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14話 平穏な日々


 イーギス様のお母様のお葬式が終わって、いつもと変わらない日常がやってきた。私は今日もイーギス様の家に行く。


「イーギス様、今日は遊び道具持ってきましたわ」


 職人に作ってもらっていたトランプとオセロがようやく完成した。絵心のない私に作れたのはとてもシンプルなものだけど、遊びやすさが大事だ。


「へぇ、何持ってきたの?」

「これですわ」


 馬車からオセロ盤を下す私に、イーギス様が目を丸くする。


「チェス?」

「いいえ、これはオセロと言うんですわ。チェスよりシンプルですわよ」


 私はイーギス様の手を引いて、イーギス様の部屋に向かう。オセロ盤をテーブルに置いて、駒をバラバラに出した。


「交互に置いてひっくりかえしていくんですわ。数が多い方が勝ちです」

「へぇ、面白そうだね」


 イーギス様にルールを説明して、私から駒を置く。イーギス様も同じように駒を置いてひっくり返して。これなら私にも勝てる気がする。そう思ってたのに。


「どうしたの?ナターシャの番だよ」

「ぐぬぬ、イーギス様の意地悪ですわ」


 私の番だというのに、盤の上は真っ黒で私の置けるスペースがない。


「チェスより簡単だね。他の遊びないの?」

「じゃあトランプやりましょう!」


 イーギス様がチェスや他のボードゲームで遊んでるシーンなんて描写がなかったから、こんな簡単にやってのけると思ってなかった。ほんと、乙女ゲームのイケメンは設定もりもりだ。


「これナターシャが作ったの?」

「私が考えたものを職人の方に作ってもらったんですわ」


 なんて元の世界にあるトランプそのままだけど。シャッフルしてイーギス様と私の分を配る。


「1枚ずつ引いて、数字が揃ったらここに置いていくんですわ」

「なるほど。ナターシャからどうぞ」


 必ず先を譲ってくれるイーギス様に甘えて、私はトランプを取る。まず初めにとババ抜きを始めたけど、最初私が引いてからそのババをイーギス様は取らない。


「僕の勝ち?」

「なんて強運なんですか!」


 全然思ってたババ抜きと違う。トランプを置いてテーブルを叩くと、イーギス様は笑う。


「ナターシャはわかりやすいんだよ」

「えっ、顔に出てましたか?」


 そんなの、まるで私が小説のヒロインみたいなプレイをしていたみたいじゃないか。意識して表情に出さないようにしてたのに。


「視線がババの方を向いてたからね」

「そんなっ……」


 私はテーブルに突っ伏す。だけど気を取り直してバッと顔を上げた。


「今度は難しいですわよ」


 それからスピード、七ならべをしていくけど私はイーギス様に勝てなかった。イーギス様が強すぎる。


「大貧民しましょう!大貧民!」

「何そのタイトル」


 ぷっ、とイーギス様が笑う。まだ本調子じゃないだろうけど、少しずつ私といることで楽しい気持ちが戻ってくれるといいな。


「そんなのする意味ないよ」


 トランプを切る私の手にイーギス様が手を重ねる。


「僕も、もちろんナターシャも大貧民にはならないよ。僕が養うからね」

「……イーギス様」


 不意に言われてきゅんとする。慌てて私は頭を振った。


「ナターシャ?」


 イーギス様の言葉を鵜吞みにしてはだめだ。イーギス様と結婚するのはフローラで、私は断罪される悪役令嬢だから。


「私は、幸せにはなれません」


 転生した時から決まってたこと。この幸せの日々を、夢見てはいけない。

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