表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不思議なカフェ

作者: 玉篠

これは、私が見た夢を元にした物語です

何処かの街の裏通り

路地をいくつか曲がった先に、そのカフェはある

 

おそらく戦前に建てられたであろう、洋風の建物

カラン…

と、カウベルのような音がするドアを開けて中に入る

明るい店内には、いつもロマンスグレーの髪の、英国紳士のようなマスターがいて

香り高い紅茶を淹れていた

 

余り珍しくない

ごく普通のカフェ

ただし、他のカフェと違うのは、店内に多くのタンスが置いてある事だった

 

タンスは、作りも大きさもバラバラだ

真新しい箪笥もあれば、細かな彫刻が施されたアンティーク風のチェストもある

一見タンスに見えるライティングビュローもあれば、金具が豪奢な仙台タンスまである

 

それらのタンスが、何故そこにあるのかわからないが…

埃一つなく磨きあげられたタンスは、上に乗せられている本やランプと共に、独特の雰囲気を醸し出していた

 

私がそのカフェに通いだしたのは何時からだったのか。

今となっては忘れてしまったが

気づけば毎日のように、通っていた

 

 

どれだけカフェに通っただろうか

ある時、私は、マスターから小さな鍵を渡された

マスターは言った

「 それはタンスの鍵ですよ 」

 

見れば、店内のタンスには、それぞれ小さな鍵穴が付けられていたのだ

それは、天板だったり、棚を支える横板の隅だったり

様々な場所に、目立たないようにもうけられている小さな鍵穴

 

思い立って、もらった鍵を一つのタンスの鍵穴に挿し込み、軽く回すと…

引き出しになっているはずのタンスの前面が音もなく開いて

奥に別の空間が現れた

浅い奥行きのタンスには似使わない…

そこそこの収納量の空間だ

 

私は一つのタンスのとある空間に、あるものを入れた

そして、カフェに来る度に取り出して

カフェの中だけで使っていた

 

 

ある日

いつものようにカフェに行き、いつものタンスの鍵穴に鍵を入れて回したのだが…

中にあるはずの物がなくなっていた

 

別のタンスと間違ったのか

と、思って

いくつかのタンスの鍵穴に鍵を挿し込んでみたものの、どのタンスの中も空っぽ

 

助けを求めてマスターの方を見たが…

マスターは、ちらりちらりと私の方を見るだけで、何の助言もしてくれないのだ

 

躍起になった私は、更にいくつかのタンスの鍵穴に鍵を挿し込み、開けてみた

でも…

どれも空っぽか、私が入れていたのは

 

その時、ふと気付いた

 

私…

そこに何を入れていたんだっけ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