喜びに満ちた世界
ここは喜びに満ちた世界。
ありとあらゆる幸福が集まる世界。
望みは全て叶えられ、何不自由なく暮らせる世界。
ここには喜びがあった。
そして、そこには停滞があった。
停滞した世界。
喜びはいつの間にかあって当然に。
喜びはいつしか喜びではなくなる。
望むものは何?
望みなど何もない。
叶えたいことはある?
そんなものは存在しない。
そうして停滞は荒廃に。
喜びはここには無い。
喜びに満ちた世界は、何処よりも喜びがない世界。
そして人は気付くのだ。
望むものは何?
私たちが望むもの。
それは――――。
死ぬことだった。