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無能同心  作者: 葉弦
序章
1/51

ある男の独白

 男は引き戸の前で、大きく息をはいた。

 この戸を開いたら、きっと己は変われるだろう、と。

 それは、願望だ。

 切実なる願い。すぐには変われないのはわかっている。だけど、変わるのだと、決めたのだ。

 これが何度目かは、忘れた。

 一回、二回……と、一桁台の時は数えていた。でもそれが十を越え、二十手前になると、止めてしまった。数えるたびに、酷く自分が汚らわしく、ろくでもない人間だと思い知らされるから。

 実際、己はとんでもない愚か者だ。弱虫で嘘つきで。何も取り柄がない。……いや、あると言えば、ある。たったひとつだけ。でも生きていくには大して重要ではない取り柄。

 第一、それが己よりも上手い人間はたくさんいる。だから、もはやそれが取り柄とはいわない。


 ──私には、何も無い。


 能無しの己が、一人でちゃんと生きていくために、変わらなければ。

 胸の奥で、高鳴る鼓動と言い知れぬ不安を抱えつつ、男は引き戸に手をかけた。


 ──今度こそは。


 亡き父にも誓ったのだから。

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