七話
そしてワンは鉄男をふん捕まえて、零と合流し支部長室の前まで連れてきた。戸を叩き中に入る。
支部長室は、重要な資料が棚に並べられ。世界地図が壁に貼られており、そこに様々なカラーのピンが刺さっていた、中央には大きな机が置いてあり、シェイプはその前においてある、二つ一対のソファーに寝そべりながら、書類を眺めていた。
「シェイプ、アバドンの居場所がわかったぞ」
「さすがだな、仕事が早い」
「潜伏先は、港の倉庫の一角にいる、なんと哀れな男よ」
ワンは、あざ笑うように言った。
「それでも、油断はするなよ、彼は凄腕のエージェントとして名前をはせている」
「凄腕のエージェントが非戦闘員にかすり傷しか追わせられないなんて考えられないだろ、しかも不意打ちでだ」
「油断はするな、それがなければかすり傷も負わなかった、違うか?」
「もちろんだ、油断はしない」
「ちょっと待てよ」
そう声を上げたのは鉄男の背後に控えていた零。
「お前ら黄泉彦をどうするつもりだ」
「捕えて話を聞く」
「お前らに、捕えることができるのか」
「俺一人では無理だろうな」
「君の協力が必要だ、零君」
そうシェイプは言う。
「俺は協力するとは言わないぞ」
「君は彼に詳しい事情を聴いてみたいと思わないのか。そして、彼を取り巻く環境をどうにかしたいとは思わない?」
「それは……。どうにかしたいとは思う」
「彼はきっと苦しんでいるはず」
零の脳裏にちらつく光景、普段学校で見せる黄泉彦の笑顔や、苛立った顔や、優しげな顔。
それに重なる、あの零に向けた燃えるような、憎しみをたたえた目。
「彼はFHに囚われている、それを君はさっき知ったはずだ。彼の環境を変えることができれば、また友達同しに戻れるかもしれない」
「だったら、あった時、俺に話をさせてくれ」
「ふむ、いいだろう、だが身の危険を感じた場合は、取るべき行動をとる」
そうワンはいい、零はうなづき答える。
「わかった」
そして三人は出撃する、全ては零の友人を日常に引き戻すために。
だが零はわかっていなかったのだ。この事件の重大さ、根の深さを。