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三話

二章『探究』


 UGNは世界の裏側に潜む存在だ、その存在は国家機密レベルに隠匿され、一般人では袖触れ合うことすらないレベル、だがオーヴァードは世界に大量に存在する。

 それこそ、未覚醒のオーヴァード予備軍は人口の七割、そしてその役一割程度が覚醒している。人数で言えば億を超えるほどだ、それを隠匿するとなると隠すだけでは足りない。

 溶け込ませる必要があるのだ。

 なので、UGN北海道S市支部基地は、表向きは保健所として、S市の中心からわずかに外れたところに存在する。

「すまないな、客人に傷の手当なんてさせてしまって」

 そしてエージェントは社会的には保健所の職員扱い、それはこのワン・メイも変わらない。

「いえいえ、おきになさらずに。……UGNの方々は怪我を頻繁にするような、激務を毎日こなしているのですか?」

 二人は医務室にいた、上半身露わにしたワンが横たわり、その傷を紅姫が治療している。

 血でできた針を巧みに操り紅姫は傷を縫い合わせていく。

「リザレクトの力がうまく機能していませんわね、エグザイルの能力でしょうか、細胞異常が見られますわ、焼き切ってしまいましょう」

 紅姫は自身の血で作った無数の器具を操作しながら、ワンに語りかける。

 紅姫は大人しくしていれば、愛くるしい見た目と相まって、淑女ぜんとして見える。

「どうしてこのような傷を」

「油断したら後ろから刺された」

「あら、そんなにお強い敵がおりますの?」

「油断大敵ということですな」

 二人の笑い声が、医務室内に響く。

開いた窓から春の訪れを感じさせる温かい風が吹きこみ、カーテンを揺らした。

 それがうっとおしいのか、薬剤棚を漁っていた零はカーテンをはねのけ、窓を閉め、一つため息をつく。

「あんた、かすり傷だっていってたろ」

 そして、紅姫のわきにアルコールの入った瓶を置く。

「して、こちらの方は?」

 ワン・メイは咳払いの後、零を指さし高らかに宣言する。

「こいつこそ、我々が見込んだ秘密兵器、零君だ」

「彼も、オーヴァードですの?」

「なんだ? オーヴァードって」

 ワンは虚を突かれたような顔をする。

「そうだ、その説明を忘れていた」

「忘れていたもなにも、事情の説明のために連れてこられたのにもかかわらず、俺はまだいっさい何も聞かされちゃいない」

「まぁまl落ち着け」

「落ち着いてられるかよ! オーヴァードってなんだ、レネゲイドって? しかも俺を放置していちゃついて、どんな顔して立っていればいいんだよ」

「普段の君で問題ない」

「できるか!」

 そう息を荒げる零にに紅姫は隣に座るように手で促した。

「私が説明しましょう、オーヴァードとは……」

 そう、紅姫が零に説明しようとしたその時。

 零がさっき占めた窓が割れた。


「説明しよう!」


 きらきらと破片が飛び散り、大きい破片が回転するプロペラのように、紅姫とワンを襲う。

 だが、そんなもので傷つく二人ではない。

 ワンは領域操作の力でガラスの慣性を打消し、紅姫は水滴ほどの血液を二三操り、器用にガラスをキャッチした。

「てつお……」

 紅姫が呆れ果てた調子でそうつぶやいた。

 観れば、窓枠に足を乗せ器用にバランスを取りながら、決めポーズをとる人物がいるではないか。

 要は、それが鉄男だった。

「なんだお前は!」

 零が抗議の声を上げる。

「説明しよう!」

「言葉が通じない!」

「別にあなたが説明してもいいのよ、鉄男。できるならの話ですけど」

 そう紅姫が言うなり、鉄男はそっぽを向いてしまう、そして身をかがめながら入出し、紅姫の隣に座った。

「なんなんだ、こいつ」

 零が抗議の声を上げる。

「私の付き人、鉄男ですわ。変わっていますが、根はいい人ですのよ」

