巫女の御披露目
アルマが火の巫女としての生活にようやく慣れてきたある日、火の聖霊皇が唐突にこんな事を言い出した。
「よし、アルマちゃんをお披露目しよう」
アルマは何のことやら分からずに頭の上に「?」を浮かべていると火の聖霊皇はさらに
「おし、そうと決まればアイツらんところに行くっすよ!」
そう言うとまだ頭の上に「?」を浮かべるアルマを掻っ攫うように火の聖霊皇は変身を解き、龍の姿でアルマを乗せて飛んでいくのだった。
「ん〜、最初は何処がいいっすかねぇ〜?」
「あ、あのぉ〜、聖霊皇様?これから私何処に連れて行かれるんでしょうか…?」
「何にも心配いらないっすよ、前に話したかも知れないっすけど自分と同類のこの世界の四大元素を司る"聖霊皇"達に会いに行くっす」
「え…?他の"聖霊皇"様方に?」
「そうっすよ〜、あんま気負わなくても大丈夫っす。アイツらはちょっとやそっとの粗相くらいじゃ何もしやしないっすよ」
「は、はい…がんばります…」
「気負わなくてもいいのに…」
そんなやり取りをしつつ火の聖霊皇が初めに訪れたのは世界最大の大陸"グレート大陸" 土の聖霊皇の住処である。土の聖霊皇達は地底に住んでいるが、よく地上で遊んでいるノーミードに連れて行ってくれるように頼めば地底へと続く大穴を開けてくれるのである。
「さて、ノーミードは何処にいるかなぁーっと」
「ノーミードさん…ですか?」
「いい子っすよー、土のの眷属なんすけどね、いつもならお花畑あたりで遊んでるはずなんすけど今日はいないっすね。たぶん森に行ったのかな?」
そう言って森側へと回るとちょうど森から出てきたのであろう褐色幼女のノーミードがご機嫌で出てくるのを見つける。
「お〜い!ノーミードちゃ〜ん!」
「あ、ひのせいれいおうさまだぁ〜!こんにちはぁ!」
「はいこんにちは、ノーミードちゃん。土のに会いに来たんで案内してくれないっすかね?」
「は〜い!パパにあいにきたんだね。あれ?そこのおねぇちゃんは?」
「え?わ、私?…私はアルマ。火の聖霊皇様の神殿で火の巫女としていさせてもらっているの」
「今日はこのアルマちゃんのお披露目に来たんすよ〜」
「へぇ〜、じゃあおねぇちゃんもけんぞくなんだぁ〜!ノーミードといっしょだね!」
「うん、いっしょよ!」
「さて、ノーミードちゃん。案内お願いするっすよ」
「はぁ〜い、それじゃあにめいさまごあんなぁーい!」
ノーミードがそう言うと地面に魔法陣が現れ3人を囲むと「カッ‼︎」と一瞬だけ光り、その直後には3人の姿は地上には無くなっていた。
3人が現れたのは聖霊皇達の会談が行われた地下の大空洞だった。大空洞の奥には既に土の聖霊皇がいるようで、大きな黒いシルエットが所々を金色に輝かせつつこちらを見ているようだった。
「よく来たな、火の。そしてお連れ殿よ、このような場所ゆえにあまりもてなしもできんがごゆるりとくつろがれよ」
「おっす土の、遊びに来たっすよ〜」
「して、今日の目的はさしづめお連れ殿の紹介かな?」
「お、さっすが土の〜!わかってる〜」
「お前は意味も無く遊びには来るが眷属は大概連れて来んからな」
「はは、ならば紹介といきますかね。アルマちゃん。自己紹介よろしく〜」
「は、はい!ぇ…え〜と…アルマともうしますぅ…あ、あの…」
「我は粗相など余り気にせん故にもっと落ち着いて話すが良い、アルマ殿よ」
「は、はい…コホン!…改めまして、アルマと申します。火の聖霊皇様の元で"火の巫女"をしています」
「そうであるか、では此方も。我は四大元素を司る土の聖霊皇である。アルマ殿よ先程も申したがごゆるりとくつろがれよ」
「はい!ありがとうございます!」
「それではノーミードよ、アルマ殿と暫し遊んでいるが良い」
「はーい!パパ!アルマちゃん、いこう!あっちにみせたいのがあるの〜」
そう言うとノーミードはアルマを連れて行った。2人の姿が見えなくなった頃土の聖霊皇は火の聖霊皇を射殺さんばかりに睨みつけると
「貴様…‼︎巫女なんぞ作りおって‼︎羨m…ゲフンゲフン、けしからんぞ‼︎」
「へっへ〜ん!いい子でしょう?特に土のは生前巫女属性萌えだったから特にヤバいっすよねぇ?」
「ちょっ、貴様っ!どこでそれを!」
「おしえないっすよ〜だ」
実に残念な聖霊皇たちなのであった。
一方そのころノーミードと遊びに行ったアルマは土の聖霊皇が作ったノーミードの為の部屋に来ていた。
「みてみて〜!これがノーミードのおへやだよ〜」
「うわぁ〜きれい〜」
「でしょー!」
ノーミードの部屋は土の聖霊皇が花の大好きなノーミードの為だけに聖霊皇としての力を惜しげもなく使って作られた広い花畑であった。
世界中のありとあらゆる花が咲き乱れ輝くその部屋は実はアルマやノーミードにさえも想像のつかないようなトンデモ技術が使われているがそれはまたの機会に。
ノーミードはアルマにお気に入りの花たちを紹介するために花畑を進んでいた。
「このこがおきにいりなの〜」
そう言ってノーミードが指さした花は菊の様な濃いピンク花であるが花が先の方にゆくに連れて色が薄れていくグラデーションのかかった花である。
「このこはねぇ〜"せんねんきく"(千年菊)っていって、いちねんにいっかいおなじひにかならずさくの。それがせんねんつづくの」
「千年菊…すごいわね…」
「このこはまだ400ねんめだけどむこうのこは800ねんめなの。まいとしいろがちがうんだよ〜」
「そうなんだ、とってもきれいだね」
ノーミードは自慢気にそれを話すとアルマが共感してくれたのが嬉しいのか満面の笑顔を見せてくれた。
アルマはそのノーミードの笑顔がこの花畑で一番綺麗な花であると思ったのだった。
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