革命休止
爆音の後に、わたしの倒れる姿があった。
もう何も映らない。
早送りをしてみたが、画面は静止画のように同じ映像だった。
しばらくして画面が途切れた。
テープが終わった。
確かにあのとき、爆音を聞いたはずだった。
なのに、わたしは生きていた。
そして、気がついた場所は病室。
初めに目にしたのは、先生と話をする両親の姿だった。
一体何を話しているんだろう?
まだ意識がぼんやりして聞き取ることができない。
視界ははっきりしているのに。
なぜだろう?
周りの音が全く聞こえてこない。
ジ――ンといった、無機質な音が響いてくるだけだった。
もしかして。
わたしはあることに気が付いた。
確かにわたしは拳銃の引き金を引いた。
すぐに、爆音があった。
そこまでは覚えている。
それから後の記憶はなく、次の瞬間、わたしはここにいた。
そういえば、どこかで聞いたことがある。
警察官の所持する拳銃の中には実弾を入れずに、
爆音による威嚇だけに使うためのものがある、ということを。
空、あるいは地面に向けて撃つことで、相手に恐怖感を与える。
たいていは、そこで萎縮してしまう。
音自体は本物とほとんど同じなのだから、それで十分、効果があった。
わたしの奪った拳銃もそれと同じものだった、ということ?
耳元で爆音を直接、聞いたあと何も聞こえなくなってしまった。
周りの状況がはっきりと見えてくるに連れて、その考えが現実になってきた。
もちろん、わたしの事件は翌日の新聞に掲載された。
少女Aと小さく載っただけだったが、午前中の爆音を近所の人間の多くが聞いていた。
すぐに周りに、わたしだとわかってしまった。
うわさはすぐに広まっていく。
両親はわたしの耳が聞こえにくくなったせいで、というより
わたしをどこかに遠ざけたかったというのが正しいのだろう。
わたしを片田舎の養護学校に入学させた。
まったく聞こえないわけではなかったが、こうすることで、
周りの人間から少しでも情を引こうという、両親のずるい手段だった。
学校を卒業しても、わたしが家に戻ることはなかった。
両親もそれを望んでいなかったし。
毎月ちゃんと、仕送りはしてくれた。
仕事をしなくても生活に不自由がない程度に。
一人暮らしではあるが、ニートと何ら変わらない生活だった。
特に何もすることなく、テレビを見たりパソコンを無意味に続け
朝方近く、眠くなってきたらそのまま寝る。
そして、昼くらいにダラダラと起きる生活。
中学生のあの頃、想像していた未来の見えない生活。
いや、それ以下の生活だった。
だが、そういった時間も長く続くと慣れてきてしまう。
そんな日々の生活に慣れかけて、過去の記憶を消しかけていたころに
あの手紙が届いたの。
まるで誰かがわたしをどこかでずっと監視していたかのように。
わたしは、あのときと同じように書棚からスケッチブックを取り出した。
あの頃を思い出すように、ゆっくりと一文字ずつしっかりと書いていった。
そしてできあがった文字を眺めながら、スケッチブックを枕元に置いて寝た。
【今日、目が覚めたその一時間後に、わたしは復活します】




