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バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件  作者: 沢田美


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放課後の沈黙

 てかそう言えば今日、バイト入ってたような気がする……。

 ふと時間を見ると、時計の針は17時を指していた。

 

「あ、あと10分じゃん! 急がないと!」

 

 僕は慌てて走り出し、バイト先へ急いだ。

 

 ※

 

 なんとか3分前に間に合った僕は、急いで制服に着替えてレジに立つ。

 レジに立って10秒ほどした時、目の前のファミレスの扉が開いた。

 

「いらっしゃいませ――ッ!?」

「お! 有馬っち!」

「有馬っち? 誰それ?」

「あ! 有馬蓮くんだ!」

 

 そこにいたのは白瀬さんと須藤さん、有村さん。いつもの3人グループだった。

 僕の作り物の笑顔が崩壊していくのを感じた。

 僕の名は有馬蓮。いま僕はバイト中で、学校の陽キャグループが目の前にいる。

 

「ねぇ、この子誰?」

 

 須藤さん、白瀬さん、有村さん。

 僕はタジタジになりながら席へ案内する。

 

「サンキュー、有馬っち」

 

 白瀬さんがウィンクする。

 僕は照れを必死に抑え、その場を離れた。

 ど、どうしてここに白瀬さんたちが……や、ヤバい! まだ3回目の出勤なのに緊張してきた。

 僕は水を彼女たちの席に運ぶ。

 

「有馬くんだよね? この前のクレーマーの子」

 

 有村さんが話しかけてくる。

 

「私も居酒屋で働いてるから分かるよ。紗良の分も頑張ってね」

 

 優しく微笑む有村さん。

 てっきり馬鹿にされると思っていたのに……優しい人なんだな、有村さんって。

 

「ねえー、有馬っち。もしかして、心配してくれた香澄のこと好きになった?」

 

 白瀬さんがからかうように僕の腰を突いてくる。

 

「ち、違います! ただ優しい人だと思っただけです!」

 

 彼女たちはクスッと笑った。

 な、なんだこの絵面……白瀬さん、あとで覚えてろよ!?

 僕はサッとその場を退散する。背後から楽しげな談笑が聞こえた。

 そんな彼女たちの姿を見て、思わず頬が緩んだ。

 

 ※

 

 その後は注文の料理を運んだり、レジをしたり、店長からトレーニングを受けたりと、あっという間に時間が過ぎた。

 気がつけば外はすでに夜で、退勤の時間になっていた。

 

「今日はもう上がっていいよ、有馬くん。お疲れ様」

「は、はい! お疲れ様です!」

 

 僕は店長にそう言われ、更衣室で着替えると急いで店を出た。

 はぁ……今日も疲れた。でも、なんだかんだ楽しい……。

 そんな気持ちで店の外を歩き始めた時、僕の前にとある三人組が立ちはだかった。

 白瀬さん、須藤さん、有村さんだった。

 

「ねぇ、有馬っち。少し付き合ってほしい場所があるんだけど」

「へ? へ? へ?」

 

 意味の分からない返答をする僕をよそに、白瀬さんたちはニヤリと企むような顔をする。

 な、なんだ……嫌な予感がする。

 困惑している僕を連れて、彼女たちは歩き出した。

 い、一体どこに行くんだ……。

 

 ※

 

「お! ようやく来たか! 紗良!」

「お待たせー、司」

 

 そう言って僕が連れて来られた場所は――カラオケだった。

 個室の中には神楽坂くん、海斗くん、光くんがいた。

 な、なんで僕なんかがこんなキラキラした場所に……? は、早く帰りたい……。

 

「あれ? 有馬じゃん」

「ホントだ。有馬だ」

「え? 司たち有馬くんのこと知ってんの?」

 

 須藤さんが尋ねると、神楽坂くんが胸を張ってドヤ顔で答えた。

 

「当たり前よ! なんせソイツは俺の相棒だからな。今日、放課後に掃除した仲だ」

「あー、思い出した! なんか先生に怒られてたねー」

 

 白瀬さんがそう言うと、須藤さんたちは席に座り、曲を選び始めた。

 一方の僕は何をすればいいのか分からず、棒立ちしたまま。

 その時、光くんが僕の隣に座った。

 

「有馬くん、無理してない?」

「え……」

「大丈夫、無理しなくていいよ。僕らも、最初はこういう場所苦手だったし」

「光くんも……?」

「うん。僕、中学の時は友達いなかったんだ」

 光くんは笑いながら言った。

「でも、司とか海斗と出会って、変わったんだ。少しずつだけど」

「……そうなんですか」

「だから、有馬くんも焦らなくていいよ。自分のペースで、少しずつ」

 光くんの言葉が、心に染みた。

「ありがとうございます」

「ううん。それよりさ、有馬くんの好きなアニメ、今度教えてよ」

「いいんですか?」

「もちろん! 僕も最近、アニメ見始めたんだ」

 

