9話 遊び
今日はイーギス様に呼ばれてグランドル公爵邸に来ていた。イーギス様が出迎えてくれる。
「待ってた。早く遊ぼ」
「ええ」
この前とは違って、目を輝かせて私の手を引っ張る。部屋に入ると、イーギス様は私を椅子に座らせる。テーブルの上にはチェスが置かれていて、イーギス様は私の前に座った。
「先、ナターシャに譲ってあげる」
「え、ええっと……」
私は盤の上に乗ってる駒を持ち上げてみる。でもどこに置けばいいのか全然わかんない。確か、動ける方向が決まってるんだよね?何で【麗しの花姫】にはチェスのミニゲームがなかったんだぁ!
「あれ?やり方わかんない?」
「すみません」
誤魔化しても無駄だから素直に答えると、「珍しいね」とイーギス様が笑う。この世界ではそりゃチェスは当たり前なのか。オセロとか簡単なのないかなぁ。イーギス様が駒の説明をしてくれてるのを真剣に聞く。イーギス様は教えるのも上手いな……。
「わかった?」
「は、はい!」
なんて、イーギス様に見惚れててほとんど集中できてなかったんだけど。何となくはわかったから出来るよね。見様見真似で駒を動かして、食らいついていく。だけど、1回2回3回やってみてもイーギス様には到底敵うはずもなかった。
「面白くなさそうだね」
「いえ!」
イーギス様が頬杖をついて、私を見る。私は首を横に振ったけど、イーギス様はチェスを片す。
「いいよ、ナターシャが好きな遊びをしよう」
「私が好きな遊び、ですか?」
鬼ごっこ、は体力使うしかくれんぼ……は楽しくないし。トランプやオセロはこの世界にないだろうし。あ。
「イーギス様、紙とペンありますか?」
「あるけど、何するの?」
はい、とデスクから出して渡してくれるイーギス様。私は2本ずつ、縦横の線を書いた。
「◯×ゲームしませんか?」
「◯×ゲーム?」
簡単なルールをイーギス様に説明して、私は真ん中に◯を書く。イーギス様が×を書いて、今度は私の番で。これなら私が負けっぱなしになることもない。決着がつかないまま、ひたすらにお互い書き続けて10枚くらい紙を使った。
「ナターシャこれ楽しい?」
「イーギス様が意地になってるのを見るのが楽しいです」
勝って余裕そうなイーギス様も好きだけど、勝とうと意地になるイーギス様も好き。ふーん、と言うイーギス様だけどこれだけだと飽きるよね……。イーギス様と遊ぶことを考えてなかったから、早急に職人さんにお願いしてトランプとオセロを作ってもらおう。
「イーギス様、次までには面白い遊び道具用意しておきますから、待っててください」
「わかった。今日は何する?話する?」
私は頷いて、椅子に座り直す。
「僕がナターシャを助けたのっていつのこと?」
「え?」
頬杖をついて、イーギス様が私に聞く。何の話だと思ってると、イーギス様が口を尖らせる。
「ナターシャが倒れた時に言ってたじゃん。僕に助けてもらったことがあるって」
「あ、ああ……。あれは、同い年だからイーギス様の噂が耳に入ってきて私も頑張らなきゃなって思って」
言い訳なんて何も考えてなかった。私の言葉にイーギス様は眉を顰める。
「嘘ついてるって顔してる」
「え」
私は顔を抑える。イーギス様は笑った。
「で、本当の理由は?」
ど、どうしよう……。なんて答えよう。




