29話 絵になる2人
待ち合わせたカフェに行くと、フローラとセリがすでに来ていた。私はテーブルに駆け寄る。転けそうになって、イーギス様が私の腰を引いてくれた。
「ありがとうございます」
「そそっかしいね、ナターシャは」
すみません、と謝ってスカートを正す。私はセリの隣に座ろうとした。
「ナターシャはこっち」
「え、でも!」
イーギス様とフローラを隣にしたかったのに!イーギス様に腕を持ち上げられてフローラの隣に座る。
「イーギス様、こっちは日光が眩しいですわ」
「我慢して」
ダメか……。イーギス様が考えてることがわからない。とりあえずケーキと紅茶を注文して、雑談する。
「不思議ですわ。私が、イーギス様やナターシャ様とお喋り出来るの」
「もっと自信持って。フローラは可愛いから大丈夫!」
公爵子息どころか王子とも仲良くなる素質持ちだし。なんて、王子と仲良くなられたら困るんだけども。
「ナターシャ様の方がお美しいですわ」
「いやいや、ナターシャは悪女だもん」
可愛いけど、ヒロインほどではない。手を横に振ると、イーギス様が私の顎を掴んで振り向かせる。
「ナターシャが一番可愛いよ」
ードキッ。不意打ちの褒めに心臓が反応する。慌てて私はイーギス様から顔を逸らした。
「そういうことは、大切な人にだけやるものですよ」
「じゃあ問題ないよ」
ああ、いまいち伝わってない。私は立ち上がってイーギス様の手を引っ張って、フローラの隣に座らせる。
「ナターシャ?」
「フローラ、イーギス様はどう思います?イケメンだと思いません?」
イケ……?と困惑するフローラにイケメンの説明をする。
「どういうつもり?」
「婚約者自慢かよ、性格悪いな」
イーギス様の声色が低くなり、セリが私に文句を言う。
「美男美女は目の保養っていうか、ほら」
「ナターシャでもいいじゃん」
イーギス様、機嫌が悪い。フローラと会えば運命を感じるんじゃないかと思ったけど、そういうんじゃないのかなぁ。
「ナターシャ、それちょっとちょうだい?」
イーギス様が私のケーキを指差すから、イーギス様に向ける。でも、イーギス様は目を閉じて口を開けるだけだった。それが何を意味するか、私でもわかる。
「おいおい見せつけんなよ」
「違うから!」
私は立ち上がって否定する。その時、ドレスの裾を踏んでしまったようでイーギス様の方に倒れた。
「うわっ」
イーギス様が私を抱き止める。
「大丈夫?」
私の前髪を撫でて美しい顔で私に聞く。違う、そうじゃないのに。私は体を起こしてフローラを見た。
「イーギス様、フローラを運命だとは感じませんか?」
「ナターシャ、……ああ。そういうことか」
イーギス様は顎に手を当ててから、フローラの方を向く。
「フローラ嬢、すまない君を放っておいて。お詫びに口移しで食べさせてあげる」
「おいおいおい!何言ってんだよ」
フローラの唇に触れて、イーギス様が笑う。そう、それそれ。やっとイーギス様がフローラを見てくれた。フローラは顔を真っ赤にして、「いえ……」と呟く。セリが間に入るのを察知して、セリを強く引っ張った。セリと一緒に倒れる。
「何してんだよ!お前あいつの婚約者だろ!」
「邪魔しないで」
セリの口を塞いでお願いする。だけど、私の手はイーギス様に引っ張られて体を持ち上げられた。
「ナターシャがこういうの好きだからやってあげたけど、俺はそれ許可してないからね」
イーギス様、怒ってる……。やっぱり、シナリオはだいぶ逸れてしまったみたいだ。




