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今日の授業はラブコメです  作者: 中高下零郎
4月 プロローグ
5/90

4月13日(金) 十里なぎさ・meets・要桃子。

 4月13日、金曜日。


『おはようございますご主人様。今日は4月11日です。おはようございますごしゅ』

「…うるせえ」

 朝7時、自室にてアニメキャラの声で目が覚める。メイド目覚ましなんて買うんじゃなかったな。今日は金曜日、明日は第二土曜日なので学校もお休みだ。やっと1週間が終わると世の学生ははしゃいでいるだろう。制服を片手に自室を出て、シャワーを浴びに家を彷徨う。何故自室からシャワー室まで1分も歩かねばならないのか。シャワーを浴びて寝起きの頭は大分スッキリしてきた。風呂場の鏡の前に立ってポーズを決めてみる。そこにはチビでつまんない男が何を勘違いしたのかポーズを取っていた。シャワーを浴びた後は制服に着替え、今度は朝食の用意をしに厨房へ。何故シャワー室から厨房まで2分も歩かねばならないのか。冷蔵庫を開けるとあまり食料は入っていなかった。今日あたりスーパーに行かなければ。とりあえず卵とベーコン、冷凍のミックスベジタブルがあるので炒飯でも作ることにする。

「いただきます」

 無駄に広い食堂で一人さびしく食事をとる。この家はでかすぎる。金持ちというのは見栄を張りたがる生き物なのか、必要以上にでかい家を建てたがる。俺の父親である十里凪もそうであった。とはいえほとんど仕事で家に帰ってこない父親には気にならないかもしれないが、毎日ここに住んでいる俺からすれば大変だ。

 俺の名前は十里なぎさ。豪邸に1人寂しく住む、私立焔崎高校1年5組の生徒だ。世界的に有名な十里グループの御曹司だが、正直十里グループが何をやっているのかはよく知らないし、興味もない。大事なのは俺がドラ息子というこの1点だけであろう。俺を記号で表すならば、それとチビだけで事足りる。

「本格的にメイドでも雇うかねえ」

 寂しい独り言。この家には俺にはあまりにも大きすぎた。ただただでかいだけの家。移動は不便だし、機能性には欠ける。まるで張りぼての城。掃除とかは1人だと大変なので、たまにハウスメイドを派遣してもらってはいるが、こうも寂しいと一緒に住んでくれるメイドが欲しくなる。現代日本にメイドがいるのかは知らないが。




「行ってきます」

 さあ学校に行こう。不幸中の幸いか、家を出たらすぐに道路だ。これで土地が広くて敷地内出るのに数分かかるとかでなくて本当に良かった。

「しかしさなぎが同じ高校とはなぁ」

 昨日俺は双子の妹である稲船さなぎと再会した。小6の頃俺達の両親は離婚し、さなぎは母親と出て行ったのだがそれ以来音信不通だった。さなぎはヤンキーっぽくなっていたし、母親はアル中らしい。とはいえ俺に彼女達を心配する資格などないだろう。家族が2人いなくなっても、自分は裕福な父親の方に引き取られたし、まあ生きていけるかというスタンスで彼女に逢うまでまるで初めからいなかったかのように存在を忘れていたのだから。

 実を言うと妹はともかく今でも母親なんてどうでもよかった。物心ついたときから両親は喧嘩していたし、両親に良い思い出など全くない。離婚する当時だってこれでやっと二人の喧嘩を見なくて済むのかと思っていたほどだ。それでも俺の両親なのだ。そんな厨二めいた事を考える自分は幼いとは思っている。

 妹は強くなろうとしたけど自分は弱いままだと言っていたが、あいつは少なくとも変わろうとした。それに比べて俺はどうだ。変わろうともしてないのではないか。俺の身長が全然伸びていないのも、昔からちっとも成長していないことの表れだろう。

「高校デビュー…か」

 俺は今度こそ変われるのだろうか?




