5月14日(月) 彼岸優、ダブルデート作戦
5月14日、月曜日。
「ねえねえ、最近優って金切君と一緒にいること多くない?なになに、ひょっとしてかなりいい感じになってきた系?」
「う、うん。でもまだまだだと思うから、ヒナも全力で私の事応援して欲しいな」
「優に直々にそんなこと言われるなんてね、こりゃあ張り切らないと」
「うん。でもヒナ一人だと何か暴走しそうだから、そう、例えば小田君とかとできれば協力してやってほしいな」
私、彼岸優と友人の稲妻日名子はお弁当を食べながらそんな会話をする。
最近私と金切君が一緒にいることが多くなったのは、ヒナと小田君をくっつけるためだ。
現在の状況をまとめよう。
私、彼岸優は金切君が好き。ヒナと小田君はその気持ちに気づき、応援してくれている。
そして小田君はヒナが好き。彼の気持ちに気づいた金切君は私にそれを相談し、私達で二人の応援をしよう、ということになった。
私達がヒナと小田君をくっつけるために二人で頑張れば、距離も縮まるし逆も然り。
そんなわけだから私は全力でこの二人をくっつけようと思うし、逆に二人には私の恋を全力で応援してもらいたい。
しかし1週間が経つがなかなかうまくいかない。私と金切君は家が隣の幼馴染という接点があるが、向こうの二人にはそれがない。席は隣同士だけど小田君はあれでかなりの恥ずかしがり屋なのかヒナに話しかけている所を見たことがない。現段階で私達ができているアシストといえば、体育の時間に私と金切君、ヒナと小田君で組むようにするくらいだ。
まあすぐに結果を出さなければいけないというわけでもないが、金切君もヒナも別の人と付き合ってしまわないとは勿論言い切れない。
「あ、ちょっと花摘んでくるね」
「待ってよ優、私も行くべ」
私とヒナは女子トイレに向かう。そこで二人の女子生徒…妹の友人?である稲船さなぎさんと要桃子さんの会話が耳に入ってくる。
「桃子も高校入ったんだし、デートとかすれば?お兄ちゃんと映画とか」
「あはは、なぎさちゃんと?有り得ませんよ。でもどこか遊びに行きたいですね、部活の皆で遊園地とかだったらなぎさちゃんと一緒でもいいですよ、俗にいうダブルデートですね」
「ああ、そりゃいいかもな。ついでに黒須も呼んで、トリプルデートだ」
…それだ!
「ヒナ、ダブルデートしよう」
「へ?ダブルデート?」
「うん。金切君をデートに誘うのは恥ずかしいから、ダブルデートって形で遊びにいくの」
ヒントは体育の授業ですでにあったのだ。私と金切君、ヒナと小田君のペアを作ってスポーツを楽しむ。ダブルデートなら名目上はヒナと小田君がデートすることになったけどヒナが一人じゃ不安だと言うから私達もついていこう、と自然に金切君を誘える。そんな私の考えをヒナに伝えると、
「うーん、私は構わないけど、小田君その作戦でオーケーしてくれるかな?そもそも私と小田君がデートって不自然に感じられない?」
「絶対オーケーしてくれるし不自然でもないから、ほら早速いこ?」
ヒナを引き連れて教室にいる小田君の元へ。
「小田君、ヒナとデートしなさい」
「な、な、稲妻さんと!?げほっ、ごほっ」
突然好きな人とデートしなさいと言われてびっくりしたのか小田君はむせてしまう。いいねえこの反応。私を見ているようだ。
「うん。優と金切君をデートさせるために、私と小田君がデートをするけど不安だからついてきてってことでダブルデートに持ち込むの。そんなわけだから、お願いできないかな?」
ヒナは手をあわせ、上目遣いでウインクしながら小田君にお願いする。
小田君じゃなくても大抵の男子はこれでイチコロではないだろうか。
「は、はい!勿論です!」
うんうん、例え本心から誘われた訳じゃないとしても好きな人にそんな事言われたら嬉しいよね、わかるよその気持ち。さて、次は私の番だ。昼休憩中も部室で練習をしている金切君に会いにいく。
「金切君、実は…」
私は金切君に説明する。設定上は小田君が勇気を出してヒナをデートに誘った。ヒナはOKしたけど一人じゃ不安だというので、私達にもついてきてほしいと言っていたと。
「へえ、ダブルデートってやつか。わかった、そういうことなら勿論参加させてもらう」
丁度今週の土曜日、午後から野球の試合があるのでそれを見にいくという形でダブルデートの予定が立った。とにかくこれで二組のペアができた、後は本番でいかに私が金切君と、小田君がヒナと仲良くなるかだ。
初めてのデート。絶対に成功させてみせる。




