眷属
間がかなり空いてしまいましたが2話目です。
この世界ではどうやら"生命"それすなわち"魔力"といったものだった。
厳密には違うのだが"生命"の大きさ、格の高さがそのまま"魔力"の大きさに直結している。
そしてその"魔力"は水や土、木や火の中に多分に含まれており、妖精王や妖精はそれを糧に"生命"を生み出していくのだという。
ウンディーネからその話を聞いた俺はウンディーネに"聖霊皇である俺は生命を作れないのか、そもそも聖霊皇とは何なのか"を聞いた。
ウンディーネ曰く世界を構成する四大元素の内の一つである"水"を司るのが俺こと"水の聖霊皇"なんだそう。
"水の聖霊皇"は曰く
この世界に遍く全ての水を掌握している。
千変万化の水の力それ即ち水の聖霊皇の力。
水の聖霊皇は水を司るもの全ての皇。
ということらしい。
要は、水があるところなら何処でも行けるし水の出来ることは俺にもできる。
ってことだそう。
つまり万物を凍りつかせることもも雲になり空を漂う事もできる、形を自由自在に変えることもできる。
なにそのチートって思った俺は悪くないはず。
そして二つ目の俺に生命を作れないのか?は俺が作るとどうしても"魔力"の高い生命になるためどれだけ絞っても妖精が精一杯らしい。
とりあえずウンディーネ達には俺の力の一端を与え水中に生命を作り出すことを命じた。俺はその間俺に出来ることを調べようと思う。
実験の結果、空は飛べるし氷も作れる。ただし力加減要注意。
力を少しでも込めすぎると台風ができたり見渡す限りが凍る何てことになる。
ゆっくりとトレーニングするべしだな。
さらにわかったのは俺も人の形を取れるということだった。これは嬉しい。曲がりなりにも元は人間だしね。
ウンディーネ達はその間にも水中の生命を作り出してくれていた。
この世界での水中の最初の生命はバクテリアではなく"魚"だった進化論とは何だったのかと言わんばかりに唐突に生まれたそれは妖精達が後から生み出した小さな小さなエビやようやく出てきたバクテリアなんかを食べながら増えていく。
「こうしていけば次第に数を増やし自ずと自らの力で成長、進化を遂げるはずですよ」
ウンディーネは魚を見て微笑みながら言った。
それから三ヶ月程の時が経ち、海の中はだいぶ賑わってきた。色とりどりの珊瑚礁の中を様々な魚や生き物が自由に泳ぎまわり、それに合わせて妖精達もちらほらと見かける。
わんさかいた妖精達の一部は生命をたくさん作り出したことで魔力が上がり川や湖へ進出した。その他の妖精達も各々の気の向くままに世界中へと散らばった。
「短い間によくやったもんだ」そう思いつつ俺も最早住み慣れた家となった海の中をウンディーネと共に泳ぐ。
「あれを見てください」
ウンディーネが差す先には朧げに光を帯びたイルカがいた。
妖精が増え生き物が増えたことにより水中に"生命と魔力"が満ちてきて次第に生き物の中に比較的"強い魔力"を帯びるものが出てきた。"強い魔力"を帯びた生命は「魔物」と「精霊」にわかれた。
「魔物」はその生き物本来のままで強い魔力を帯びているもの。
「精霊」は強い魔力を帯びる過程で妖精に近くなった存在で知性がある。
ウンディーネが差したイルカは「精霊」のイルカである。イルカはこちらに気がつくと嬉しそうな声をあげながら近寄ってくる。
どうやらこのイルカ、ウンディーネが見つけただけありかなりの魔力を保有しているようだった。
「聖霊皇様、この子を正式に眷属にして差し上げてはいかがでしょうか?」
ウンディーネはどうやらこの子が気に入ったらしい。いいだろう、可愛いウンディーネの為に一肌脱ごうじゃないか!
〈水に住まう精霊よ我は聖霊皇、汝に名を与え汝を眷属として力を与えん。その力で我に仕えよ汝が名はトリトン!〉
魔力を込めて唱えるとイルカを覆う光は徐々に強くなり「精霊」のイルカは遂に「妖精」のイルカへと進化する。
「ありがとうございます聖霊皇様!このトリトン、あなた様とウンディーネ様の為に存分に働きましょう」
トリトンにはウンディーネと違い俺の力のうち、「氷結」を司る加護のみを与えた。(ウンディーネには俺の力の一端を満遍なく使えるように加護をあたえている)
「トリトン、あなたには私よりこの海の平静を保つという任を与えたいと思います。海に何か危険があれば魔力を通して知らせてくださいね」
「わかりましたウンディーネ様!」
トリトンは力強く返事をすると早速見廻りに行くといい出て行った。
うむ、眷属を増やすとは中々良いものだな。これまでまともに話ができたのがウンディーネしかいなかった事も俺にそう思わせる一端だと思う。そこでウンディーネに「更に眷属を増やしたい、見込みのありそうな精霊を探してきてくれ」と頼む。
ウンディーネはそれを快く受けてくれた。
しばらくしてウンディーネが連れてきたのは、「歌の好きな水の妖精」「泳ぐのが好きな水の妖精」「臆病なイカの精霊」「知識の深いクジラの精霊」たちだった。
俺はその4人と先ず話をする事にした。
1人目は「歌の好きな水の妖精」彼女の歌には聞くものを癒したり心を強くしたりする力を持つという。
彼女は言った、自分の歌声の届くだけ癒しを与えたいと。
2人目は「泳ぐのが好きな水の妖精」彼女は何よりも早く泳ぐことができるという。
彼女は言った、この大海原を余すところなく泳いでみたいと。
3人目は「臆病なイカの精霊」彼はこの海で最も強い力を持つが最も臆病だという。
彼は言った、深い深い海の底で仲間たちと静かに暮らしていたいと。
4人目は「知識の深いクジラの精霊」彼はこの海のあらゆることを知るという。
彼は言った、聖霊皇の元で未だ知らぬ未知を知りたいと。
俺はこの4人が大いに気に入ってしまった。そこで俺は4人に名と力の一端を与えた。
「歌の好きな水の妖精」には「セイレーン」の名と「水の癒しの力」を
「泳ぐのが好きな水の妖精」には「マーメイド」の名と「波を操る力」を
「臆病なイカの精霊」には「クラーケン」の名と「深海を統べる力」を
「知識の深いクジラの精霊」には「ポセイドン」の名と「海で起こるあらゆることを知る力」を
どれも俺の持つ大元の力からすればほんのわずかな一端でしかないが彼らからすれば巨大な力であった。
彼らは跪くと声を合わせて言った
「このご恩は忘れません、貴方様の為にこの海の為に存分に働かせて頂きます」
俺は「頼むぞ」と一言返した。
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