「根がいい奴がはたして、窓ガラスを割って侵入するのかな」

 ワンが肩を回しながら答える。治療が終わったところだった。

「うむ、いい調子だ」

「よかった。では早速本題に入りましょうか。零さん、あなたはレネゲイドをどこまでご存じ?」

「え? ああ。まったく知らない」

「みたいですわね、オーヴァードの基本エフェクトのリザレクトもうまく使えないようですからね」

「リザレクト?」

「ええ、自分の腕を見て」

 零は反射的に視線を下ろすと、ガラスの破片で切ったのだろう、長く切り傷が腕に刻まれていて、血が浮かんでいた。

「うわっ」

「安心してくださって、大丈夫ですわ。その程度の傷、すぐに治ります」

「すぐって、一週間くらいだろ」

「すぐは、すぐですのよ。一瞬という意味です」

「そんな、わけ……」

「治れ、と念じるだけでいいですわ、念じてみてください。それで治ります」

 零はしぶしぶと言った様子で、自分の腕に視線を落とす、そして、眉間にしわを寄せて真剣に念じはじめた。

 するとどうだろう、見る見るうちに傷がふさがり、皮膚の上に浮いた血をふくと跡すら残さず、傷が消えていた。

「これは?」

「オーヴァードの基本エフェクトのうちの一つ、リザレクトですわ。オーヴァードは念じるだけで、致命傷ですら数分で回復できますわ」

「じゃあ、死なないのか、何でワンは傷ついてる?」

「リザレクトを妨害する何らかの手段が講じられた場合、もちろん死に至りますし。何よりリザレクトには制限がありますわ」

「浸食率が100パーセントを超えるとリザレクトで傷をふさげなくなるんだ。レネゲイドの機能一部が停止するからだ、と言われている」

 ワンが言葉を継いだ。

「浸食?」

「レネゲイドウイルスは超常の力を引き出すと同時に、使えば使うほど体が汚染される、その汚染具合を示す数値が浸食値と言い。100を超えたものはレネゲイドに飲まれる」

「飲まれると、どうなるんだ、死ぬのか?」

「欲望に飲まれる」

 ワンは語る、その悲惨さを。

「欲望に忠実になり、自身の欲望を優先的に考え。その力を際限なく行使できる化け物になる」

「その力の一つが、この再生能力?」

「他にも多くありますわ、この能力はあくまでもすべてのオーヴァードが共通してもつ基本能力の一つ。そしてその能力を大きく分けると十二の系統に分けられる」

「系統?」

「レネゲイドに感染し、超常的能力を手に入れたものは超人、オーヴァードと呼ばれるんだ」

「オーヴァードが目覚める能力には12の種類があり、それを最大で三つ、最小で一つ組み合わせて、自身の能力とします」

「能力としては、

  光を操り、遠距離からの戦闘を得意とする エンジェルハイロウ

  重力と時を操り、他の意表をつく動きができる バロール

  電気を支配し、機械の扱いにも長けた ブラックドック

  血液を自在に操り、人形を作りサポートさせられる ブラムストーカー

  獣に変身し、強大な身体能力を得る キュマイラ

  自身の体を細かく変化させ、人外じみた動きを可能にする エグザイル

  神速に足を踏み入れ、風や、音をあやつることを得意とした ハヌマーン

  無から有を作り出す、錬金術師 モルフェウス

  自身の脳を活性化させ、天才的頭脳を武器に立ちまわる ノイマン

  因子を周囲にばらまき、空間を支配する オルクス

  熱を奪い、与え。火と氷を操る サラマンダー

  体内で薬品を生成し、それにて惑わし、サポートを行う ソラリス」

「これらに能力は分類され、オーヴァードは必ず、どれかに発症しますわ」

「そして、これらの分類わけを『シンドローム』とよび、その能力を使って行う、奇跡の数々、戦術の数々、技の数々を『エフェクト』と呼ぶんだ、理解できたかな、零君」




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