ダンジョンの反省
本日3話目の投稿です。
〜追記〜
PV10.000突破しました!皆様のおかげです。ありがとうございます。
ダンジョンに来た冒険者達が綺麗サッパリとダンジョンからはじかれてから間もなく、ほうけていた土の聖霊皇と眷属達は早速ダンジョンの反省を始めていた。
「えー、では今回の反省会を始めさせていただきますじゃ。進行は私ノームですじゃ、まず初めの問題"人間が弱い"ですじゃ」
「聖霊皇様、これに関しては私から」
「良い、ターロス申してみよ」
「はっ、では僭越ながら今回の人間達のダンジョン攻略で一番の問題となったこの人間達の弱さですが、どうやら我々の解釈に問題があったようです。いくらドワーフやエルフと協力してるといえど他の種族と比べ自然進化してきた人間族は魔力を操るのが苦手な傾向にございます。ゆえに体に魔力を循環させられないため殊更に弱い種族と言えるかと思われます」
「ふむ、なるほどな確かに人間族は自然進化した種族だ。しかしこの世界に生まれた限り魔力に関しては自然と発達するのではないか?」
「はい、聖霊皇様のご意見も御尤もですがそもそもにして魔物達の強さや他の下位眷属の強さがどうやら人間族にとっては脅威になるほどだと捉えられている様子です。これは他の聖霊皇様から頂きました情報ですが人間族は魔力を持たない動物達とあまり差の無い強さとのこと」
「そうか…それならばこの結果にもうなづけるな…」
「はい、そしてこの解決案ですが私からはむしろこのままを推奨致します。聖霊皇様の高貴なるお勤めであられる"生命を満たす"に反しているわけではございませんゆえに先ず人間族には己らの無力を知らしめ、謙虚になるべき事を考えさせるべきだと愚考いたします」
「成る程、ノーム。お前はどう考える?」
「はい、聖霊皇様。ワシはターロスの案に概ね賛成ですじゃ、そこに追案として"土の神殿"や各聖霊皇様の神殿から今回のダンジョンに関しまして啓示を下す事を提案しますじゃ」
「ふむ、続けてくれ」
「啓示として下す内容ですが、このダンジョンに"土の試練"と名付け最終階層に到達した者には聖霊皇様から直々に眷属とされる名誉を与えるのが良いかと愚考いたしますじゃ」
「何故その褒美が良いと考えた?」
「はい、この褒美であれば聖霊皇様が前にお話しになった"人間の欲"を利用し、人間が名誉ある存在にならんとする力を人間族の、ひいてはドワーフやエルフなどの種族達の活性化に利用しようと考えましたですじゃ」
「ふむ、良い意見だ。ターロス、異論はあるか?」
「いえ、ノーム殿の意見は良い者だと思います。今の人間族の力ではダンジョンの100層以降の到達はどう見積もっても千年以上はかかるでしょう。故にその案に賛成いたします」
「良し、決を下す。これよりのダンジョン運営はターロス、ノームの両者の複合案とする。異論は?…無いな。それでは眷属達よ、各々の仕事へと取り組め」
そうして会議が終わると土の聖霊皇の後ろからトテトテと歩いてくる音が聞こえる。
「パァ〜パァ〜!」
何故か頬がふくれにふくれたノーミードであった。
「ど、どうしたのだ?ノーミードよ」
その様子に心底焦る親バカ(聖霊皇)
「ノーミードもおはなししたかったぁ〜!なんでノーミードもよんでくれなかったのぉ〜!」
自分がやりたいと言い出し始まったダンジョン計画故に自分抜きで会議やらが行われるのがお気に召さなかったノーミードは土の聖霊皇にさんざんに文句を言う。
親バカ(聖霊皇)にとっては一撃一撃が致命傷である(聖霊皇に死の概念は無い)
「もぉパパなんかキライッ!」
この一言が止めとなりそこに残ったのは見上げんばかりの巨龍の燃え尽きた姿だったとか…
一方その頃、ノームとターロスはダンジョン計画の情報整理を行っていた。
「ターロス殿よ、損害はどうであった?」
「ノーム殿、あれしかやられなくて損害などでてるとお思いか?損害どころか宝箱一つ開けられぬまま人間族はやられていった。なんと情けない話だ」
「して、ノーム殿よ。今回の冒険者共の中に我らが眷属の末裔が居たのを覚えておいでかな?」
「ああ、ターロス殿。あれはおそらくワシの眷属の末裔ですじゃ。面がまえがそっくりでしたわい」
「あのドワーフ。おそらくはここが何なのか半分気づいたやもしれませぬ」
「なるほど、紋様ですな?」
「左様です、監視の際あのドワーフのみは壁や扉を見てしきりに首を傾げる様子がありました。おそらくは土の聖霊皇様の物だと気づいたと思われます」
「ターロス殿、大丈夫じゃろう。どちらにせよ遅かれ早かれ土の神殿に啓示を下し土の聖霊皇様の物だと知らしめる予定でしたのじゃから、問題は無いじゃろう」
2人はドワーフが気づいたことに気づいていた。そして話は今後の事へと移る。
「ノーム殿は今後このダンジョンを如何様にすべきとお考えですかな?」
「そうですのぉ…ワシはこのダンジョン通して四大聖霊皇眷属全ての"輪"ができることを願っておりますじゃ」
「……"輪"ですかな?」
「そうですじゃ。"輪"ですじゃ。ワシらは聖霊皇様方に作られた存在。ワシらがその聖霊皇様方にこの大恩をお返しするには《ワシらが聖霊皇様方のように"輪"となり強く結びつく》必要があると考えますじゃ」
「…なるほど、流石はノーム殿。原初の土の眷属よ」
「ほっほっほっ、懐かしい呼び方をしてくれるわい。お主らよりもたった千年早いばかりなのにのぉ。して、ターロス殿は如何様にお考えかな?」
「私はこのダンジョンから"秩序"と"正義"が生まれるように願っております。《自然の如き明確な秩序》と《強者が弱者を護る正義》この2つが必要と考えております。今の人間族やその他末裔眷属を見ても、《秩序と正義》があるのはごく僅か…
これが私にはどうにも憤りを覚えてなりませぬ。私はダンジョンという大いなる脅威を用いて《秩序と正義》のあるべきを人間族に知らしめたいと考えております」
「うむ、それもまた素晴らしい考えじゃと思うぞ、ターロス殿よ」
「私は…私は、恐ろしかったのです。この過激な考えが聖霊皇様に否定されるのが…」
「大丈夫。しっかりと考えを話せば聖霊皇様はターロス殿の話を否定などせんよ。聖霊皇様は其方が間違えておれば其方を諭し必ずや正き道へと戻してくださる。故に眷属共は聖霊皇様を信じついてゆくのみよ」
ノームはそう言うと、うなだれるターロスの肩を抱き、まるで息子を慰める父親のように肩を叩くとゆっくりその場を後にするのだった。
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