「なーなー昨日お前が保健室に連れ込んだ金髪のでかくて可愛い子って彼女?」

 学校につき、自分の教室に入るや否や、中学からの友人である不動が話しかけてくる。

「双子の妹だ」

「まじかよ全然似てねー。てか妹の方がでけーのかよ。つうか俺にもワンチャンある?」

「彼氏がいるらしいから諦めろ。尤もフリーだとしてもお前は駄目だ」

「ひっでー」

 そう、昨日の話を聞く限り妹には彼氏がいるらしい。兄としてはどんな男か気になるところであるが、今更兄面して彼氏のチェックなど気持ち悪いにも程がある。

「そういえば今日の昼休み、秘密の写真即売会があるんだが、お前も来るか?」

 不動が女子に聞こえないように小声で話しかけてくる。秘密の写真即売会…あれか、噂には聞いていたが女の子の隠し撮りした写真を売るという…実在したのか。

「行ってみるか」

 俺も男だ、そういうイベントには興味がある。




「皆様ようこそお集まりいただきました。VIPのためのスペシャル写真即売会。今日は新年度初回ということで、新入生を多めに取り扱っております」

 予定通り昼休みに視聴覚室へ行くと、男子が三十人くらいいた。こういう秘密のイベントというのはどきどきするな。女の子の隠し撮り写真が欲しくてどきどきしてるわけじゃないぞ?

「まずは1年1組、ここにはいませんので言いますが、幼馴染の金切良平君に恋するも全く気付かれない悲劇の美少女、彼岸優さんの席替えで金切君とかなり離れたクジを引いてしまい、机をガンガンしながら悲しむ写真と、その後席を替わってもらいうきうき気分の写真になります」

 主催者と思わしき男はまず彼岸姉の写真を出し、それでも好きなんだと一人の男にそれは買われていく。彼岸姉とは中学は一緒だったが喋ったことはない。自分と面識があるのは、

「続いては1年2組になります。彼岸優さんの双子の妹、彼岸秀さんの喧嘩を売られて微笑む画像になります」

「こええなぁおい」

 不動がビビる。彼岸妹とは知らない中ではない。それにしてもこんな写真買い手がつくのだろうか、誰も買わないなら自分が買って焼却供養しようと思っていたが、

「く…ください…」

 一人の男に写真は無事に買われた。良かったな彼岸妹、お前を想ってくれる人がいて。なんだか心が豊かになるな。今なら何があっても菩薩の心で許せそうだ。

「続いて1年4組、大野道中の番長、稲船さなぎさんがこの学校でも番長になるべく彼岸秀さんに喧嘩を売るも腹パン一発で沈められ倒れる」

「ふざけんな糞があああああああああああ」

 写真紹介の途中で俺の怒りが爆発し暴れまわる。許さん。絶対に許さん。笑っている画像ならともかくよくもこんな酷い写真を衆人の目に晒してくれたな。こんな写真即売会ぶち壊してやる。

「落ち着けなぎさ!気持ちはわかる!気持ちはわかるが!」

「黙れ不動、お前に何がわかるんだよ」

 不動になだめられるが俺の怒りは収まらない。ここで怒らなければお兄ちゃん失格だ。俺は怒りに震えながらも妹の写真を買い占める。こんなもの速攻でこの世から消去だ。

「えー、少しトラブルがありましたが、いよいよ最後になります。最後は1年4組、尾武中ではあまりの人気にファンクラブができ、ここでも既にファンクラブが結成されたと噂の奇跡の美少女、要桃子さんの授業中居眠りした後起きてよだれを垂らす画像です!」

「うおおおおおおお!」

「3000円!いや5000円は出すぞ!」

 突如参加者達は大盛り上がり。この子が一番人気というわけか。それにしても妹の写真がこれの引き立て役に使われてたのは納得がいかない。しかし確かに一番人気なだけはある。この写真では顔しか見えないが、顔だけで圧倒的な美少女力だとわかる。全てを包み込みそうな柔らかで綺麗な桃色の髪と、小動物のような可愛らしい目。鼻も口も非常に小ぶりで可愛いという表現以外に思いつかない(俺がボキャ貧なせいもあるが)。よだれを垂らすというあまりイメージの良くない行為(これが妹の写真だったら俺はブチギレているだろう)でも、彼女ならばそれを昇華させ、よだれを垂らすということが崇高な行為に思えてくる。客観的に見ても妹は可愛い方だとは思うが、彼女と同じクラスになったのは可哀想だな。

「すごい人気だねえ要さんは。既にファンクラブの会員は100人を越えたとか」

「恐ろしい話だな。しかしファンクラブができるのも納得だ」

 不動と共に彼女の美少女力に感心する。結局この写真は1万の値段がついたそうな。




 そして午後の授業を終えて放課後だ。ゲーセン行くか、と言いたいところだが、残念ながら今日はすぐには帰れない。クラスの委員等を決める際、じゃんけんで負けに負け、図書委員という面倒な役割をおしつけられてしまった。毎週金曜日の放課後に4組の図書委員と図書室で司書的な仕事をしなければいけないというのだから面倒なものである。まあじゃんけんで負けたものは仕方がないので覚悟を決めて図書室へ。

