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五話


 零は医務室から先に出た。情報を詰め込みすぎた脳を少し休ませたいと思ったのだ。

 レネゲイド、シンドローム。エフェクト。ファンタジーじみた世界に自分が取り込まれてしまい、処理が追いつかない、認識が追い付かない。

 そして、黄泉彦が最初からその世界に足を踏み入れていたことにも、驚いた。

 医務室で聞いた話を脳で反芻させていると、医務室のドアが開き、上着を羽織りながらワンが現れた。

「他のみんなは?」

「ガラスを片付ける鉄男を監視すると言っていた。情報収集は私達だけで始めてしまおう」

 そう、先導するわけでもなく歩きはじめるワンに、追いすがる零。

「なぁ、聞きたいことがあるんだ」

「なんだ?」

「あんたはUGNなのか?」

「俺は正確に言うとイリーガル。つまり協力者だ、本業はネゴシエーター、説得してほしい奴がいたら行ってくれ。交渉してきてやろう」

 そう話ながらどこかに向かうワンの周囲にはいつの間にか、人が集まっていた。

*[ワン:情報収集班使用]*

 膨大な書類を抱えた秘書のような女性から、戦闘服に身を包んだ兵隊、チンピラと間違えそうなほど服を着崩している黒人もいる。

 そのすべてがワンに情報をもたらす特殊班であり。ワン直属の部下だ。

「周防義 黄泉彦の情報です」

 秘書風の女性が報告を始めた。

「FHのイリーガル。FHに幼いころより協力させられ逆らおうとするたびに親しいものを殺された。またレネゲイドウイルス自体を憎んでいるというのがUGNの情報サーバーにあった情報です」

 その言葉をチンピラ風の男が継ぐ。

「実力としてはマスタークラスには引けを取らない戦闘力を持っていて。その戦闘は味方にさえ恐怖を与える、それでついた通り名がアバドン。だとよ。旦那、また厄介な事件に首を突っ込んでるようだな、力になるぜ」

 そして、小銃を腰に下げた軍服の男が耳打ちする。

「エンペラー・ザ・マスターの腹心、片腕である。これは最近明らかになった情報です、よく行動を共にしているところを見かけるんだとか」

「なるほど、黄泉彦の情報はこれが全てか?」

 そう、情報を確認するワンを茫然と見つめる零。そんな零をみて、ワンはいったん部下の報告を止めさせ、零に向き直る。

「自分にできることを精一杯してみろ、何ができる」

「パソコンはうまく使える」

「じゃあ、それで黄泉彦の居場所を探り出せ、いいな」

 そうワンが指で示したのは、フロアの案内板。その中心には資料室の文字。

「そこからならUGNの情報にもアクセスできる」

「……。わかった。やってみる」

 そう零は走り出す。

 UGNの資料室は、想像していたのとは全く違った。

埃っぽさや、カビ臭さなどはなく。ほとんどのデータが電子媒体に記録されている。

 資料室の扉にはブラックドック進入禁止の文字が書かれていた。

「よし……」

 そう、気合を入れなおした零は椅子に座りキーボードをたたき始める。

 零が始めたのは町の噂をまとめるところからだった。

 黄泉彦の過去や立ち位置についてはワンがほとんど調べ上げている、だから零は黄泉彦が現在何をしようとしているのか、それを探したかった。

 ヒットする確率は乏しかったが。その中でも、一件だけ目を引く情報があった。

 それは一枚の写真、港の倉庫前で大量にとれた魚を写真に収めたその画像の隅に、場にそぐわない、学生服の青年が映り込んでいた。

「黄泉彦……」

「ビンゴだな」

 その声に驚き振り返ると、ワンがパソコンの画面を覗きこんでいた。

「そこに黄泉彦はいなくても、重要な情報が、何かしらはあるだろう」

「どうしてここに」

「マスタータオと、マスタードレイクについて調べるためだ、奴らはあまりに有名すぎる。情報ならここにある」

 そう零が立ち上がると、零が代わりにすわった、二本のUSBを突き刺し、テキストファイルを表示する。

『マスター・タオ

UGNのエージェントだったがFHに寝返った、理由はコードウェルの率いるFHの圧倒的強さを見せつけられたから』

『マスター・ドレイク

自身の血を分けた生命体を多く使役することで有名なマスター。彼の作った血の軍勢は機械によって強化されている』

 要約すると、そのような特徴が書かれたあと、彼らが関わったと思われる事件が羅列してあった。

「なぁ、黄泉彦はマスターとドレイクに操られていた可能性があるんじゃないか? ほら、血を使ったり、機械で支配したり」

「それはないんじゃないか、ここには機械化すると書いてある。そんな変化があったなら日常生活の中で気づいているだろう?」

「確かにそうだけど……」

「どちらにせよ、会ってみないことには、何もわからないだろう。こい。掃除が終わっていたら、出発する。掃除が終わっていなかったらおいていく」

「誰をだ?」

「鉄男さ」


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