表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/35

20話 嫉妬


 クルーゼに挨拶した後、イーギス様に強く手を引かれる。それはエスコートしていた時とは違う強い力で、バルコニーの方に進んでいく。


「イーギス様?」


 名前を呼んでもイーギス様は足を止めず、バルコニーに着いて振り向いた。


「ナターシャ、何あれ?」

「何、とは?ただ挨拶していただけですわ」


 呆れたような口調のイーギス様に私は戸惑いつつも答える。はしたなかっただろうか。


「セリとクルーゼの時だけ明らかに違ったよね。自分から友達になろうとして。他の人に惚れちゃダメだよって言ったよね?」

「ほ、惚れてなんていませんわ!お友達になろうとしていただけです」


 なんて言いがかりだ。私はイーギス様のために、セリとクルーゼと仲良くなっておこうと思っただけなのに。イーギス様が私の手を引っ張って、引き寄せる。私はそのままイーギス様に抱きしめられた。


「他の男なんか見ないで」


 小さな声が、息が耳にかかる。顔を上げようとすると、イーギス様に押さえつけられ肩に唇が当たる。


「僕だけを見ててよ、ナターシャ」


 泣きそうな声で、イーギス様が私に言う。私はとんとんとイーギス様の背中を叩いた。


「イーギス様のためですわ」

「僕のため?友達作ろうって言ったから?」


 それだけじゃないけど、上手く答えられないから私は頷く。するとイーギス様は口を尖らせた。


「だったら友達なんて要らない」

「そんなこと言ってはダメですわ」


 私はイーギス様の頬に触れ、諭す。


「大丈夫、私はイーギス様しか見えていません。イーギス様の幸せのために、動いてるんです」

「……嘘ついてない?」


 瞳を揺らすイーギス様に、私は強く頷いた。


「嘘は言いません。私はイーギス様を幸せにするために、ここにいるんです」


 それが私の生きる意味だから。イーギス様はひざまずいて、私の左手の薬指に吸い付くようにキスをする。


「ナターシャはずっと、僕のだから」


 まるで勘違いしそうになる、束縛のセリフ。私はイーギス様の髪を撫でた。


「大丈夫です、イーギス様。この私がイーギス様の願いを叶えますわ」

「……なんか、わかってない気がする」


 顔を上げて頬を膨らませるイーギス様。わかってますわ、イーギス様の幸せを誰よりも1番。


「私ほどイーギス様のことがわかってる人いませんわ。お肉が苦手でパンが好きなこと。中でもサックサクのクロワッサンが大好きで、朝とおやつによく食べてること。くまのぬいぐるみを抱いて毎晩寝ることも、軽薄に見えてただの寂しがりやなことも」

「ちょ、ちょっと待って何で知ってるの?」


 慌てるイーギス様に私は笑う。でもそんなに表情が変わることを私は知らなかったですわ。私の知ってるゲームのイーギス様は、ずっと余裕な表情をしてたから。


「てか、軽薄って何?僕が軽薄なの?」

「あ……、いえ。失言でしたわ。でも、私イーギス様のことなら何でも知ってますわ」


 口に手を当てて、おほほほと笑うとイーギス様が私の両頬を引っ張る。


「ずるい。僕もナターシャのこと知りたい。教えてよ、ナターシャのこと」

「私のことはいいんですのよ」


 知ったって何にもなりませんわ。あ、でも。


「……これだけは覚えといてほしいですわ。私は将来、とんでもない悪女になりますの。お嬢様ですらなくなりますわ」

「え……。何で?悪いことするの?どうしてもしなきゃダメなの?」


 困惑した顔で私に言うイーギス様に申し訳なくて目を伏せる。なるべく断罪されない方法で、シナリオ通りのナターシャを進めたい。


「ええ、それがイーギス様に幸せをもたらしますわ」

「ナターシャ……。僕はナターシャがいてくれるだけで幸せなんだよ」


 縋るように手に触れて、頬につけるイーギス様。残念ながらその願いだけは叶えられないけど、絶対フローラをイーギス様ルートに進ませてみせますわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