 テストまでまだまだ先だからか、図書室にはあまり人がいない。とりあえず受付に座り、置いてあるマニュアルで図書委員の仕事をチェック。貸出カードやら新しく入ってきた本の管理から色々大変そうだ。4組の図書委員はまだ来ていないようだ、掃除が長引いているのだろう。

「すいません、遅れました」

 4組の図書委員が来たようだ。女の子の声だな。これから週1日とはいえ長い付き合いになるのだ、THE・図書委員って感じのメガネの可愛い子とかならいいのだがと思って顔を上げ、その声の主を見ると、そこには天使が立っていた。本物の要桃子である。



 なんだこの子は。そりゃあファンクラブもできる。申し訳なさそうにおどおどしている彼女の写真ならいくらで売れるだろうか。あの写真では顔しかわからなかったが体もすごい。まずはどうしてもメロン(Fか?Gなのか?)に目が行ってしまう。でかければいいってものではない、妹はBくらいだがスレンダーな体型によく似合っているし、高校1年生なら平均レベルだから大丈夫だと言ってやりたいが、大きさだけでなく形も一級品である彼女のメロンを見れば、妹のは蚊に刺された跡だ。次に見るのは脚だな。身長が高い方ではないが(俺と同じくらいだろうか)、脚が長い。そして適度に細くてすべすべしてそうだ。頬ずりしたい脚。蹴られたい脚。特に絶対領域はやばい。今まで絶対領域とか意味わかんねーよとか思っていたけど絶対領域がいかに素晴らしいものか今理解した。彼女の絶対領域に感謝である。まだ4月で半袖でないので彼女の腕は見えないが、きっとすごく綺麗でやわらかいのだろう。二の腕の柔らかさは胸と同じだと聞くが本当なのだろうか。手も小さくて可愛らしい。もみじまんじゅうの起源の説の1つに、女の子の手がもみじみたいで可愛らしいので焼いて食べたいという発言があるが、彼女の手なら焼かずにしゃぶりたい。

 ついつい興奮してしまった。俺は別に変態ではない、だが彼女の美少女力が俺を狂わせてしまうのだ。こんな恥ずかしいことを考えていることを悟られたくはないので極めて紳士的に自己紹介だ。

「5組の十里です。よろしく」

「4組の要です。あの、いきなりすいませんが5時頃にちょっと抜けていいですか?」

「構わないよ」

 ちょこんと受付の椅子に座る。挙動1つ1つが可愛らしい。

 あまりじろじろ見てると印象が悪いのでまるで彼女に興味がないかのように自然に振舞うことにする。本を借りる人もいないのでマニュアルを読み進めるが、

「……(チラッ)」

 なんだか彼女が俺をちらちら見ている気がする。あれですか、ひょっとして俺に気があるのですか、期待しちゃっていいのですか?とは言ってみたもののそこまで現実が見えていないわけではない。

「…俺の顔に何かついてますか」

 極めて紳士的な対応。

「いえ、そういうわけじゃ…すみません…」

 チラチラ見てることがバレて照れる。可愛い。

 そのあと2分ほど無言の状態が続くが、

「その、昔から男の人によく見られてて」

 唐突に彼女は喋りはじめた。さっきの言い訳だろうか。

「気が付いたら逆に男の人の視線が気になって、こちらから気にするようになって」

 なるほど、それでこちらをちらちら見ていたのか。しかしそんなことをしていては、

「要さん。そうなってから男子の人気あがったでしょ」

「な、なんでそれを…」

「可愛い女の子がこちらをちらちら見ていたらそりゃあ男共は勘違いしますわな」

 結局余計に男の視線を釘づけだ。

「そ、そんな…」

 今まで誰もそういうことを指摘しなかったのか。まあ、指摘して彼女がチラチラ見るのを辞めれば損をするのは男だしな。

「うう…よし、この癖やめます。他人の目なんて気にしない」

 要さんはしばらく机に突っ伏し呻いていたが、顔をあげてガッツポーズをして高らかに宣言。

「そうか、頑張りなよ」

 俺もささやかながら協力することにしよう。要さんの人目を気にしない特訓だ。要さんの方を向く。



 30秒経過。

「……」

 彼女は冷や汗をかいている。頑張れ、耐えろ。

 更に30秒経過。

「なんでさっきからこっちガン見してるんですかぁ!しかも瞳孔開きっぱなしで」

 1分が限界だったようだ。要さんが俺にどなる。図書室では静かにな?

