17話 わがままな妹
職人さんにお願いして、バドミントンの道具が完成したから今日は私の家にイーギス様を招待した。
「また新しいおもちゃ考えたの?」
「ええ、スポーツしましょ。イーギス様」
イーギス様は体育の成績もよかったから、きっと私が負けるだろうけど一緒にスポーツできるのは楽しいと思う。
「へぇ、これで遊ぶの?」
「はい、ルールは簡単ですわ」
シャトルを持って、ラケットの上に落とす。そのまま軽くぽんぽんと跳ねさせたらイーギス様が目を輝かせた。
「すごい!早くやろう」
「ええ」
少しやり方を説明して、シャトルを飛ばす。イーギス様はあわあわしながら、ラケットを動かす。
「難しいね、これ」
「でも楽しいですわよ」
何回も飛ばすと落下地点がわかるようになってきて、徐々にイーギス様は上達していく。1時間くらいでラリーできるくらいになったイーギス様と遊んでると「ずるい!」と甲高い声が聞こえてくる。気が進まないままシャトルを掴んで、エイシアの方を見る。
「お姉様ばかり遊んでずるいですわ!」
「ずるいって、エイシアにはまだ早いわ」
この世界には幼稚園もなく、婚約者もいないエイシアが退屈するのはわかるけど一緒に遊ぶ気にはならない・エイシアといるだけで疲れてしまう。
「いいじゃん、仲間に入れてあげよう」
「イーギス様……」
イーギス様に提案されたら断れなくて、イーギス様がエイシアにラケットを持たせる。
「扱いには気を付けてくださいね。いきますよ」
「いいですわ」
シャトルを飛ばすとエイシアがラケットを振り回す。
「お姉様下手すぎますわ!」
「エイシア、簡単には上手くならないのよ」
運動神経のいいイーギス様と違って。しかもまだ5歳、エイシアには難しいだろう。
「お姉様、それちょうだい!」
私からシャトルをぶんどって、エイシアがシャトルをラケットに落とす。だけどタイミングがずれ、跳ねることなく落ちたシャトルをエイシアが踏みつけた。
「何よ!こんなの面白くない!」
「エイシア、乱暴にしないで」
私はエイシアの手を引っ張って、シャトルの上から退かす。エイシアがラケットを私の頭に振りかざした。
「危ない!」
イーギス様が私の肩を抱き寄せ、腕でラケットを受け止める。
「申し訳ありません!イーギス様っ!お怪我はありませんか?」
イーギス様になんてことを!血の気が引く私の頭をイーギス様が撫でる。
「僕は大丈夫」
イーギス様は私から手を離して、シャトルをエイシアに渡す。
「僕が教えてあげるよ」
「フンッ、私は下手じゃありませんわ」
優しく提案してくれるイーギス様にもその態度で、エイシアに怒りたくなるのを我慢する。相手はまだ5歳だ。アラサーが本気で怒っていいわけがない。
「うん、でも慣れたらもっと楽しいよ」
「わかりましたわ」
イーギス様の指導の下ラケットを振るエイシアをぼーっと眺める。イーギス様はなんて聖人なのだろう。わがままなエイシアを手懐けてしまった。
「って、ダメですわ!」
「ナターシャ?」
私は慌てて立ち上がって、2人に駆け寄る。
「エイシア、部屋に戻りなさい」
「嫌ですわ」
エイシアの手を掴むと、エイシアはラケットで私を叩く。「エイシア!」と強く呼んだ私に、エイシアはラケットを向けた。
「お姉様がイーギス様の婚約者なんて納得がいきません。私が婚約者になりますわ!」
ああ……、気づくのが遅かった。これで私が悪役令嬢にならなくても、エイシアが私の代わりになるフラグあ立ってしまった。イーギス様は呑気に笑うだけで、私は頭が痛くなった。