 光くんは嬉しそうに笑った。 

 ――この人も、優しい。

 みんな、優しい。

 

 ※

 

 それから30分ほど経った頃。

 神楽坂くんが僕の肩に手を回した。

 

「なぁ! 有馬も一緒に歌おうぜ!」

「――ッ……で、でも僕、人前で歌ったことないし……」

 

 僕は部屋の隅で、小さくなっていた。

 神楽坂くんと須藤さんがデュエットで歌っている。

 白瀬さんと有村さんは楽しそうに手拍子している。

 光くんがタンバリンを叩いている。

 ――楽しそうだ。

 みんな、本当に楽しそうだ。

 なのに、僕だけが浮いている。

 僕だけが、この場にいるべきじゃない。

 

「有馬、何かあったら言えよ」

 

 海斗くんが声をかけてくる。

 

「あ、いえ……なんでもないです」

「そっか。一人で抱え込むなよ」

 

 海斗くんは優しく言って、また席に戻った。

 ――でも、言えない。

 言ったら、きっとみんなを困らせる。

 曲が変わり、白瀬さんがマイクを持つ。

 その歌声は、とても綺麗だった。

 みんなが聞き入っている。

 ――僕は、ここにいていいのかな。

 そう思った瞬間、白瀬さんが僕の方を見て微笑んだ。

 その笑顔に、胸が苦しくなる。

 

「いいです。僕帰ります」

 

 空気が読めないと思われても仕方ない態度だった。でもこれで恥を晒さずに済む――そう思って顔を伏せ、その場を去ろうとした。

 その時、僕の肩を柔らかい手が掴んだ。

 振り返ると、しょんぼりとした顔をした白瀬さんがいた。

 

「帰るん? 帰るなら理由だけ教えて?」

 

 いつもヘラヘラしている彼女とは違い、その表情は真剣で真面目だった。

 僕はいつから、こうもネガティブな思考になってしまったんだろう。

 ――『有馬くんって人と会話しようとしないよね。いつも独り語りだし、こっちの身にもなってほしいよ』

 ――『有馬くんて、いつも私に話しかけて何が楽しいの? そろそろやめてくれない?』

 ――『有馬、お前少し調子に乗りすぎだよ、少し背伸びしたぐらいのことして、調子に乗るなよ』

 

 かつて仲良しだった友達に言われた言葉。過去の亡霊が僕の胸を締め付ける。

 

「僕にこの空気は似合わないし、いても迷惑かけるだけだし、白瀬さんは僕のことを揶揄ってるだけだと思うから、もう僕に構わなくていいよ」

「有馬っち……」

 

 白瀬さんが落ち込んだ顔をする。

 すると有村さんが声を上げた。

 

「は? 何その言い方。失礼だろ。何が"自分はこの空気に似合わない"だよ。紗良がせっかくお前みたいな陰キャに構ってやってんのに、調子乗んな」

 

 有村さんは怒った様子で僕の胸ぐらを掴んだ。

 それを見た須藤さんが止めようとしたが、有村さんは掴んだまま続けた。

 

「私も、紗良以外の奴らは別にお前に構ってあげてるつもりなんてない。でも紗良は優しいからお前を呼び止めたんだ。それなのになんだよ今の返答。不愉快」

 

 有村さんの目には、涙が浮かんでいた。

 

「私ね、紗良のこと、本当に大切に思ってるの。だから、紗良が傷つくのが嫌なの」

「……」

「紗良はね、いつもみんなに合わせて、自分を押し殺してる。でも、有馬くんといる時だけ、本当に楽しそうなの」

 

 有村さんの声が、少し震える。

 

「だから期待してた。有馬くんなら、紗良を笑顔にしてくれるって。でも――」

 

 有村さんは、僕から視線を逸らした。

 

「でも、あんな言い方されたら、紗良がどれだけ傷つくか分かる? "揶揄ってるだけ"だなんて」

 

 胸が、ぎゅっと締め付けられる。

 

「紗良は、本気で有馬くんと友達になりたいって思ってたのに」

「……っ」

「もういい。帰って」

 

 有村さんの言葉を聞いた僕は、みんなに顔を見せられないまま「ごめん」としか言えなかった。

 有村さんは舌打ちをして胸ぐらを離す。

 

「……それじゃ」

 

 それだけを言い残して、僕はカラオケの個室を出た。

 はぁ……なんでこんな目に。でもこれで、もうあの陽キャグループと関わらずに済む。気が楽になる。

たまには昼頃に投稿したい。

今回は結構重めの回になりましたが、今後の有馬の行動に注目!

今日の21時頃にも投稿するのでよろしくお願いします!(*^^*)

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