「いや、練習になるかと思って」

「そんなに漢らしく見る人なんてそうそういません!見るならチラチラ見てください!」

 ムキーと怒る彼女もまた可愛らしい。

 というわけでテイク2。

「……」

 30秒経過。

 チラチラと彼女を見る。

 1分経過。

 妹からメールが来たのでそれに対応。明日彼氏と映画見にいくけどどんな映画がいいだろうかと尋ねてきた。ラブコメ見てろラブコメ。

 2分経過。

 マニュアルに書いてあることも覚えた。たまに全然違う場所に本を戻す人がいるのでそれのチェックでもするかな。

「あの、ちゃんとチラチラ見てますか?」

「見てないよ」

「なんで見てないんですか!練習に協力してくれるんじゃなかったんですか?」

 また怒られた。ふわふわしたイメージだったが意外と感情豊かだ。

「ガン見ならともかくチラ見なら他人の目を気にしなければわからないでしょ、それが気になる時点で負けだと思うけど」

「……」

 正論を返され要さんはショックで声も出ない。

「というかさっきからマニュアルも読まずに俺の視線ばかり気にして…本気にしちゃうよ?」

「…そろそろ5時なので一旦抜けますね」

 そう言うと要さんはそそくさと図書室を抜け出す。逃げやがった。

 しかし普段の自分からは想像できないような態度だな。好きな子は苛めたくなるということか、彼女の美少女力が俺を狂わせる。好意的に見れば彼女のおかげで俺は一時的に変われている。



 本の整理をすること十五分、なんとか本を元の場所に戻すことができた。読むのは勝手だがきちんと元あった場所に戻せ馬鹿野郎。それと昨日までの図書委員はちゃんと仕事してるのか?

「ただいまー、はー…嫌になっちゃう」

 要さんがちょっとやつれて戻ってきて、再び受付に座りため息をつく。そういえば投書箱の中に生徒が置いてほしい本をリクエストしているので、それを確認してまとめておこう。

「いやーほんと参っちゃうよ」

 要さんが何やら言っているが仕事に集中。

 最近はライトノベルの要望が多いのか。ん、これ妹の投書だ。学校の図書室に不良の武勇伝をまとめた本なんて置けるわけないだろうがアホ。

「ほんとにさぁ」

 これは今季からアニメが始まった作品だな。仮に本が置かれてもその頃にはアニメは終わっているのでブームは下火になっている事だろう。

「……」

 要さんがこちらを睨んでいる。明らかにイライラしている。

「何があったの」

「え?聞きたい?」

 仕方がないので聞いてやることにしよう。要さんの目がキラキラする。

 男がウザいと感じる女の行動ランキングに今のが確かランクインしていたな。

「うんうんすごい聞きたい」

 彼女はしょうがないなーと肩をすくめて喋りはじめた。

「実はねー、呼び出されて告白されてね。しかも同じ時間にダブルブッキング。無視するのもアレだし、ちゃんと丁寧に対応してるんだけど、入学1週間でもう10回よ。前の学校では」



「すいませーん、検索用のパソコンが動かないんですけど」

「はーい、今行きます」

 検索用のパソコンの前で一人の男子生徒が困っているようなのでパソコンのチェックをしに向かう。

「聞いてよ」

 要さんがイライラしながらそう呟くのが聞こえる。いや仕事はしないとさあ。

 不機嫌な彼女を後目にパソコンを何とか正常起動させて受付へ戻る。

「それじゃあ愚痴の続きをどうぞ」

「もういいです」

 女の子は気まぐれだね。まあようするにモテすぎて困っちゃうという自虐風自慢か。まあ本人からすれば本当に困ってるのだろうけどこれを女子が聞いたら憤死モノだろう。

「彼氏を作ればいいのでは。それとも彼氏いるけど告白が止まらないの?」

 恋愛経験豊富なわけではないがアドバイスをする。モテモテで告白されるのが嫌ならさっさと彼氏を作ればいい。多少は諦めて告白は減るだろう。それとも減ってもこの頻度なのだろうか?

