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バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件  作者: 沢田美


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7/30

人間に序列なんてないけど、恋には順番がある

 有馬っちが、出て行った。

 

「紗良、追いかけなくていいの?」

 

 奏が心配そうに聞いてくる。

 

「……大丈夫」

 

 そう答えたけど、胸が痛い。

 ――私の、せいだ。

 無理やり連れてきちゃったから。

 有馬っちは、こういう場所が苦手なのに。

 分かってたのに。

 だって有馬っちは、いつも一人でラノベを読んでて、誰かと騒ぐより静かな場所が好きそうで。

 それなのに、私の勝手で――

 

「白瀬さん」

 

 海斗が立ち上がった。

 

「俺、ちょっと行ってくる」

「え……」

「大丈夫。任せて」

 

 海斗はそう言って、有馬っちを追いかけた。

 私は、ただ座っているしかできなかった。

 ――有馬っち、ごめん。

 私、また失敗しちゃった。

 でも、明日絶対に謝る。

 だから――嫌いにならないで。

 お願い。


 ※

  

(奏の視点)

「司、大丈夫かな」

 

 私は隣にいる司を見た。

 いつもの明るい笑顔が、少し曇っている。

 

「俺、失敗したかな」

「え?」

「有馬を誘ったの、俺なんだ。掃除の時、仲良くなれたと思って」

 

 司は頭を掻いた。

 

「でも、ああいう場所が苦手だったんだな。気づけなかった」

「司のせいじゃないよ」

 

 私はそう言った。

 

「有馬くんも、きっと分かってくれる。司の気持ち」

「そうかな……」

「うん。だって司は、そういう人だもん」

 

 私がそう言うと、司は少し笑った。

 

「サンキュ、奏」

 

 ――司のそういうところが、好きなんだよ。

 優しくて、誰にでも分け隔てなくて。

 だから、私――

 

「どうした? 顔赤いぞ?」

「な、なんでもない!」

 

 慌てて顔を隠す私を見て、司は不思議そうに首を傾げた。

 ――いつか、この気持ち、伝えられるかな。

 

 ※

 

(有馬蓮の視点に戻る)

「なぁ、お前今楽しい?」

「――ッ」

 

 突然、後ろから声がした。振り返ると、そこには海斗くんが立っていた。

 

「ちょっと面貸せよ」

 ※

 

「お前、今の言葉本気で言ったのか?」

 

 僕を呼び止めたのは海斗くんだった。

 あの楽しそうな雰囲気を台無しにした僕に対し、彼は憎悪や嫌悪を抱いたような態度を見せてはいなかった。

 ただ、真っすぐに僕の顔を見つめていた。

 

「……本気だよ。本気だから、あんなことを言えたんだ。僕にあの環境、あの場所は似合わない。いたら、きっと白瀬さん達にあれ以上不愉快な思いをさせる……そう思うから」

 

 言葉を選べず、乱雑に吐き出す。

 わざと彼らから距離を置こうとするために。

 すると、海斗くんはそんな僕を見て――笑った。

 

「面白いな」

「?」

「まるで昔の自分を見てる気分だ。お前、勘違いしてないか?」

「勘違い?」

「俺とお前、自分ではそう思ってなくても、第三者から見れば陽キャと陰キャ……。でもだからなんだよ? それでお前の価値が俺以下になるのか?」

「そ、それは……」

「お前はきっと、陽キャを王様か神様みたいな"上の存在"だと思ってるんだろ。でもな、そんなことはない。――俺には両親がいない」

「……ッ」

「小学生の時、事故で亡くなった。それから、ばあちゃんに育てられてる」

 

 海斗くんの声は、穏やかだった。

 けれど、その奥に何かを感じた。

 

「だからさ、お前みたいに自分を卑下する奴を見ると、イライラするんだよ。両親がいて、健康で、学校にも通えて。それだけで、どれだけ恵まれてるか分かってない」

「……すみません」

「謝らなくていい。ただ、分かってほしいんだ」

 

 海斗くんは空を見上げた。

 

「人間に、上も下もない。ただ、環境が違うだけだ」

 

 その言葉が、深く胸に刺さった。

 

「お前には両親がいるか? いるなら、社会的に見れば俺よりずっと恵まれてるし、立場だって上だ。それなのにどうして、自分を下に見て俺に気をつかう必要があるんだ? ……そもそも、人間はどうして序列をつけたがるんだろうな。みんな平等に生まれて、平等に育つ。ただ、コミュ力とか目立ち方で勝手に評価される」

「そ、それは……」

「なぁ有馬。お前は知らないだろうから言っとくけど、白瀬さんは善意でお前に構ってるんじゃない。――有馬蓮に興味があるから。本当の友達として関わりたいから、話しかけたり、からかったりしてるんだ。そこに善意も悪意もない。ただ"友達になりたい"って気持ちだけだ」

「白瀬さんが……僕と、友達に?」

「白瀬さんの趣味、知ってるか? ちなみに、長く一緒にいる須藤さんや有村さんだって知らない。白瀬さんは周りに合わせがちだから。でも――お前は知ってるんだろ?」

「な、なんでそう言えるんですか?」

 

 僕が問うと、海斗くんはフッと笑った。

 

「白瀬さんがお前の話をしている時、とても楽しそうだからだ」

「――ッ」

「楽しそうにお前のことを話す白瀬さんの姿を、俺たちは何度も見てる。だからこそ、有村さんはあんな態度をとったお前を見て怒ったんだ」

「そ、そうだったんだ……」

「でもな、こうなったのはお前だけのせいじゃない。俺たちが無理やり連れてきたのも悪かった。……あんな思いをさせて、ごめん」

 

 海斗くんは素直に頭を下げた。

 その姿を見て、思わず息を呑む。

 な、なんで海斗くんが謝る? あの場を壊したのは僕で、僕が白瀬さんを傷つけたのに……。

 どうして彼が――。

 僕は何も言えず、ただ拳を握りしめる。

 少しの沈黙の後、海斗くんが顔を上げた。

 

「今日は帰った方がいい。有村さんもまだ怒ってるだろうし、今戻っても気まずくなるだけだ。……ただ、明日には白瀬さんに謝れ。あいつら、いじめとかはしないけど、嫌いな奴には徹底的に無視したりするから。――なにより、白瀬さんのためにも」

「わ、分かった……」

 

 ※

 

 海斗くんと別れた後、僕は一人で夜道を歩いた。

 街灯の下、自分の影が長く伸びる。

 ――白瀬さんは、僕に興味がある。

 ――友達になりたいと思っている。

 海斗くんの言葉が、胸の中で温かく響いた。

 過去のトラウマが消えるわけじゃない。

 あの時言われた言葉も、まだ心の奥に残っている。

 でも――少しだけ、前を向けそうな気がした。

 家に着いて、部屋の電気をつける。

 机の上には、白瀬さんと一緒に買った『ヒーリング』の新刊が置いてあった。

 

「……ごめん、白瀬さん」

 

 僕は小さく呟いた。

 明日、絶対に謝ろう。

 そして――もう一度、一緒に笑いたい。

 

有馬ー!!!

海斗が良い奴すぎますね笑

明日も投稿するかもなので、よろしくお願いします!

それではまた(o・・o)/~

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