十六話
終章
零の絶叫がむなしく倉庫にこだまする。
そして、それを聞きつけたのか、零の背後に黄金の門が姿を現した。
その直後に三人は強いワーディングを感知する。
全員がその扉を見た。
そして扉がゆっくりと、開く。
扉の向うからは強烈な光、次の瞬間。
金色の矢を受けて零の体が吹っ飛んでいた。
「零!」
そうワンは叫びをあげる。しかしワンの体が動かない。
なぜ、そう自身の足を見つめる。
震えていた。恐怖によってだ。
体がそのワーディングの強さに恐怖していたのだ
「まさかお前らのような雑魚に倒されるとは、余の犬も大したことがないということか」
聞こえたのは、金属が床をこする音。それは足音だ。
おそらくはエンペラー、しかし姿逆光によって全く見えない。
そしてその足音は零のすぐそばで止まると、その腕に抱えられているアバドンをすくい上げた。
「黄泉彦は犬じゃねぇ」
絞り出すように、零はその人物に言い放った。
しかしエンペラーはその言葉を意に介さない。
「こいつにはまだやるべきことがある」
「なに……」
零が錆びついた人形のようにぎこちなく動く、黄泉彦を連れて行かせまいと手を伸ばす。しかしその手は届くことなく、扉が閉まっていく
「黄泉彦……」
「再びまみえよう、その時は余が手ずから引導を渡そう」
「黄泉彦!」
零は叫ぶ、しかしその声は届くことなく完全に黄金の扉がしまった。
後に残るのは地の香りと静寂だけ。三人は変わり続ける状況についていけず、ただ茫然塔扉のあったほうに視線を向けるのだった。
続く