「いないよ。そんな簡単なもんじゃないでしょう恋愛って。これだから男は」

 いないのか…そして出ました名台詞、これだから男は。彼女は大きなため息をつくと、また喋りはじめる。

「私さ、まあ自覚はしてるわけよ。顔は可愛いし、胸はでかいし、すごい美少女だって。ナルシストって訳じゃないけどね?でもそれだけなんだよね。私が周囲に自慢できるのって外見だけなわけで。美少女になるために血の滲む努力したわけでもなし。なのに外見で皆告白してくるもん。まあ、第一印象がすごい大事だってことはわかるよ。わかるけどさぁ…ああ、何て言えばいいのかわかんない」

 しばらく彼女は額に手を当て悩む。

「まあ、まとめると、外見褒められても嬉しくないってこと。私性格はそんなに良くないと思ってるし。普通の子は友達として付き合って、段々内面もわかってきて、それで告白ってなるかもしれないけど私はそれがないわけで。何を考えてるんだろうね一目惚れで告白する連中は、相手がどんな人かもよく知らないのに、可愛い子は性格も良いに決まってるって思ってるんですか?ストーカーしてその人の事をじっくり調べた方がまだマシだと思います」

 胸の内を告白してすっきりしたのか、彼女は背伸びをする。

「まあ男は付き合えばエロいことできるだろう的な感じで告白してると思います」

「うう…」

 そして俺の感想でまた落ち込む。

「十里君もそうなんですか」

「さーてどうでしょう」

 まあ本音を言えばヤリたい。高校1年生の男はまだまだお盛んなお猿さんだし、多少理性があったとしても彼女の身体はそれを破壊してしまうだろう。告白する奴らと俺の違いなどOKされるという僅かな可能性を信じているかいないかくらいなもんだ。

「セクハラで訴えたい気分です…はあ、愚痴ってすっきりしようとしたのに十里君のせいで憂鬱です。罰として何か恥ずかしい話をしてください」

「恥ずかしい話ねえ」

 最近あった恥ずかしい話…ああ、そういえば今日の事があったな。



「要さんが寝起きで涎を垂らしている写真が1万円で売れたよ」

「……」

 あまりの恥ずかしさに声も出ないか。そりゃあ恥ずかしいよなあ…

 下校のチャイムが鳴る。俺は残っている生徒に外に出るように誘導した後、窓やらなんやらの戸締りをチェック。電気を消して、鍵を手に取り、

「要さんフリーズしてないで出るよ」

 要さんを解凍させる。

「な…な…」



「なんで私の恥ずかしい話なんですかああああああ!」

 図書室では静かにしましょう。




 その後職員室に鍵を返却し、学校を出る。流れで校門まで俺達は一緒に歩き、

「それじゃあ要さん、また1週間後」

「うう…もう学校行きたくない…」

 そこで俺達は別れた。

 しばらく歩き、俺は冷静になる。ちょっとやり過ぎたか。変わりたいとは思っていたけど明らかに間違った方向に変わっている。妹より酷いのではないだろうか。いや、俺は悪くない。彼女の美少女力が悪いんだ。

 こんな日は自然と足はゲームセンターへ。彼岸妹あたりがいるだろうか?そういえば彼岸妹への態度もあんな感じでよく怒らせてたな、彼岸妹も美少女だし仕方がない。

 ゲームセンターをうろつくと、彼岸妹がクイズゲームをやっていた。声でもかけようかと思ったが、やめた。彼女と一緒にウチの学生服を着た男が座っていた。あいつは確か今日の写真即売会で彼女の写真を買った男だ。良かったな、彼岸妹。もう付き合ってるのだろうか?あいつがどや顔で幸せそうにお前も彼女とか作れよとか言った日には、彼氏共々血祭にあげようとして返り討ちだな。



◆ ◆ ◆


 今日は酷い目にあった。まさか寝起きの写真を撮られてたなんて。授業中すら私は周囲の目を気にしなければいけない。知らなければ済んだ話なのに、十里君め…。まあ、色々喋ってすっきりした。あまり男と2人で喋る機会なんてなかったしね。十里君には私の内面も少しはわかってもらえたようだけど、そのうえで私の事をどう思っているのだろうか?多少性格悪くてもエロい体つきしてりゃオッケー的なノリなのだろうか?いやいや待て、これじゃまるで私が十里君を意識しているようじゃないか。あんな男…まぁ、悪い奴じゃなさそうだけど…ああ、もうもやもやする!


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