革命勃発
ここにある、一本のビデオテープ。
十年前に撮ったものだが、このテープを一度も見たことがない。
自分自身で撮ったものだから内容は知っている。
でも、一度もそれを再生しようとはしなかった。
もちろん、内容を知っていたからではない。
ふつう、ビデオテープに記録として残すのは、
その場面を振り返って何度も見てみたいからであるが・・・
わたしの場合はその逆だった。
その中にあるのは、見てはいけないもの。
過去の自分を封印するために、それをずっと閉まっていた。
しかし、それを捨てることもできなかった。
いつか、その映像を冷静な気持ちで見ることができるときがくるはず、
とかすかに思っていたのかもしれない。
自分の記憶からビデオテープのことを忘れかけていたとき、
突然、その封印をとく日はやってきた。
昨日、届いた手紙のせいで。
いや、あの手紙のおかげで。
あの過去は否定されるものでなく肯定されるべきものだったと、
手紙の主は語っていた。
事件として取り上げられた、あの日の出来事・・・
もう一度、あの頃の心を思い出すよう、手紙は語った。
もう一度、冷静になってあの出来事を受け入れてみよう。
自分の中で前向きな気持ちが芽生えていた。
十年前の記憶を呼び覚ます儀式をいま、行なおう。
今しか、ない。
ビデオテープを再生した。
ビデオの隅に日付がある。
平成14年3月11日。
それは十年前、わたしが十四歳のときのことだった。




