の門に転移させるが、人間には使えない予定だった。しかし、ここ数十年で魔石や魔結晶が発掘され始めてからそれらを利用して転移し始めてるらしい」

「HQ!そんな事があったんすね!?」

「ああ、それと……何ッ!?」

「HQ!HQ!どうしたっすか!?」

「コードネームアクアの娘が反抗期らしい。まだ憂さ晴らしに出ないだけマシだが、万が一その娘が人間側と接触などしてみろ……」

「……悪い影響の有無にかかわらず、大陸のほとんどが海に沈むっすね。あるいは全ての大地が干上がるんじゃないっすか?」

「そんなふざけた事は、なんとしてもそれは阻止せねば……」


この時、この2人は後にその懸念が半分くらい現実になるなど考えることもできなかった……





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