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4月15日(日) 十里なぎさ、父と会う。

 4月15日、日曜日。


 日曜日は一週間の始まりではあるが、大体の人間からすれば月曜日が一週間の始まりであろう。

 一週間の終わりである日曜日は今週の疲れを癒すためにゆっくりするのが筋ってものだ。俺、十里なぎさも今日は家でゆっくりゲームをしたり、ケーキでも作ってみたり、日曜日を満喫していた。

「げぷ…ゲーセンでも行くかな」

 ついついケーキをホールで作って一人で食べきってしまい気分は優れなかったが、あえてこの状態で音ゲーをやりに行こうとおもった。この極限状態でダンスゲームをやればどうなるだろう。吐いたらゲームセンター出禁だろうか。そんな下らないスリルを味わうために玄関へ行くと、見慣れない靴が置いてあった。鍵もかけたはずなのに開いている。泥棒でも入ったのかと思ったが、無駄に高価そうな靴を見て持ち主が誰だかわかった。

「親父!どこだ!」

 叫びながら家に戻ってきている親父を探す。この歳になってかくれんぼをしている気分だ。

 数分ほど色んな部屋を探し回り、客室でコーヒーをすする親父、十里凪の姿を見つけた。

「なぎさか。コーヒータイムだ、静かにしろ」

「ちゃんと鍵を閉めろ。後何しに帰ってきた」

「たまには私だって自宅でゆっくりしたい時もあるのだよ」

 コーヒーを飲み終えてカップを置くと、親父は俺に問いかけた。

「それよりお前こそどうしたんだ、いきなり大金を卸したりして。まあ家は裕福だ、少々息子が無駄遣いをしても何とも思わんが、普段が普段だけに気になってな」

 あの事を言うべきだろうか、ひょっとしたら親父は事情を知っているのかもしれないが。

「高校でさなぎに再会したんだ。聞けば母さんはアル中で生活も苦しいらしいから、養育費と生活費を渡した。それだけだ」

「そうか、あいつらがか」

 反応を見るに、親父もさなぎ達の行方は今まで知らなかったようだ。調べようともしなかったとも言えるが、俺も親父と同じなのでここでとやかく言うのはブーメランだ。

「はん、全然興味ありませんって顔だな。冷たい奴だぜ」

 これ以上話すこともないと思い客室から出ようとするが、出口まで歩いたところであることを聞きたくなった。

「なあ親父、何で俺達を別々に引き取ったんだ」

 普通ならば子供というのは離婚する際どちらかにまとめて引き取られるはずだ。

「さなぎは佐奈…あいつ似だから引き取りたくなかった。お前も私似だから、向こうは引き取りたくなかったようだ」

 酷い理由だ。それほどまでに両親は互いを憎んでいたというのか。

 さなぎとなぎさ。両親の名前は佐奈と凪。子供の名前を両親から取るのだから、産まれた頃はまだ仲が良かったのだろうか。歯車というのはどこで狂うかわからないものである。



 その日の晩に買い出しに出かける頃には、既に親父の靴はなかった。鍵も開けっ放しだった。

 親父の好物であるエビグラタンでも作ろうかと思っていたのに。


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