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31話 推しの変化


 勉強を終えて、イーギス様の部屋をノックする。


「イーギス様、ご飯食べに行きましょう」


 声を掛けるとドアが開いて、イーギス様の姿が見える。よほど不満だったのか、ぷくっと頬を膨らませてイーギス様は私を睨む。


「イーギス様、ごめんなさい」

「何で怒ってるかわかってる?」


 正直あまりわかってない。でも素直に答えると余計に怒らせそうだから、私は頷いた。イーギス様はドサッと手紙を私に渡す。


「それ、招待状出しといて。今度パーティー開くから」

「パーティー?」


 イーギス様の誕生日はまだ先で、グランドル公爵の結婚パーティーはこの前やったばっかりだった。リーゼルとハインドの誕生日は知らないけど、イーギス様が開いてあげるのだろうか。


「喜びますね、お2人ともきっと」

「は?何の話?」


 あれ、違うのか。


「とりあえず出しといて。先に行ってるから」

「はい」


 イーギス様の手紙の送り先をチラッと見ると、全部ご令嬢の名前が書いてある。も、もしかしてこれは……イーギス様の女遊びが始まる原因なんじゃないか。なぜ、なぜフローラと出会ってるのに他の令嬢なんて。


「イーギス様、私フローラ以外歓迎しませんわ」

「ナターシャの意見は聞いてないから」


 追いかけて釘を刺すと、イーギス様は冷たく私に言い放つ。ま、まぁ今はダメでもゲームの本編さえ始まればフローラを好きになるだろうから。イーギス様の好きにさせてあげるべきか、悩む。もやもやしながらイーギス様の手紙を使用人に届けて、私は夕飯を食べに向かった。


「イーギス様」

「何、ナターシャ」


 怒りは収まったのか、さっきより優しい声でイーギス様が聞いてくれる。


「たくさんのご令嬢と遊んでも、イーギス様は幸せにはなれませんわ」

「知ってる」


 知ってるって、なら何で?わなわなと震える私にくすっと笑って、イーギス様は頬杖をつく。


「好きな子を振り向かせるために、きっと必要なんだ」

「……なるほど!」


 全然察せてなかったわ。すでにイーギス様はフローラを好きになってるんですね。そしてフローラと結ばれるには、ゲーム通りのイーギス様になる必要があると。


「それなら私応援しますわ!」

「鈍感」


 パチンと手を合わせて賛同すると、イーギス様は苦笑する。確かに私は鈍感だけど、恋のキューピッドにはきっとなれるはず。


「私からもフローラにイーギス様を推薦しておきますわね」


 全然シナリオ通りじゃないけど、イーギス様が今から頑張ればフローラもイーギス様を好きになるはず。そうと決まればまたフローラとのお茶会をセッティングしよう。


「ねぇ」


 あれこれ妄想していたら、イーギス様がじっと私を見つめる。


「ナターシャは何でフローラと俺を関わらせたいの?」

「イーギス様が幸せになれるからです」


 不思議そうに聞くイーギス様に答える。傷ついたイーギス様を救えるのはフローラしかいない。


「俺の幸せは俺が決めるよ」

「もちろんそれはそうですわ。でも絶対、フローラと結ばれたら幸せになれるんですわ」


 だってフローラはヒロインだもん。ふーんと興味なさそうにイーギス様はフォークで卵を掬う。今は半信半疑だろうけど、きっとすぐに伝わるから。それからイーギス様は何も話さず、気になったけど私は放っておくことにした。

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