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俺らはあの日、聖霊皇になった。  作者: スペアリブ
水の聖霊皇編 2
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閑話 眷属のすゝめ

また投稿予約し忘れたぁー!


なんか度々申し訳ないです。



これは今から五千年以上昔、水の聖霊皇の怒りが人族に落ちた日から数ヶ月後の話…


"ズィール島"の"始まりの世界樹"の下では、美しいエメラルドグリーンの鱗に包まれた大きくしなやかな体躯の龍である木の聖霊皇と、金色の鎧のような鱗に覆われた力強い四肢を持つ竜である土の聖霊皇が話し合いをしていた。


「よく来てくれましたね、土の」

「ああ、我は余り日の下には出ぬがな。して、木の。要件とはなんだ?」

「実はですね、私眷属を増やそうと思うのですが、どうも私の魔力だけだと私の思う眷属になってくださらないようなのです」

「なるほど、それで我に力を貸せ…ということか」

「はい、その通りです」

「して、何を生み出そうとしている?」

「はい、『鬼』です」

「『鬼』か、またお前に似合わぬような者を生み出そうと考えたものよ」

「そんなこと言わないでください!私もあなた達みたいに力強い眷属が欲しいんですよ!」

「おうお前、それを己が眷属の前で言うか。見よ、総じて項垂れておるぞ?」


土の聖霊皇が見る視線の先には主人から遠回しに「ひ弱」だと言われたと思ったのか木の聖霊皇眷属達が静かに泣いていた…


「え?ああ!ごめんごめん!別にあなた達が悪い訳じゃ無いのよ!…本当よ!だからお願い、元気を出して!あなた達にはあなた達なりの良いところがあるのよ!…」


そうして小一時間ほどで木の聖霊皇が眷属を宥め終えるといよいよ鬼づくりに移る。


「して、お前だけで作り上げるとどのようになるのだ?」

「はい、私だけではどうしてもエルフに突起のついたものしかできませんでした」


そうして木の聖霊皇が指差す先には額に小さな突起のあるエルフが数人いた。


「なるほどな、確かにこれでは鬼ですら無いな」

「確か貴方の眷属の末端にはゴブリンがいたと記憶しています。ゴブリンつくる要領の魔力と私のエルフをつくる要領の魔力を取り合わせてはどうか…というのが私の案なのです」

「ふむ、確かに我の眷属にはゴブリンがいる。連中はツノの生えた小人のような姿だが石や土との親和性が高くてな。鍛治や農耕なんぞをさせておるが、アレの姿は人間離れしすぎて居るぞ?」

「そこを調節するのも私たちの仕事じゃないですか?とりあえずやってみましょうよ」



こうして、木の聖霊皇と土の聖霊皇の挑戦が始まった…


最初の頃は魔力と魔力の合成がうまくいかず、エルフかゴブリンのどちらかに偏った生き物ばかりが出来てしまった。

不細工なエルフや妙に綺麗なゴブリン、体色のおかしなエルフや金髪サラサラのゴブリンなどなど…最早目も当てられない生き物も少なくなかった。その為に生まれては魔力に還元され、生まれては魔力に還元されを繰り返していた。


「ううむ、木の。もう少し弱めろ、また緑色の身体のエルフになってしまったではないか」

「貴方こそもう少し合わせて下さい…ああっ!また綺麗なゴブリンが…」


聖霊皇の使う魔法は、魔法というよりも個々の感覚で魔力を使えば大概イメージだけで勝手になんとかなる様なもので、全てが聖霊皇個人の裁量となる。


そのため互いのイメージに少しでも差が生じると唯でさえ無尽蔵の魔力の塊である聖霊皇達であるから、バランスが崩れ訳の分からん生き物ができてしまうのである。


そんな木の聖霊皇と土の聖霊皇が鬼づくりに挑戦し始めて一ヶ月ほど経った頃。ようやく二人の息が合い、だんだんと「鬼」の形が出来てきていた。


「よし!来ましたよ!魔力の大きさはこんなもんですね!」

「でかした木の!我の魔力を注ぐぞ!」


「「うおおおおおおぉぉぉぉ!!!」」


緑に輝く魔力の塊と黄金に輝く魔力の塊が殆ど誤差なく一点に収縮すると、やがて人型を形どって徐々に光を失う。


完全に光が消えた頃、そこには

「細めではあるものの鍛えられた筋肉のあるしなやかな身体」

「長めの濡鴉のような黒髪」

そして…


「額から生える立派な金色のツノ」


その姿は紛れもなく「鬼」そのものであった。

生み出されたばかりの「鬼」は、まだ幼い女の子の身体で、意識がないのか崩れるように倒れこむ。

それをそっと魔力の風で受け止めた木の聖霊皇を見て土の聖霊皇が声をかける。


「やったな…木の」

「はい…やりましたね、土の…」


二人は静かに喜びを分かち合った。



〜鬼side〜


あたたかくて…緑色で…金色で…やさしい…


私が、生まれて初めて感じたもの…やさしい、やさしい感じ…


「んんっ…ふぇ?」


気がつくと私は一面の緑と一面の黄金色に覆われていました。


(なんでかしら、自分が誰かも分からないのに、この『二人』が誰なのかだけはしっかりと分かる…)


私は自分さえも分からないのに、「二人」を必死に呼んだ。


「お父様!お母様!起きて下さいまし!お父様!お母様!」


『ううん…我は眠っておったか…』


「お父様!」


『私も…この体で初めて疲れを感じましたよ…』


「お母様!」


私を生み出してくれた私の『両親』を私は必死に呼びました。


『おお、起きたか木の』

『ええ、土の…それで、先ほどの声は何処から?』


「私はここです!お母様!」


お母様はどうやら私に気がついて下さらなかったようでした…


『あら、目が覚めていたのね?おはよう』

「おはようございます!お母様!」


お母様にご挨拶すると、お母様はなんだか少し戸惑ったお顔をなされたわ…何故かしら?


『木の、この子にはまだ名前をつけておらぬ。其方の子だ、其方がつけるべきだろう』

『ええ、しかし貴方の子でもありますよ?貴方も考えるのを手伝って下さいね?』

『わかっておるわ』


そのあと、お母様とお父様はしばらく話し合った後に私に「名」をつけてくださった。


《羽黒姫》


私の綺麗な黒髪にちなんでお母様が考えてくださったのだとか…

名に恥じないような者になれるようにこれから頑張らなくちゃ!



〜木の聖霊皇side〜


私たちが生み出した「鬼の子」はすぐに意識を取り戻してくれました。

私の事を「お母様」、土のの事を「お父様」と呼んで抱きついてくるこの子は本当に愛らしいです。

土のと相談の結果この子の艶やかな黒髪にちなんで、美しい子に育つよう願いを込めて『羽黒姫』としました。

私の出来心で生み出してしまったような子でしたがこれからは精一杯の愛情を込めて育てようと思います。


けれども…

私は聖霊皇となって性別こそ有りませんが前世は男…ですので「お母様」呼ばわりはなんとなく引っかかりますね…

ましてやあの土のが「お父様」で夫婦扱いと考えると…やめましょう、これ以上は私が傷つくだけですね…


〜side out〜



こうして、この世界にまた一つの種族が誕生した。彼女はこれから鬼族をまとめ上げ、『鬼國ヤマト』の長となり伝説級の鬼となるのだが、それはまた別の機会にお話ししよう。

感想お待ちしております。


なお、活動報告にお知らせがあります。



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