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優しき殺人者  作者: けせらせら
19/41

4-1

   4


 携帯の電話の音で目が覚めた。

 すでに部屋のなかに太陽の日差しが射し込んでいる。

(朝……?)

 まだ、ぼんやりした頭で今の自分の状況を確認する。ほんのちょっと身体を休めるつもりが、いつの間にかそのまま眠り込んでしまったらしい。

 それを思い出すと同時に、昨夜の記憶も蘇ってきた。

(あれは夢じゃなかったんだ)

 たちまち気分が重くなってくる。

 携帯電話がバッグの中で鳴りつづけている。

 皺になったスカートを気にしながら、尚子はバッグのなかの携帯電話を取り出した。

――浅井か?

 財部の声だ。

「ええ……どうしたんです?」

 頭の芯がぼんやりしている。まだとても眠り足りない。だが、これからまた眠る事が出来るとは思えなかった。

――どうしたってことはないだろ。もう昼になるんだぞ

「は?」

――仕事だって言ってるんだ。

「そんな……昨夜のことを忘れたわけじゃないでしょ」

――だからといっておまえがそこで休んでいてもしかたないだろ。

「それはそうですけど……」

――何も会社に出ろと言ってるわけじゃない。雫先生のところに行ってやれ。

 その言葉に目が覚める気がした。

 雫は財部の気遣いを感じた。確かに今一番辛いのは雫のはずだ。自分など事件の単なる関係者でしかない。

「わかりました。急いで雫先生のところに行きます」

――頼んだぞ。こういう時に力になってやるのも編集者の仕事だからな。

「はい」

 財部は編集者の仕事と言ったが、尚子は作家と編集者としての関係ではなく、一人の人間として雫に何かしてあげたいと思った。

 電話を切って立ち上がると、隣の部屋に続く襖が開いているのが見えた。

「恭子?」

 覗きこんでみてもすでに恭子の姿はなく、布団もきちんとあげられている。既にどこかに出かけたようだ。

 すでに昼近い。

――ちょっと相談があって。

 昨夜の恭子の言葉が気にかかった。恭子が尚子を訪ねてきて一週間以上になる。何か事情があって来ていることは想像していたが、仕事が忙しかったこともあってまともに話もしなかった。きっと恭子もやっと話す気になったのだろう。

(今夜にでも改めて聞いてみよう)

 そう心に決めて出かける支度をはじめた。


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